アメリカ人はフルサイズバンをガンガン使い倒しているようなイメージがあるが、歴史的にはそれほど長くはない。彼らにとっての遊びのお供はあくまでもピックアップトラックであって、フルサイズバンではなかったからだ。それが70年代にヒッピーたちが移動の足に使い出すと、その便利さにみんなが気付いた。それが今日的フルサイズバンの使われ方のはじまりである。
それまでのフルサイズバンといえば、商業ユース一辺倒。宅配業者に水道工事、クリーニングデリバリー、フラワーショップといった感じである。なので、キャビンの中といえばフロントシートのみ。いわゆるカーゴスタイルが当たり前で、そこに必要な工具や荷物を積むのが基本的なフルサイズバンスタイルだった。
だが、その利便性の高さから、徐々に一般的にも使われるようになった。すなわち、ピックアップトラックやステーションワゴンなどと同等の価値が見い出され、一般家庭でも所有する家が続々と出てきたのである。
とはいえ、アメリカの一般的なガレージでもそれは大き過ぎた(笑)。長さもそうだし、背丈もポピュラーなガレージユニットからはみ出してしまったのである。余談だが、これこそがミニバンが生まれた理由であった。メーカーとしては各家庭のガレージに納まるバンを作ればヒットすると考えたのだろう。
2014年型G1500の新車。まるでどこかのコマーシャルカーのような派手な出で立ちだが、メーカー純正のイエローカラー。ルーフ上のキャリアには二灯のライトが装着されているが、法律上、点灯させながら日本の道路を走らせることはできない。
この型からオプションで両側ドアが選べるようになり、日本での使い勝手も格段に良くなったが、今回取材した個体は本国仕様の右側ドアのみ。しかもオプションのスライド。そう言う意味では多少の不便さを感じるかもしれないが、本国仕様というレアモデルを手に入れる機会はそうはないだろう。
ルーフキャリアの付いているフルサイズバンを初めて見たが、意外にも似合っている。実際にルーフに荷物を載せるのは大変だと思うが、一気にアクティブな印象になるから面白い。
ボディの強さと遊びの少ないステアリングの感覚がこの型の特徴。高速巡航も得意で、まるでSUVのような走りの印象を抱かせる。
1970年代以降、フルサイズバンはいろいろな使われ方をしはじめた。アウトドアスポーツにキャンプにと、そのキャパシティは最大限のチカラを発揮した。
もっといえば、アメリカではトーイングなんて風習もある。バスボードからクルーザー、トレーラーハウスまで牽引して、彼らは遊びに出かける。その場合、FRベースとなるフルサイズバンが功を奏するのはご想像のとおり。
リア駆動の方が、重いモノを牽引してフロントタイヤの荷重が減ってもちゃんと真っ直ぐ走るからだ。これがFFだと、前が浮いちゃってなかなかそうはいかないこともあるのだ。
ついでにいうと、グアムやハワイなんかに行くと空港からホテルまでの送迎用にフルサイズバンが用意してあったりする。ごらんのように右ドアのスライドドアに、ルーフにキャリアを設置してどんどん荷物を載せて…、といった具合にだ。
もちろん、ファミリーカーとしても大活躍。複数家族をまとめてキャンプやバーベキューなんてのはお手のもの。加えてトライアル用バイクに、マウンテンバイクやロード用チャリ、はたまたサーフボードやらをカーゴに積み込んで走り回る。まさに、海に山に大忙しだ。
しかもとことん遊んで疲れ切ったって、想像以上に運転がラクなんで、帰りも楽々ドライブができちゃうし。
搭載されるエンジンは、5.3リッターV8。310hp、最大トルク334lb-ftを発生させ、4速ATと組み合わされる。別項で紹介されているフォードE150と比較するとパワー差は大きく走りのレベルは一段上だ。
インパネのデザインやステアリング等の意匠は、まさに先代タホのような印象を与えてくれる。バンらしいシンプルなデザインだが、昔のような質感の低さではないから、満足できる。
セカンドシートは、ベンチタイプのシート。取り外し可能なので、広大な荷室スペースが確保できる。
ドライバーズシートからの視界は良好で、慣れてしまえば大きさに気を使うことはなくなる。だが、リアの長さには気をつけることは必要かも。
フルサイズバンは、モデルもいろいろ選べ、サイズもロングにショートにマキシロングと様々だし、エンジンタイプもいろいろある。乗用目的のワゴンもあれば商業目的のカーゴバンもある。シートの数はお好みで…。
とまぁ、いろいろ膨らむフルサイズバン生活だが、基本はやっぱり趣味や遊びの友として使って欲しい。こういうクルマは、買って終わりじゃなく使い倒してなんぼ。どちらかというと、クルマよりも遊びの方が大事だったりする。すなわち、人生を楽しむことに直結するということである。
というわけで、この2014年型シボレーエクスプレスは、ド派手なイエローカラーとデコレーションに目が行くが、ルーフキャリアもついてるし、遊びの友として抜群の能力を発揮するはずである。
加えてエクスプレスのG1500シリーズも2014年を最後に生産終了となっただけに、最終モデルの新車を買って長い年月一緒に暮らすという、ある種の自動車ロマンにも浸ることができるのである。
ホイールは純正のP245/70R17インチを履いている。購入後には、手をつけたい唯一のポイントかも。
オプションの右側スライドドアを装備したフレームボディの最終モデル。2015年モデルからは、5.3リッターV8搭載のG1500は生産終了し、4.8リッターV8にとって代わられた。ボディもG1500はなくなり、G25004とG3500のみとなる。
リアスイングドアを開ければ広大な荷室が現れる。
ルーフキャリアのライトにグリル内のライト、それにヘッドライトと6灯を点灯させてみた。何度も言うが、このままでは道路は走れないので、遊びに使いましょう。
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