ゴールデンウイーク最終日に起こったハリケーン被害が脳裏からまだ離れないある日、都内公園で一台のダッジデュランゴを撮影していた。SP360というやつである。取材が始まり、しばらくすると天候が一変。辺りが急に暗くなり、めちゃめちゃな突風&豪雨。まったくもってとんだ災難だったと思っていたら、後に分かったのだが、アメリカ自動車業界の伝説・キャロルシェルビー氏がその日に亡くなっていた。
当日取材していたデュランゴは、偶然にもシェルビー氏が手がけたSP360をベースにレーストラックの高橋氏が日本仕様にチューニングした車両だった。あのときの豪雨は、天からの知らせだったのか…。もちろん後から分かったことなので、単なる偶然が重なっただけかもしれないし、筆者自身がこじつけている気もしないではないが。何かの縁を感じないでもない…。
ちなみに余談だが、キャロルシェルビー氏についてちょっと。彼はル・マン24時間レースで優勝したり、F1レーサーとしても活躍した生粋のレーシングドライバーだった。病にてレーサーを引退した後に「シェルビー・アメリカン」という会社を設立。かの有名なACコブラを生み出し、フォードGTや初代マスタングをベースにしたシェルビーGT500やGT300などを製作するに至る。
そんなシェルビー氏は、実はダッジバイパーの開発にもかかわったりするなど、かなりの人物、というかアメリカンマッスルの「レジェンド」と言っても過言ではない。そんな彼が「生涯で最初で最後の最強SUVを造る」という名目で手がけたマシン、それが「SHELBY SP 360(以下SP 360)」だった。デュランゴをベースに製作した最強マシンである。
話は変わるが、アメリカ本国において鮮烈なデビューを果たしたSP 360にはルーツがあった。それが、ここで紹介しているスーパーパースィットである。基本設計はレーストラックが行い、1998年にセマショーに出展している仕様だ。詳しい話はまたの機会に譲るが、このスーパーパースィットを見たシェルビー氏から直々にコンタクトがあったのだ。それがSP 360のきっかけである。
「最強SUVを造るから、一緒にやろう。しがない日本の一メカニックに声をかけてくれた、そのひと言がいまだに『自信』になっていますね」とはレーストラック代表の高橋氏。1999年当時、心臓にペースメーカーを入れていたシェルビー氏だったが、精力的に動いていた。そしてそんな彼とほんの一瞬でも同じ境遇に入れたことが高橋氏の誇りでもあるという。
完成したSP 360が初めて日本にやってきた当時、試乗時の第一印象はあまりいいものではなかったという。そう、いわゆるアメリカンな大味なドライブフィールだったのだ。「アメリカ国内を速く快適に走るにはいいが(それでもノーマルよりはかなり速い)、細くキツいコーナーの多い日本には不向きなセッティングである」と。
そこで、日本の道路事情にマッチすべく、SP 360をベースに改めてレーストラックオリジナルのセッティング&チューニングを施したのである。そして、そのモデルをシェルビーブランドとは切り離し、改めて「スーパーパースィット」と名付けたのだ。かなり長い前置きだったが、そういうことだ。
ゆえにコイツは、見かけ倒しの伊達クルマじゃない! 存在感のあるエクステリアはもちろんのこと、そのパフォーマンスも十分に刺激的。ステアリングを握った瞬間からドライバーに訴えかけてくるハイパフォーマンス、これこそが「スーパーパースィット」の魅力である。まさに意のままに操ることができるスーパーSUVだ。
軽快かつレスポンス良く吹け上がるエンジンは、思い通りの加速を見せつけ、程良く引き締まった足回りはロールを抑え、常に安定した挙動姿勢を保ってくれる。トータルな走行性能が高い分、いかなる状況下においても、思い切ってアクセルを踏み込むことができるのが魅力。このクルマを運転する以上、SUVだからといってフラストレーションが溜まることは絶対にない!
最近思うのだが、刺激的なマシンかつ利便性を兼ね備えたクルマを理想の一台とするならば、やっぱりアメリカンSUVこそが最高なのではないか?。最低5人乗れて、エンジンベースはスポーツカーと同一。パフォーマンスを上げようと思えば、いくらでもパーツが存在する。
もちろん2人、4人乗りのクーぺも楽しいのは間違いないが、一台ですべてをまかなわなきゃいけない父親には、最高のベースマシンではないかと。もちろん余裕があれば、カマロやチャージャーを買えばいい。だが、人生においてそういう買い物が許されない時期ってのが、絶対にあるはずで(生涯独身を貫かれる方はその限りではないが…)、そういう方々は是非SUVを手に入れて、長く愛して欲しいと思う。
乗って楽しいクルマ、そして刺激的、でもって人と荷物をたくさん乗せられる…。そんなワガママな要求を高い次元で実現させてくれるのがスーパーパースィットである。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES