先代モデルであるTJ型までのジープラングラーはオフロード(アウトドア)色の非常に強い特殊な四駆だった。エンジンも足回りも内装も、ひと言で言えばスパルタン。潔いほどハードな造りであり、一般のユーザーが日常ユースに使うのに適したモデルとは言えなかった。
一部のマニア向けの特殊モデルであったジープラングラーが、一気にファン層を拡大したのは2007年に登場したJK型から。
JK型はTJ型からボディサイズを拡大。先々代のYJ型から長年使ってきた4リッター直6OHVユニットに別れを告げ、現代的なV6ユニットを採用。足回りを市街地や高速道路での使用でも不満がないよう、ややマイルドな方向にセッティング。さらにはインテリアなどもより乗用車ライクに変更された。
極めつけはラングラー初の4ドア5人乗りの「アンリミテッド」をラインナップに加えたこと。実用性の高いアンリミテッドが加わった事で、それまでのジープファンとはまったく異なるユーザー層の獲得に成功したのである。
ちなみに、JK型の初期もの4ドア・アンリミテッドに搭載されるエンジンは1種類。それまでの4リッター直列6気筒OHVに変わり、新たに搭載されたエンジンは3.8リッターV6OHV。排気量は若干ダウンしたものの、最高出力で24ps、最大トルクで2.5kg-mアップした199ps/5000rpm、最大トルク32.1kg-m/4000rpmを発生させ、これに4段ATが組み合わされた。
ジープラングラーは2012年にもう一度大きなマイナーチェンジを行っており、搭載エンジンが再び変わっている。いわゆる燃費効率を求めたことによる変更だが、ペンタスター3.6リッターV6DOHCに換装され、284ps、最大トルク35.4kg-mを発生させ、ミッションも5速ATとなっている。
燃費向上を目的としたものとはいえ、85ps増というのは圧倒的なパフォーマンスアップだけに、中古車選びとしては慎重にならざるを得ない。
撮影車はマイナーチェンジ前の2009年型。すなわち3.8リッターエンジンを搭載した一世代前のモデルとなるが、正直この前期型のV6エンジンは、車体の大きさに対してやや非力な印象が否めない。
4ドアのアンリミテッドがラインナップに加わったことにより、ジープラングラーは飛躍的に販売台数を増やすことに成功したが、販売台数の増加はユーザーのドレスアプやカスタムの方向性にも変化をもたらすこととなった。
TJ型までのジープラングラーのカスタムと言えば、オフロードでの走破性を向上させるためのリフトアップやボディ補強といった実用的なカスタムがほとんどだったのだが、アンリミテッドの登場以降は悪路走破性云々ではなく見た目のドレスアップが主流となっていったのだ。
誰が見ても一目で『ジープ』と分かる伝統的なデザインは維持しつつ、中身は都市型SUVで決して泥臭さは感じさせない。適度なドレスアップで他人との差別化を図る。それがアンリミテッドユーザーの現在のトレンドとなっているのである。
ここで紹介するアンリミテッドは、広島のナッツモーターカンパニーがユーザーからのオーダーで制作した1台。
一見しただけではよくある『チョイ上げ』仕様だが、プロコンプの2.5インチアップキット&KMCロックスターを組み合わせた足回りは、その気になれば本格的なオフロードでも十分に走破可能。
4インチや6インチといったハイリフトではなく、35インチのファットタイヤが無理なく収まるギリギリのチョイ上げをチョイスすることで、見た目と走行性能を高いレベルで両立させているのである。
また、前期JK型の唯一最大の弱点とも言える非力な3.8リッターV6ユニットは、ディアブロスポーツのデバイスを使ったROMチューンでパワー&トルクを向上させており、高速道路のちょっとした追い越しなどで感じる不満を解消することに成功。このチューンは、過激なパワーアップを望むものではなく、あくまで実用上のプラスアルファであるのだが、その効果はかなりあるという。
さらには「バイクを積んで運びたい」というオーナーの要望を叶えるためにヒッチカプラー&モーターサイクルキャリアをセット。見た目と中身両方にこだわった1台として仕上げられている。
そろそろ次世代ラングラーJL型が登場するが、その一方でJK型の中古車も市場にかなりの数が流入するはずである。旧世代の味のあるラングラーを、自分なりに仕上げる行為もまた楽しいはずである。
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