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[試乗記]

5th初期デザイン+V8エンジン+MT車という超希少性

2010 シボレーカマロ SS

ちょっと古めのモデルまで視野を広げ自分にとって唯一無二の愛車に長く乗る

2010年にデビューした5代目シボレーカマロのユーザーカーを取材した。

更新日:2025.11.06

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

自分なりの中古車選びの参考に

 まずは5thカマロの概略から。2002年に4thカマロが生産終了し一旦カマロは終了となり、そのまま7年が過ぎる。

 だが、その間にフォードマスタングとダッジチャージャーが復刻し、2008年にはダッジチャレンジャーまでもが復活。そしてそれらに導かれ2009年(発売開始は2010年)、満を持して5thシボレーカマロが復活する。

 7年間もの空白期間を経て登場した5thカマロは、初代カマロをモチーフにしたデザインとニュルブルクリンクを走り込んで作った高剛性ボディ&シャシーを引っ提げてデビュー。それまでのカマロに見え隠れしていたひ弱さは微塵も見えず、その当時では別格の品質感をもって多くの人々に驚きを与えた。

 そんな5thカマロの最大の魅力は、ガッチリとしたステアリング(支持剛性の高い)とボディ骨格、そしてかなりのレベルまで追い込まないと破綻を見せないシャシーetc。

 すなわち、タイヤ、ショック、ブレーキ等の消耗品のヤレは避けられないが、中古車となってもクルマの骨格となる骨太さはまったく失われず、その魅力を理解する方にはもってこいの1台になり得る可能性を秘めている。

▲7年の空白期間を経て登場した5thカマロ。初代をモチーフに2010年に復刻される。ボディ剛性やハンドリングはマスタング、チャレンジャーと比較してもレベルが圧倒的に高かった。

▲2010年から2012年まではこのリアデザイン。フロントからリアに至るまでのデザインバランスが魅力。このリアテールは2013年から変更される。

 さて5thカマロの特徴であるが、それはそれ以前のカマロと同様に年式による小刻みな変更が多く行なわれていること。たとえば2010年に登場し2013年にはリアテールのデザイン形状が変更されている。

 そして2014年にはマイナーチェンジでデザインを大幅変更。と同時にカマロZ28が登場。そして2015年いっぱいで5thカマロは終了し、2016年からは6thカマロへ進化している。

 で、ここでのポイントは5thカマロの中古車についてである=年式や好みに応じたモデル選びが非常に重要になるということ。そしてここでは5th初期の秀逸さについて語る。

 まずはデザイン。初代をモチーフにしたデザインとリアテールのバランスの良さ。上記のように2013年にはそのリアテールが変更されてしまうから、この前後デザインバランスが味わえるのは2010年から2012年まで。

 特にリアデザインは秀逸であったが、2014年にC7コルベットが登場し、そのデザインモチーフがコルベットにも使われているからと(GM内での上下関係により)、カマロは2013年にリアテールのデザイン変更を余儀なくされた! が、これが非常に不評であった。実際に一気にショボくなった。

▲搭載されるエンジンは6.2リッターV8。MTモデルは426hpを発生させる。

▲ラムエアを装着している。唯一のカスタムポイント。

▲ノーマル純正だからこそのフィールの良さが残っている。

 くわえてV8エンジン搭載モデルであること。そしてマニュアルミッションでもあること。この年代のカマロには下位モデルにV6エンジンもラインナップされていたから、当然、市場の中心モデルとなり、数も多い。すなわちV8モデルが少ない。

 よって5th初期モデルのV8+MTモデルは極小と言っても過言ではない=非常に魅力的な個体であるということ。

 ちなみに5thカマロに搭載されるV8エンジンは、当初2種類あり、ATモデルとMTモデルとでは出力に差があった。ともに6.2リッターのOHVユニットだが、スペックが若干違う。MTモデルは426hp、ATモデルは410hpを発生させていた(ともに最高出力の発生回転数は5900rpm)

 よって若干だが、MTの方が軽やかに、そして劇的なV8サウンドの盛り上がりが期待できる。

 ということで、取材個体であるが、この個体はレーストラックにて定期整備を受けている個体。走行約4万6000キロ弱で、オーナーさんは新車で購入され、そのまま15年乗り続けている。これまでにラムエアを装着したりちょっとしたカスタマイズで雰囲気変えを行っているが、基本はフルノーマル。

▲7年の空白期間を経てデビューした5thカマロのインテリア。だからこその力作。この後、特に2013年から2015年まではコストカットの跡が明確に見られるから、5thカマロなら初期モデルが断然オススメ。

▲6速MTのフィーリングはスポーティなもの。ストロークも長くなく、運転して楽しいタイプ。

▲クラッチの操作性も非常に良い。MT車が運転可能なら誰でも操作可能。

 この取材の直前に大排気量エンジン特有のウォーターポンプのガタの発生により交換作業を行ったが、それ以外は好調極まりないという。実際、この15年で大きなトラブルはそのウォーターポンプのガタのみ。それ以外は一般的な消耗品交換で済んでいる。

 一方でV8+MTモデルは、速度域関係なくドライバーを高揚させ、それでいてMTモデルのクラッチ操作はまるで国産車のようにクセがなく普通に操作可能だから乗るのに「覚悟」が必要なタイプでは全くない。毎日の足としてもいたって普通に使えるタイプ。

 撮影時間内に乗せてもらったが、本当にカッコ良く楽しいモデルであった。そして同時に以下のような思いが芽生えた。「あえて新車や物凄いパワー&スピードを望まなければ、これで十分じゃないか」

 逆に、もうほとんど手に入らない(かもしれない)V8+MTの5thカマロ。しかも2012年までの初期デザインモデル。すでにカマロ自体が生産終了しているから貴重な存在であることに間違いなく、さらに5thモデルとしての希少性もある。

▲メーター内のデザインも非常に秀逸。インテリア全体の雰囲気とのマッチングも良好。

▲センターコンソール下部にあるサブメーターもデザインのオススメポイント。

▲シートはレザーのバケットタイプ。

 そしてこのまま乗って年月を重ねていけば、自分で作るビンテージカーになり得る! ちなみにすでに15年、あと10年は余裕で乗れるだろうからその時点で25年である。

 レーストラックの高橋氏も「もし手放したらもう二度と手に入らない個体だよね。しかも年式的にはコンピューター制御の複雑さが現代の最新車両ほどではないから何かあった時の対応もさほど難しいものではない。そういう意味では長く乗るのに非常に優れた年式と言えると思うんです」

 付け加えれば、このカマロの年式の個体が、今の時代に新たにアメリカから直輸入されていることは全くない。よって今日本にある個体の中から選ぶしかない。その中から選ぶにもこの5thの初期のV8モデルは極めて少ない。

▲室内のクオリティも高く、デザイン的洗練度もある。7年ぶりのニューモデルということで、かなりの力作だったからこそ、今なお満足できるほどの魅力がある。そしてV8+MTで一層面白い。

▲直近でウォーターポンプのガタの整備を行っているが、基本的には非常に丈夫。15年で大きなトラブルは今回のみ。

▲年々コンピューター制御が複雑になる現代の車両以前の中古車であるから、整備対応もかなり楽になる。とはいえ機器や知識や能力は必要になるから誰でも可能というわけではない。

 だからというわけではないが、この5thカマロを参考に年式的な部分や個体の選びやすさを鑑みた、自分なりの中古車選びをやってみてはどうか。自分にとって唯一無二のモデルを見つけ長く乗る。そして自分のスタイルを作る。

 いずれにしても、新車のガソリンエンジンモデルが少なくなってきている現在においては、中古車選びがキモとなる。その際にはちょっと古めのモデルまで選択幅を広げてみると、新しい自分を作ることが可能になるかもしれないのである。

 と同時に、今お乗りの愛車があれば、末長く愛してやってください。

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