まず、左側に貼るオリジナルデザインであるが、マスタングということで「馬」を使用し、アメ車ということで「アメリカ国旗」と重ねることでデザインしたいという。
あくまでオリジナル製作の依頼だから、依頼者と製作者側の意思疎通や製作者の感性が問われることになり、その部分においては十分な話し合いのもと行われている。
だが、ここで面白いのは、伊藤氏の場合はパソコン上で希望デザインのやりとりをしながら、実車の写真を取り込み、そこにデザインラフ(もしくは完成デザイン)を当てはめて「こんな感じになります」という実演作業が前もって行われているのである。
しかもデザイン処理で使用されるデザインソフトやパソコン事情にも精通しているために、製作段階から「貼るため」のデザインを作り、車両とのサイズ感のマッチングを的確にし、貼る作業時に起こりうるトラブルやシートの特性をあらかじめ考え抜いているからこそ、完成時のレベルの高さがひと目でわかり、依頼者の満足度へと直結するのである。
過去に取材した痛車の時は、デザイン部門と貼る技術者は別者であり、デザインされた絵柄が若干伸びて変形していたのを思い出す。デザインする人間と貼る人間が同じなら、貼ることを意識したデザインになるのは当たり前だろう(貼る難しさを知っているからである)。
このボディ左側に使用するデザインは、完成後専用のインクジェットプリンターで印刷され、ラミネート加工を施すことでUVカットを行ない変色を防ぎ耐久性を高めている。
ちなみに、このデザインは一枚もののシートにて製作されているから、細心の注意を払い貼っていくわけだが、作業中にシワが出てしまったり、またそのシワを伸ばそうとシートを引っ張ったりすることで、デザインが歪んだり引っ張ったあとが残る恐れがあるというが、今回の作業時には、当たり前だがそういったトラブルはまったく起こっていない。
取材していても伝わるのだが、シートに対する造形の深さとそれを扱う技術力のレベルの高さが明確に伝わってきて、しかもそれらは過去の経験から積み重ねられた独自ノウハウによるものである。
で、そうしたノウハウで満たされた人間が行う作業には、この業界各方面にいらっしゃるコダワリの方々が発する、共通のオーラ(精度を出すための)のようなもので満たされているのである。
ボディ右側に貼るコブラジェットのデザインシートの製作である。ここでの問題点は、コブラジェット自体のシートが発売されているわけではないという事実。
だからそれと同じデザインが欲しいとなれば自ら製作するしかないのだが、原寸でのデザイン数値等がこれまた公表されているわけではないから、ゼロから作らなければならない。
作るといっても見本となる写真のみからのスタートであり、その製作が仮にショボければまったく意味がないシートとなってしまうために、いかに正確に作れるかが勝負となる。
しかも、今回はコンバーチブルベースなので、たとえばクーペに採用されているデザインをそのままコンバーチブルに転写させれば、ルーフの有無による造形の変化がシートにも及ぶわけであり、そのまま貼ればコブラの柄が伸びたり縮んだりと歪むのは当然のことである。
ということで、コブラジェットのデザインを製作にあたり、その時点でコンバーチブル用にサイズやデザインの微調整を行う必要があるのである。
ちなみに、もしベースがクーペだとすれば、そうした調整は必要なくなり、そのままコブラジェットを製作することが可能になる。
で、まずはコブラジェットに関する参考となる写真を集め、複製するためのデータ収集を行う。で、車両の実寸を縮小した車両データをベースにデザインとサイズの調整を行っていくのである。
デザイン製作に関しては、細部までを煮詰めるために必要な様々な角度からのデータ収集をおこない、またコンバーチブルに対応するために各部の調整やロゴの配置を行ない仕上げていく。
最終一歩手前では、一度紙で仕上げ、それを現車に合わせることで微調整を行ない最終データを完成させていく。
このコブラジェットに関しては、マットブラックのシートにデザインし、「ブラックボディ+マットブラックシート」という新たなコンビネーションを試してみるという。で、右面と同じように緻密な貼る作業を行ない終了となる。作業時間は片側で約2時間。計4時間の作業だった。
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