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あえて「ビンテージ」と呼ぶコダワリのコルベット

1965 シボレーコルベット コンバーチブル (CHEVROLET CORVETTE)

思う存分走らせたい派にオススメの個体

世界的な傾向として「旧車」の価格が上がっている。それはもともと価値あるものが、再認識されたことによるものなのだが、一方でそうした急騰により、今後手に入らなくなる可能性が非常に高まってくる。旧車は一期一会。良いものは次から次へとなくなっていくから、お早めに。

更新日:2014.11.11

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

旧車こそ本当に価値あるアメ車

 今、アメリカ本国での旧車の価値が跳ね上がている。もちろんアメリカには、旧車に価値を見出す歴史的文化的背景があり、だからこそ旧車の価値は前からあるのだが、それにも増して今、全体的に価格が高騰しているという。

 ちなみに文化背景から見れば、「いつかはホンモノを」といった憧れを抱いている方々が多く存在し、そういう方々は、「まだ今は旧車の世話ができないので、あえて現行モデルを買い、いつか必ずや旧車を手に入れよう」と頑張っている。すなわち、現行モデルに乗るのは、旧車を手に入れるため、というからびっくりしてしまう。=それだけ自国の旧車を愛し、価値を見出しているということである。

 一方でセレブと言われる方々は、もちろん時代に即した流行りモノに乗るわけだから、一時はプリウスなんかにも乗っていたが、やはり彼らも自国の歴史的な旧車を持ってい必ず1台は持っているという。

 たしかに先日見た、パパラッチに終われていたブルースウイルスは、まさにC2コルベットコンバーチブルに乗っていたし、雑誌に載っていたベンアフレックは、SS396のシェベルマリブに乗っていた…。流行りもの命みたいな有名人の方々もこぞって自国の旧車には乗っているわけである。

 ちなみに余談だが、そういった旧車高騰の傾向は世界的な動向としても見られ、ポルシェ911の旧車やフェラーリ・ディーノは手がつけられない価格となっているということで、逆にそういった旧車系スポーツカーを日本から海外に持ち込む商売が成り立っているというから驚きである。

フロントヘッドライトは、ある意味リトラクタブルヘッドライト。ぐるっと回転して出てくるのだが、この車両は難なく動作する。C2コルベットは、ヘッドライトを出さない方が、断然クールな表情を示す。

65年製は、モデルイヤー途中にビッグブロックエンジンが追加される等動きが激しかった年のモデル。フェンダーのエアアウトレットが縦三本のスリット形状になったのも65年からである。

旧車でしか見られない緩やかなカーブを描くリアの造形。こうした、ある意味手作り的な暖かみのあるデザインこそ、所有欲を満たす。C2コルベットは、クーペのスプリットウインドーが有名だが、じつはツウほどコンバーチブルを欲しがるということだから、皆このリアデザインにヤラレてしまうのだろう。

日系デザイナー、ラリーシノダの手によるアグレッシブなスタイルが描かれた試作車・マコシャーク。これこそC2コルベットのベースとなったクルマである。

自社基準で自ら仕入れたコダワリのビンテージ

 そんな旧車と言われるアメリカ車を日本に持ち込んでいるBUBUのBCD。このBCDの旧車部門は、あえて決まった車両を販売するわけではない、というから面白い。

 すなわち、GM専門とかフォードオンリーとかモパーとかいう決め事はまったくなく、あくまでコンディション優良の旧車を販売するというのがポリシー。だから彼らは旧車を「ビンテージ」と呼び、歴史を感じさせる、そのものの姿を保持した名品を直輸入し、販売するのである。

 しかも販売車両は、直接日本人のバイヤーが現地に飛び、個人オーナーから買い付けることが多いという。それにより、日本人の目で見た車両鑑定と、また所有者と直接交渉することでオーナー自身を見る事ができ、それも「車両の状態を把握する事と同じくらい大切なこと」とのコダワリを貫いている。上記にも記したが、自国の旧車を愛するアメリカンがまだまだたくさんいるからこそ、こうした買い付けができるわけであり、また、まだまだお宝級の旧車が眠っているということでもある。

 だが一方で、情報を得て実際に足を運び車両を見るも、コンディションに納得できなければ何も買わずにそもまま帰国する事もしばしばという。

 BUBU横浜の店内には、そうしたコダワリのビンテージが常に数台展示されているが、どれも「仕入れたまま」というから驚いてしまう。正直、「こんなクルマ(程度が良い)まだ売ってるんだな~」と見ただけで状態が良さそうだと分かるものばかり。

 ちなみに、こうした販売車両は、すべてがナンバーズマッチのフルオリジナル車というわけではない。中には、本国にてオーナー所有時にレストアされていたり、リペイントされていたり、エンジンが換装されていたり…。だが、目利きが日本から現地に飛ぶことで、BCDの自社基準を満たすもののみを買い付けているのである。

ウッドとアルミとプラスチックとが融合された非常に雰囲気のあるインテリア。当時からの状態をそのまま現在まで維持しているということで、使い込まれた感もあるが、すべてが味わいとなってにじみ出ている。

ラジオが縦置きに装備された珍しい造形のイセンターコンソール。この左右対称型コンソールは、その後いろいろなクルマに影響を与え、実際に真似されるほどだった。

各種メーター類の動作確認もおこなったが異常なし。この珍しいボディーカラーに、パワーステアリングかつATを装備をした車両は65年モデルとして、生産台数のわずか10%にも満たない希少な組み合わせだ。

搭載されるエンジンは、327ciのV8で300hpを発生させていた。65年モデルからビッグブロックエンジンが搭載される等ハイパフォーマンス系に目がいきがちだが、旧車となった今現在のコンディションを見れば、この327ciのV8でも十分に面白いだろう。

生産台数の10%にも満たないレアな仕様

 元来負けず嫌いかつ愛国心に富むアメリカ人。アメリカの地で欧州スポーツカーが幅を利かせていることに、ひとりのいや二人の男が立ち上がった。GMのデザイン部門のボス、ハーリー・アールとシボレー部門のボスのエド・コールである。両者の熱意によって生まれたスポーツカーこそがコルベットだった。

 コルベットは、当時のアメリカ車のスタンダードに反し、シンプルかつ流麗なボディを持ち、その素材にはFRPが用いられた。これが現在に至るまで連綿と続くコルベットの伝統となるとは、当時の誰もが想像しなかっただろう。

 そしてデビューから9年後の1962年、1台の試作車がニューヨークショーに展示された。マコシャーク。日系デザイナー、ラリーシノダの手によるアグレッシブなスタイルは、翌1963年にデビューした2代目コルベットへと受け継がれ、あわせてスティングレイのセカンドネームが与えれた。サメからエイへと変わった瞬間である。棘を得たコルベットはさらに強力なエンジンを手に入れ、レース活動を活発化させていく…。そんなコルベット第2世代の1台が今回の取材車となる。

 取材車は1965年型コルベット スティングレイ コンバーチブル。ゴールドウッドイエローのボディカラーにグリーンの内装という、何とも洒落た1台。搭載されたエンジンは当時標準エンジンだった327ciのV8で300hpを発生させる。さらにパワーグライドATとパワステ、そして65年モデルイヤーから標準装備となったパワー4輪ディスクブレーキが装備されており、このボディカラーやATを含めた組み合わせ仕様としては、当時の生産台数の10%にも満たないと言われるほどレアな存在という。

 この車両は、カリフォルニアから仕入れ、当時のオリジナルブラックプレート(ナンバー)がそのまま付けられていた貴重な1台。その他にも新車納車時の書類やオーナーズマニュアルまで残っているという、来歴そのものがズバリ分かるビンテージである。ちなみに、この車両のファーストオーナーはハリウッド俳優であった。

 本国に倣う必要はないが、日本でも価値ある旧車に憧れを抱く方もたくさんいるだろう。「ボロを買って一から手を入れていく」という考え方もあるだろうが、もしそういった修理過程も楽しむ派ではなく、実際に乗りたい派というならば、このコルベットは一考の余地ありである。現状でもパワーウインドーやリトラクタブルヘッドライトは完調だったし、展示状態から見ても微調整にてこのまま走れるに違いない。旧車最高峰のイベント・ミッレミリアの出場車としてエントリーすることだって夢ではないのである。

外装色ゴールドウッドイエローに、グリーンの内装という組み合わせに旧車ならではのセンスを感じさせる。しかも深緑で、ぱっと見ブラックに見えてしまうようなものだから、気がつかない方もいるほど。

非常にコンディションの良いノックオフタイプのアルミホイールに換装されている。ボディ全体との絶妙なマッチング。美しい。

ロゴバッヂやバンパーモール等のメッキパーツの輝きは当時の雰囲気そのもの。見事な状態であり、触るのにも気を使うほど。まさに骨董品レベル。

コルベットの歴史=コンバーチブルの歴史

 初代モデルから62年の歴史を歩んで積み重ねてきたコルベット。その中で1976年から1985年の10年間のみ空白の期間があるが、常にクーペとともに表舞台を歩んできたのがコンバーチブルである。このコンバーチブルの凄さは、持ち前の構造的優位性もあって、常にクーペに近い性能を有していること。フレームボディしかり、FRPボディしかり。だからこそ常に、トップモデルにおいてさえも、コンバーチブルモデルが用意されるのである。

 このC2と並んだコルベット427コンバーチブルは、2013年に迎えた生誕60周年記念モデルかつC6コルベット・ファイナルエディションとして登場したスペシャルな1台。だがそれは、単なるコレクターズアイテムとしてではなく、世界最速のコンバーチブルとして価値ある、超一流のスポーツカーである。「427」というマッスルカー全盛時代に人々が畏敬の念を込めて発音した伝説の数字をネーミングに使用していること自体が、何より自信の現れだろう。

 具体的には、ポルシェ911ターボSコンバー、アウディR8スパイダー、アストンマーチンDBSコンバー、フェラーリカリフォルニアコンバーといった当時のライバルになり得るハイパフォーマンスカーたちよりも、パワーウエイトレシオ(加速力を示す指標)が格段に良い。加えてベースとなるコルベットという、基本設計に正しい資質の上に成り立っているからこその運動性能が味わえる(もっと言えば、その中でも突出したZ06がベースなのだからお墨付きだろう)。すなわち「世界最速の500hp超え2座オープンスポーツカー」である。

 搭載されるエンジンは、今となってはかなり希少な7リッターV8LS7エンジン。505hp、最大トルク470lb-ftを発生させ、0-60mphの加速が3.8秒、1/4マイルの加速タイムが11.8秒、最高速304km/hを実現させる。さらに1522kgという軽量な車重と相まって、世界最速のオープンスポーツカーとして歴史に名を刻んでいるのである。

 時代を感じさせるビンテージコルベット、一方で現役に近い世界最速のオープンスポーツカー。そしてBCDだからこそ実現した両車立会いでの撮影。どちらも甲乙つけがたいほど魅力的だから、できるなら「両方所有したい」というのが本音である。

ボディは、クーペ版のC6Z06をベースにZR1のパーツを各所に散りばめた迫力あるスタイル。すなわちカーボンファイバー製のフード、フェンダーを装着した他、フロントスプリッター、ロッカーパネル、、リアスポイラーを装備することで、魅力的なワイドボディを実現している。だからこそ、単なるロードスターとは異なるスピードスター的デザインが一層魅力的に映る。

コンバーチブルなのに6MTしかないという、超硬派な1台。すなわち、オープン、ハイパワーエンジン、マニュアルミッションといった、スポーツカーの個性として語られる三種の神器を備えた、まさにレジェンドといった存在。

コルベットをフルオープンで走らせる気持ち良さは格別である。しかもただのフルオープンじゃない。最強エンジンを搭載した究極のコンバーチブルである。この7リッターV8が醸し出す金属的な咆哮は、6.2リッターV8では絶対に聞けないレーシーなサウンドであり、しかもMTで操る世界最速のレジェンドである。そいつは特別の、比類ない体験だ。

年齢差48年の2台が並んでいる。できるなら両方所有したい。

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