アライメントとはタイヤの位置関係のこと。簡単にいえば、タイヤがどのような状態でクルマに取り付けられているかということになるのだが、それが各部の劣化やズレにより徐々にだが微妙に狂いはじめる。もしくは、自ら狂わせることもある(社外品パーツを取り付けるとか)。そうすれば、走行中に何らかの症状が出てきたり、タイヤに偏摩耗が起こったりするから、調整しなければならない。
で、そのアライメントには、車両それぞれに、それぞれの指定範囲が定められているからその数値に合わせて調整することになる。
だが、たとえばローダウンしたりリフトアップしたり、大径タイヤ&ホイールといった社外品パーツを装着したりすれば、各パーツには特性があるために車両それぞれの指定範囲は意味のないものになってしまう。
それら指定範囲の数値とはノーマル純正状態での数値だからである(純正状態じゃない状態に純正状態の指定範囲を示したところで何の意味もない)。
アライメントとは、タイヤホイール、サスペンションの状態で調整のセッティングが異なるために、社外品使用の場合は、それぞれの指定範囲に調整するアライメント作業とはまた個別なアライメント調整が別途必要になるのである。
もう一つ。上記のノーマル状態時の指定範囲というのは、あくまでもアメリカの道を走るための正常値。すなわち、アメリカ本国から並行車として輸入されたアメ車の場合、本来アメリカの道(右側通行、右傾きの道路用セッティング)を走るためのアライメントとなっている。右側通行、右傾きの道で真っ直ぐ走らせるには平坦な路面では若干左に流れるセッティングにメーカー出荷時点で調整されているわけである。
もちろん、このアライメント数値はある意味で正しい。そのクルマの正常値であることは間違いない事実である=アメリカの道を走る上では。
だが、そのままの状態で日本の道路を走れば、当たり前だがまっすぐは走らない。ステアリングをまっすぐの状態で保持しても「左、左へ」と流れていくわけだから、常に右にハンドルを切りながら走行しなきゃならいわけである=日本の道路用にセッティングされたアライメントではないということである。
ということで、より深く愛車のアライメントについて考えた場合、日本の道路用にアレンジする必要があるのではないか。すなわち、個別なアライメント調整が必要になるのではないかということである。
とはいえ、もともとアメリカ用にセッティングされたアライメントを日本用にアレンジするには、別次元での調整が必要になる。もちろん、そういった数値や調整範囲なんてどこにも出ていないから、アライメントのジオメトリーを理解した上での精緻な作業が必要になるのは言うまでもない。
そのうえ、元来日本用にセッティングされることを意識していないアメ車だから、調整するにもその調整用の幅(キャパシティ)が少なく、加工が必要になる場合もあるのである=アライメントに関する機材や知識や加工技術、くわえて「アライメントがどうおかしいか」を感じる経験値等がなければ成立しない作業ということである。
たとえばリフトアップされたエコノラインのアライメント調整依頼(左流れが過大のため)。構造上、純正の調整キャパシティでは調整しきれない。すなわち、フロントのI-beamアクスルはナックルのアッパー、ロアーがアームについており、専用のカムを使用しても調整キャパが少ないのである。
だからクワッドでは、 サスペンションアームに偏心カムを加工してインストール。それによってキャンバー&キャスターの調整範囲が広がり、より具体的な質の高いアライメント調整が可能になったのである。
林氏いわく「世に『4輪アライメント』を作業しているショップは沢山あります。しかし、一般的な『4輪アライメント』とは機械的にメーカー基準値に調整するだけの作業がほとんどです。 たしかにメーカー基準値への調整が基本ですが、個体差、クルマの仕様により、調整後でも左右の流れ、ステアリングの重さの違い、安定性に欠けていたりetcと様々な症状が残っている場合があるのです。だからわれわれ は、その車両の個体差や車高、タイヤ等に合わせて個別に調整する必要があるということを唱えているんです」
昨日も今日も、リセッティングされた調整状態の車両が林氏の最終チェックを待っている。修正後にロードテストを行い翌日に再度チェック。
翌日にテストする理由は、自分の体がリセットされた状態で再確認することで前日の感覚の誤差分を修正することが可能であるから。で、また微調整する。そして最後のテストランを行うことで安定したクオリティをもたらすのである。
最新設備を整えているからといって「アライメントがとれる」というのは、だから完全な間違いなのであって、本来のアライメント調整には、テスターに頼った作業ではなく、ジオメトリーを理解し、その車両のサスペンション、タイヤ、車体の個体差まで加味した上でメカニックが体で感じてシミュレーションし、ピンポイントで調整できる『応用力』が必要なのである。
<関連記事>
>> アライメント調整の必要性 vol.1 を見る
>> アライメント調整の必要性 vol.2 を見る
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