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広島のナッツモーターカンパニーのデモカーに試乗!

2000年型シボレー・コルベット Z51 改

吸排気系&足回りを変更したサーキット仕様のC5

アメ車業界のみならず自動車業界全般に評価の高い新型C7コルベットだが、約1000万円という販売価格を考えれば、高性能なのは当然。もちろん欧州のライバル車と比較すれば、それでもコストパフォーマンスは十分に高い。でも、C5コルベットがデビューした時の価格は530万円。当時も安いとは思ったが、今思えばとんでもないバーゲン価格。時代が違うとは言え、C5というのはとんでもなくコストパフォーマンスが高いモデルだったんだなぁー、と感心するが、それは中古車となった今でも全く変わらない。今回はそんなC5コルベットのチューニングカーを紹介する。

更新日:2014.05.31

文/田中享(Tanaka Susumu) 写真/田中享(Tanaka Susumu)

取材協力/ナッツモーターカンパニー TEL 082-840-3012 [ホームページ] [詳細情報]

C5こそがコルベットのエポックメイキング

 1997年にC5コルベットがデビューした際の衝撃は今でもよく憶えている。正直、見た目の第一印象はそれほどでもなかった。「C4と比べると柔らかいイメージ。ロー&ワイド感は強くなったかな。ちょっとFD(マツダ RX-7)に似てるかな?」という程度。とくに良いとも思わないけど、逆に悪いとも思わないという感じで、そもそもデザイン的な第一印象自体よく憶えていない。

 逆に鮮明に憶えているのが、ステアリングを握って走り始めた際の衝撃。「なんだこれ?スムーズだし曲がるし止まるし、メッチャ速い!」と、想定外の速さと乗り易さにビックリした記憶がある。
 コルベットはその後、2005年にC6が、今年2014年にC7が登場する事になるのだが、モデルチェンジ時の「変わった感」は後にも先にもC5が一番。C5からC6になった際にも、C6がC7になった際にも、明確な『進化』を感じたのは間違いないが、その進化の度合いはC4がC5になった際の『変革』とでも言うべき進化には遠く及ばない。

 各所で絶賛されている現行C7コルベットは、間違いなく史上最強(最速)のコルベットだと思う。しかし、モータージャーナリストさん達が言ってるような「コルベットはC7で世界基準のスーパースポーツに生まれ変わった」というフレーズには少々異論を唱えたい。というのも、筆者的にはコルベットが生まれ変わったのはC5の時であり、その後のC6とC7はC5の正常進化版でしかないと思うからだ。
 もちろんC5とC7では、その速さも完成度の高さも比べ物にならないのは確かだが、そこには17年という時間の隔たりがあるのを忘れてはならない。C5がデビューした当時、C5は既に世界レベルのスポーツカーだったし、それは当時のル・マン 24時間レースにおけるC5-Rの華々しい活躍や、富士スピードウェイにおけるノーマル車やチューニングカーのラップタイムを見れば一目瞭然。
 さらに言えば、コルベットは先代のC6時代のZ06やZR1でも、量産車としては世界最速クラスの実力を持っていたし、何もC7になって突然速くなったわけではないのだ。

直線基調のC4コルベットに比べ、全体に丸みを帯びた流線型のデザインとなった。C4よりもショートホイールベース化され、逆にトレッドはワイド化されており、歴代コルベット随一のボディの薄さも相まって、ロー&ワイド感はC6やC7以上と言える。

室内空間はC4に比べて格段に広く快適になった。ただし、ノーマルのC5のレザーシートは、座り心地は良好だが表面がツルツルと滑り易く、サポート性もイマイチなので、取材車両はスポーツ走行用にスパルコのバケットシートを装着している。

世界で最後のリトラクタブルヘッドライト装着車

 少々前置きが長くなってしまったが、ここからが本題。
 発売開始から17年、発売終了から10年となるC5コルベットだが、中古車市場では未だに高い人気を維持している。元々コルベットというのは、アメ車の中では飛び抜けてリセールバリューが高いモデルではあるのだが、C5の中古車はとくに高値安定傾向にある。

 C5の価格が値崩れしない理由はいくつかある。例えばリトラクタブルヘッドライト。コルベットはC2からC5に到るまで、4世代に渡ってリトラクタブルヘッドライトを採用していたのだが、2005年にデビューしたC6では、衝突安全性などの問題もあってヘッドライトは固定式に変更された。つまり、C5はコルベットの象徴とも言えるリトラクタブルヘッドライトを採用した最後のモデルとなったのである。
 ヘッドライトだけではない。薄くてワイド感のあるスタイルや、高級感のあるインテリアなど、デザイン面でC5に魅力を感じているファンは多く、これが現在のC5人気の高さの理由のひとつになっているのは確かだろう。

C5はコルベットとしてだけでなく、世界最後のリトラクタブルヘッドライト採用車となる。今でこそ見慣れたが、C6のデビュー時には、固定式のヘッドライトには微妙に違和感があった。それでもC6にはC5とのデザイン的共通点も多いが、現行C7と比べると全くの別モノという感じだ。

C6&C7コルベットはC5の正常進化版

 もちろんC5の人気を支えているのは見た目の良さだけではない。見た目以上に大きなポイントとなっているのが性能の高さだ。
 C5に搭載されている5.7リッターV8のLS1エンジンは、現代に到るGM製V8スモールブロックユニットの基幹となった名器で、C6時代のLS2やLS3も、中身はLS1と大差ない。
 最高出力345HP&最大トルク48.8kg-mというカタログスペックは、現在の最新スポーツカーのレベルからすると物足りなく感じるかもしれないが、1480kgという軽量なボディに対しては必要十分。少なくとも、公道を走る限りにおいて、パワー面で不満を感じることはまずないだろう。

 また、トランスアクスル方式を採用することによって実現した前後50:50の重量配分や、ダブルウィッシュボーン&リーフスプリングのサスペンションなども基本的にはC6やC7と大きくは変わらないので、ハンドリングやコーナーリング性能も十分に高い。
 C5の動力性能面をC6やC7と相対評価すれば、それは確かに新しいモデルの方が性能は上なのは間違いない。しかし、普通のユーザーがドライブするのであれば、C5のレベルでもそのポテンシャルを使いこなす事は難しいし、少なくともストリートレベルでの動力性能でC5に不満を感じる事はまずないだろう。
 生産から10年以上を経過する中古車である以上、ボディについては多少なりとも経年劣化で緩んでいる個体が多いのは確かだが、元々のボディ剛性が高い事もあり、サーキットでタイムアタックをするといった使用目的でもない限りは、とくに問題は感じないだろう。

5.7リッターV8のLS1ユニットは、最高出力345HP/5600rpm、最大トルク48.4kg-m/4400rpmを発揮。それまでのGM製スモールブロックユニットと比べると高回転型で、レッドゾーン近くまで一気に吹け上がるレスポンスの良さは、それまでのアメリカンV8のイメージを覆すものだった。

クラッチペダルの踏力は強からず弱からずで丁度良い感じ。ヒール&トゥーを行う人はペダルカバーを装着すると良いだろう。

ライトチューンで劇的に走行性能が向上する?

 前記した通り、スタイル的にも性能的にも『現役』として十分に通用するC5は、フルノーマルで乗っても十分に楽しいモデルだと思うのだが、各部をリファイン(チューン)する事で、C6やC7に迫る速さを手に入れることも出来る。そして、これもまたC5の大きなセールスポイントのひとつとなっている。

 ここで紹介するC5は、広島のナッツモーターカンパニーが制作中のデモカー。2000年型Z51のディーラー車をベースに、吸排気系のファインチューンによるパワーアップと、車高調を中心とした足回りの強化が施されているのだが、試乗した印象としては、パワー的には6リッターV8のLS2ユニットを搭載した初期型C6よりも上で、LS3を搭載した後期型C6と同レベル。

 足回りについては、ザックスの車高調によるローダウン&バネレートの強化と、超軽量のTE37ホイール&Sタイヤ並みにハイグリップなハンコックventus R-SSの組合せが絶妙で、こと旋回性能に限定すれば、最新のC7のスティングレイ(ベースモデル)に迫る能力を感じ取る事が出来た。

ノーマルの横置きリーフスプリングを残したままでダンパーをザックスの車高調タイプに交換。車高はノーマルよりも若干下げられている。

スポーツカー界随一のコストパフォーマンスの高さ

 現在の中古車市場におけるC5のクーペモデルの車両本体価格の相場は、150〜300万円程度。球数の少ない6速マニュアルのZ51はかなり高めの相場を維持しているが、4速ATであれば程度の良いノーマル車でも200万円前後で楽に手が届く。
 先に「C5の中古車相場は高値安定傾向」とは書いたが、それはあくまでも「アメ車の中では」という前提の話。欧州のスーパーカー&スポーツカーと比べれば、値落ちのカーブは決して悪くないし、コストパフォーマンスを考えれば、お買い得感は非常に高い。

 仮に200万円前後で程度の良い中古車を購入し、ここで紹介しているナッツのデモカーと同じように、エアクリーナー&マフラーを交換しコンピューターをリセッティング。さらに車高調などで足回りを好みにセッティングし、タイヤ&ホイールを交換したとしても、100万円もあればお釣りが来る。さらにシートやステアリングを交換したり、クイックシフターを装着したり、スポイラーを追加したりといったメニューを加えたところで、車両本体価格+チューニング代の合計額は400万円以下で済む。

 最新のC7コルベットは確かに凄いスポーツカーだと思う。新車で購入できる資金力がある方であれば、買って損はない素晴らしいクルマだ。しかし、C7を新車で購入する場合、ベーシックなクーペでも約900万円。Z51なら1000万円以上。また、一世代前のC6のZ06やZR1も歴史に残る名車だが、Z06で500〜600万円。ZR1は800〜1000万円。
 C6にしろC7にしろ、その値段に見合った満足が得られるのは間違いないと思うが、「お値段以上の満足感」という観点で言えば、現在の日本におけるC5のコストパフォーマンスの高さはちょっと飛び抜けていると思うのだが、どうだろう?

>>Nuts Motor Company C6コルベットZ06 HPE550へ

インパネ周辺のデザインや質感はC4はもちろん、C6よりも上。メーターパネルセンターに配された大型のアナログメーターは視認性抜群で、スイッチ類の操作性も良好。ステアリングの手触りも良いのだが、唯一ステアリング径が大きい事だけが残念だ。

マニュアルトランスミッションを搭載したZ51の流通量は稀少。歴代モデル全てに言えるのだが、コルベットは新車時にはATの方が売れるのだ。取材車両はショートストロークのクイックシフターを装着していたので、ノーマルに比べるとかなり重めの操作フィールとなっていた。

エアクリーナーをK&Nのコールドエアインテークに交換。吸排気の変更に合わせて、コンピューターのセッティングも最適なマッピングに変更。コンピューターの書換えを担当したのは横浜のアドバンスオート。

マフラーはボーラのエキゾーストシステムに変更。吸排気の変更とコンピューターのリセッティングにより、数値的なパワーも上がっているが、どちらかと言えば音を中心としたフィーリング面の変化の方が顕著だ。

ホイールはレイズTE37、タイヤはハンコックのventus R-SSをチョイス。タイヤサイズはF:255/35ZR18、R:285/35ZR18で、ノーマルと異なり前後とも18インチとなっている。

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