アメリカ人はフルサイズバンをガンガン使い倒しているようなイメージがあるが、歴史的にはそれほど長くはない。彼らにとっての遊びのお供はあくまでもピックアップトラックであって、フルサイズバンではなかったからだ。それが70年代にヒッピーたちが移動の足に使い出すと、その便利さにみんなが気付いた。それが今日的フルサイズバンの使われ方のはじまりである。
それまでのフルサイズバンといえば、商業ユース一辺倒。宅配業者に水道工事、クリーニングデリバリー、フラワーショップといった感じである。なので、キャビンの中といえばフロントシートのみ。いわゆるカーゴスタイルが当たり前で、そこに必要な工具や荷物を積むのが基本的なフルサイズバンスタイルだった。
だが、その利便性の高さから、徐々に一般的にも使われるようになった。すなわち、ピックアップトラックやステーションワゴンなどと同等の価値が見い出され、一般家庭でも所有する家が続々と出てきたのである。
とはいえ、アメリカの一般的なガレージでもそれは大き過ぎた(笑)。長さもそうだし、背丈もポピュラーなガレージユニットからはみ出してしまったのである。余談だが、これこそがミニバンが生まれた理由であった。メーカーとしては各家庭のガレージに納まるバンを作ればヒットすると考えたのだろう。
1970年代以降、フルサイズバンはいろいろな使われ方をしはじめた。アウトドアスポーツにキャンプにと、そのキャパシティは最大限のチカラを発揮した。
もっといえば、アメリカではトーイングなんて風習もある。バスボードからクルーザー、トレーラーハウスまで牽引して、彼らは遊びに出かける。その場合、FRベースとなるフルサイズバンが功を奏するのはご想像のとおり。
リア駆動の方が、重いモノを牽引してフロントタイヤの荷重が減ってもちゃんと真っ直ぐ走るからだ。これがFFだと、前が浮いちゃってなかなかそうはいかないこともあるのだ。
ついでにいうと、グアムやハワイなんかに行くと空港からホテルまでの送迎用にフルサイズバンが用意してあったりする。ごらんのように右ドアのスライドドアに、ルーフにキャリアを設置してどんどん荷物を載せて…、といった具合にだ。
もちろん、ファミリーカーとしても大活躍。複数家族をまとめてキャンプやバーベキューなんてのはお手のもの。加えてトライアル用バイクに、マウンテンバイクやロード用チャリ、はたまたサーフボードやらをカーゴに積み込んで走り回る。まさに、海に山に大忙しだ。
しかもとことん遊んで疲れ切ったって、想像以上に運転がラクなんで、帰りも楽々ドライブができちゃうし。
フルサイズバンは、モデルもいろいろ選べ、サイズもロングにショートにマキシロングと様々だし、エンジンタイプもいろいろある。乗用目的のワゴンもあれば商業目的のカーゴバンもある。シートの数はお好みで…。
とまぁ、いろいろ膨らむフルサイズバン生活だが、基本はやっぱり趣味や遊びの友として使って欲しい。こういうクルマは、買って終わりじゃなく使い倒してなんぼ。どちらかというと、クルマよりも遊びの方が大事だったりする。すなわち、人生を楽しむことに直結するということである。
というわけで、この2014年型シボレーエクスプレスは、ド派手なイエローカラーとデコレーションに目が行くが、ルーフキャリアもついてるし、遊びの友として抜群の能力を発揮するはずである。
加えてエクスプレスのG1500シリーズも2014年を最後に生産終了となっただけに、最終モデルの新車を買って長い年月一緒に暮らすという、ある種の自動車ロマンにも浸ることができるのである。
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