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走行距離 にこだわり過ぎるのは勿体ない?

第4回_日本とアメリカの交通事情の違いとメーターの改ざんについて

今回は中古車の走行距離についての話です。結論から言えば『走行距離と車両のコンディションは比例しない』ということを解説しているのですが、途中で少し脱線しております。一般常識的な内容も多く、かなり長い文章になってしまいましたが、中古車購入時に役立つと思いますので、なんとか最後まで読んでみてください。

更新日:2011.06.03

文/田中享 写真/佐藤安孝

広いアメリカ、狭い日本

 走行距離そのものやメーターの巻き戻し(改ざん)の話をする前に、日本とアメリカの違いについて少し話したいと思います。「今更…」と思われる方は、ここは飛ばしてもらってOKです。

  まず、アメリカと日本の最大の違いは土地の広さ=国土です。国土面積377,930㎢の日本に対し、アメリカは9,629,091㎢。実に25倍以上です。これほど広さが違うにも関らず、人口は日本の約2.5倍ほど。日本の126,535,920人に対してアメリカは310,383,948人です。さらに自動車保有台数を比較すると、日本の約7500万台に対し、アメリカは約2億5000万台。約3.3倍です。
 日本の25倍も広い国土に、日本の2.5倍の人間と3.3倍程度のクルマしかないわけですから、日本とアメリカの道路交通事情が大きく異なるのは当然の帰結です。まず、土地に十分な余裕があるアメリカは道幅がとにかく広く、日本の高速道路に該当するフリーウェイは、場所によっては片側6車線もあります。下道(一般道)に関してはフリーウェイほど大きな差はありませんが、それでも平均的な日本の道路よりも道幅が広いのが普通です。 また、手元に正確なデータがあるわけではないので断言はできませんが、道路の長さに対する信号機の数も、アメリカは日本よりもずっと少ない気がします。
 道路が広く、人口密度もクルマの密度も低く、さらには信号機も少ないわけですから、アメリカの道路交通事情が日本よりも良いのは当然でしょう。私の個人的な感覚では、アメリカの平均的な道路交通事情は、北海道の郊外と同等といった感じ。とにかく運転しやすいイメージです。

アメリカでは大都市のフリーウェイでも片側6車線の区間があります。また、道幅自体が非常に広いことに驚かされます。

郊外のフリーウェイでは果てしなく直線が続くような道もあります。交通量の少なさは日本で言えば中国自動車道レベル?

走行距離を気にするのは日本人だけ?

 次に、日本人の交通手段は電車が主役ですが、アメリカはニューヨークなどの一部を除き、日本ほど鉄道網が発達していないので、移動手段はもっぱらクルマと飛行機がメインとなります。当然ながら一般人がクルマを使う頻度も乗る距離も、日本の比ではありません。日本でも田舎の方に行けば主要交通機関がクルマという地域も少なくありませんが、国土が狭い以上、アメリカのように距離を走ることはありません。これも手元に正確な資料があるわけではありませんが、日本の平均的なマイカーが走る距離が1年に1万kmから1万5000kmとすると、アメリカはその3倍から5倍、3万kmから5万kmは楽に走っていると思います。
 国土が広くて交通事情の良いアメリカでは、クルマの走行距離に対する考え方も日本とは大きく異なります。日本では走行10万kmを乗用車のひとつの寿命のように考えるオーナーが多いようですが、アメリカでは10万km(6万マイル強)程度の走行距離を気にする人はほとんどいません。20万kmや30万km走った車両てもユーザーは普通に乗っているし、中古車も販売されています。タウン誌などのフリーペーパーを見ると、日本では下取りでしか値が付かないような走行距離10万km以上のトヨタ・カムリやホンダ・アコードが、「えっ!」と思うくらいの高値で販売されているのにビックリします。

 アメリカ人と日本人では、クルマの走行距離に対する考え方が全く違うというのはまぎれも無い事実ですが、これに関してはひとつ面白い逸話があります。もう10年以上前、アメ車専門誌の編集長をやっている時にYさんというシッパー(アメリカでクルマを仕入れて日本へ送る人)から聞いた話なのですが、アメ車のメーターの改ざんという行為は実は日本が発祥だと言うのです。
 Yさんによれば、アストロ&サファリが日本でブレイクし始めた当時、日本のアメ車ショップの依頼を受けたYさんは大量の車両を日本に送ったそうです。輸出を始めた当初はそれなりに程度にもこだわって車両を探していたYさんですが、次第に日本からの注文に仕入れが追いつかなくなり、途中からはレンタカー落ちなどを中心にクルマを集めるようになったそうです。
 しかし、レンタカーというのは年式の割に走行距離が多い車両が多く、10万kmや20万kmはザラという世界。ところが、走行距離神話が強い日本では、いくら人気で品薄とはいえ、20万kmも走った車両はまず売れません。そこで日本のショップはYさんに現地でメーターを巻き戻すように指示し、Yさんは仕方なくアメリカの業者に「メーターを巻き戻してほしい」と依頼したそうなんですが、その時に相手のアメリカ人は心底不思議そうな顔で「なんでそんなことするんだ?」と言って、最初は作業を拒否したそうです。そこでYさんは仕方なく「年式や程度に関らず、日本人は走行距離の多いクルマは買わないんだ」というようなことを説明し作業をやってもらったそうですが、そのアメリカ人は、この一件以来、日本人のシッパーから仕事の依頼がある度に「このクルマの走行距離は何マイルにするんだい」と言うようになったとか。
 この話が全て真実かどうかは分かりません。ただ、同様の話は他の方からも聞いたことがありますし、アメリカ人が日本人ほど走行距離を気にしないのは事実ですから、日本人を揶揄しただけの笑い話ということもないと思います。

トラックなどクルマのサイズが大きいからかもしれませんが、一般道の広さも半端ではありません。町の中心街を少し離れるだけで、非常に広い道路があったりします。

ちょっと田舎に行くと、写真のような広くて交通量の少ない道路が珍しくありません。写真を見ただけでも、日本の道路とは感覚が全く違うのが分かると思います。

走行距離の長短とクルマの状態は関係ない?

 クルマの走行距離をあまり気にしないアメリカ人と気にする日本人、一体どちらの感覚が正しいのか? 実は意外にもどちらも正しいというか「間違ってはいない」のが正解です。

 同じクルマを同一条件で走らせるのであれば、走行距離が長くなるほどクルマのダメージは大きくなります。そういう意味では一般的な日本人の考え方は間違いではありません。しかし、クルマというのは使用状況によって各部へのダメージは大きく変わります。
 例えば東京や大阪など、信号機が多く交通集中による渋滞が頻発する大都市で使用しているクルマには非常に大きなストレスがかかります。ストップ&ゴーが多いと、それだけブレーキやミッションに負担がかかることになりますし、アイドリングとハーフアクセルを繰り返す状況では、エンジンがしっかりと回ることができないので不完全燃焼が起こりやすく、カーボンなども付着しやすくなります。さらにはエアコンやオーディオ、場合によってはライトやワイパーをつけた状態で長時間渋滞にハマる状況が多いと、バッテリーやオルタネーターといった電装系の負担も大きくなるし、ちょっと古めのクルマであれば水温の上昇によるダメージも考えなければなりません。
 しかも、そういった見えないダメージを受けていても、走行距離自体は大して伸びないクルマが多いので、エンジンオイルなどの油脂類の交換サイクルも長期になりやすく、それがまたクルマへのダメージを助長する原因になります。都会で使用されるクルマというのは、田舎で使用されるクルマよりも年式の割に走行距離が少ない個体が多いのですが、いくら走行距離が短くても、通勤やチョイ乗りで渋滞にばかりハマっていたような車両は、思いのほか調子が悪かったりヘタっていたりすることが少なくないのです。
 逆に交通量が少なく信号も少ない田舎の場合、上記のようなストレスがかからない分、クルマに対して優しい環境と言えます。田舎で使用されるマイカーというのは、都会のマイカーよりも走行距離は伸びやすいのですが、走行距離が同程度であれば間違いなく都会のクルマよりも好調だし、仮に少々走行距離が伸びていても、状態の良い車両が多いと言えます。

 この都会と田舎におけるクルマの使用状況の違いは、日本とアメリカの使用状況の違いにも通じます。
 先に解説した通り、アメリカの道路は道幅が広く信号が少ないだけでなく、アップダウンやコーナーの比率も日本よりは遥かに少ないので、クルマにとっては日本の田舎以上に良好な環境と言えます。さらにアメリカは高温多湿の日本に比べると空気が乾燥しており、これもまた金属部品の多いクルマには有利な環境の一因となっています。
 メンテナンスの状況や運転の仕方にもよりますが、仮に同じクルマを新車で買って1年乗った場合、日本の都会で1万km走った車両とアメリカで3万km走った車両では、アメリカで使われていた車両の方が全体的な状態は良いと思います。ただし、これはあくまでも私個人の経験から発している意見であって、明確なデータが存在するわけではありませんし、「走行距離が短い方が良いに決まってる」という意見に対して積極的に反対をするつもりもありません。
 また、いくら走行距離とクルマの程度が直結しないとは言っても、20万kmも30万kmも走ったクルマの場合、それなりの注意が必要なのは間違いありません。仮に「走行距離の割には調子が良い」と言えるクルマでも、金属疲労で劣化している部分が見られたり、2~3万kmの走行ではまず気にする必要のない部品が寿命になってしまっている可能性も十分に考えられます。
 逆に実走行距離が短くても、渋滞にばかりハマるような環境で使用され、おざなりのメンテナンスしかされていなかったようなクルマは、いくら外観がキレイでも調子に信頼はおけないと言えます。

 以上、色々と書きましたが、私は何も「走行距離を軽視してもいい」と言ってるわけではありません。「使用環境やメンテナンスといった要素を無視して走行距離だけで車両の状態を判断するのは無意味である」と言っているだけです。世の中には、走行距離が少し多いというだけで平均的な相場よりも安い価格で販売されている中古車が存在します。そいういったクルマをただ単に走行距離が多いという理由だけで敬遠するのは勿体ないですよ。と、そういうことが言いたいわけです。


注)クルマへのダメージと聞くと、峠やサーキットを走ったり高速道路をぶっ飛ばしたりといったイメージを思い浮かべる方もいるかもしれません。確かにスポーツ走行などで性能の限界近くまで攻める運転をすれば、クルマには通常では考えられないような負荷がかかるので、部分的に相当のダメージを受けたりもします。ただ、これはかなり特殊な例なので、上記の説明からは省きました。

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都市部の交通量はそれなりに多いし、渋滞が皆無ということはありませんが、少なくとも東京や大阪のようなメチャメチャな渋滞は滅多に見られません。

私がアメリカを走る際に必ず渋滞に遭遇するのは、ラスベガスで開催されるSEMA SHOWの帰り道だけかもしれません(笑)

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