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アメ車購入ガイド

正規輸入車 と 並行輸入車 の違いとは?

第2回_一口にアメ車といっても色々ある

通常、クルマの購入ガイドというのは中古車購入を前提に原稿を書きます。
日本人が国産車を買う場合、『新車購入=ディーラーに行って注文する』という意識が定着しているからです。
ところがアメ車(というか正確には輸入車全般)の場合、新車と一口に言っても正規輸入車と並行輸入車が存在するので、国産車とは事情が大きく違ってきます。
ということで、このアメ車購入ガイドでは、新車の話も中古車の話も解説する予定です。
もっとも、新車に関してはそれほど書く事もないので、途中からはほとんどが中古車の話になるとは思いますが(笑)

更新日:2011.05.26

文/田中享 写真/

一口にアメ車といっても選択肢は多い

クルマを買う時にまず最初に考えるのは下記の2点でしょう。
「何のクルマを買うか?」
「予算はいくらか?」
このうち予算の問題についてはまた回を改めてお話するとして、まずは何を買うか?=どんなアメ車が欲しいのか?について、細かく解説したいと思います。
 アメ車を購入する際の選択肢は大きく分ければ下記の6通りです。

A:新車
 (Aー1_正規輸入車)
 (Aー2_並行輸入車)

B:中古車
 (Bー1_正規輸入車の中古車)
 (Bー2_新車並行輸入車の中古車)
 (Bー3_中古並行輸入車)
 (Bー4_中古並行輸入車の中古車)

上記の6種類をひとつずつ解説してみます。
注)厳密に言えば、正規輸入車、並行輸入車というのは俗称であり、法的な根拠はありません。日本に輸入される外車には、道路運送車両法に基づき『型式認定』されたクルマと、型式認定されていないクルマが存在し、前者を正規輸入車、後者を並行輸入車と呼称する場合が多い、というのが正確なところです。ただし、これは実際の購入時にはあまり関係ない話ですので、このアメ車購入ガイドでは一般的な正規輸入車、並行輸入車という観点から解説していきます。



(Aー1_正規輸入車)

 いわゆるディーラー車と呼ばれるクルマです。
 アメリカ本国のGM、フォード、クライスラー(以下ビッグスリー)と直接輸入契約をしたインポーター(輸入元=ビッグスリーの日本法人や大手商社)が日本に輸入し、ディーラーと呼ばれる正規販売店で販売している車両です。
 灯火類やオーバーフェンダー、補助ミラーなど、クルマの各部に対して日本の道路交通法に合わせた改善(仕様変更)が加えられており、車種によっては右ハンドルも設定されています。

 正規販売店で新車を買うことの一番のメリットは安心感です。
 店舗の規模やサポート体制といった様々な審査基準を満たした企業でなれればビッグスリーの正規販売店にはなれません。したがって、販売店の質は基本的に高く、保証などは国産車と同等かそれ以上にしっかりしています。「金額はいくらでもかまわない」というお金持ちや「クルマを買うのに時間や手間を一切かけたくない」といった方であれば、大手ディーラーに行って新車を注文するのが確実です。

 正規販売店で買うことのデメリットというのは、実はそれほどないのですが、人によっては車両本体価格の高さをあげると思います。
 正規輸入車の場合、日本での販売開始時にインポーターが定価を設定しますが、この定価だけ見ると本国での販売価格よりも高く感じることが多いのは事実です
(それでもアメ車の場合は欧州車に比べれば良心的な設定が多い)。
 また基本的に一度設定された定価は、為替レートが変動したからといってすぐに変更されるということはありませんので、場合によっては同一車種の新車並行輸入車と比べると割高に感じることもあります。ただしこれは逆の場合もあり、車種や販売時期によっては並行輸入車よりも正規輸入車の方が安いといった場合もあります。

 また、正規輸入車自体のデメリットとは違うのですが、正規輸入の設定のないアメ車も数多く存在します。正規輸入されていない車種やグレードが欲しい場合は、並行輸入しか選択肢はありません。

 あと、これは全部の車種に当てはまる話ではありませんし、あくまで私の個人的な感想なのですが、日本仕様に変更された部品には美的センスに疑問符がつく場合があります。最近の例で言えば、SUVタイプの車両に装着される補助ミラーなどは「昆虫の触角か?」というくらい不細工だし、古い話としては4thカマロのテールランプやC4コルベットのオーバーフェンダーなど、「なんでこうしちゃうかな?」と思えるような仕様変更も少なくありません。もっともこういったビジュアル面に関しては、人それぞれでセンスが違いますから、世の中にはUS仕様よりも日本仕様の方が格好良いと思われる方も存在するとは思います。

 最後に正規輸入車ならではと言える右ハンドル車についてですが、これに関しても私はどちらかと言えば否定派になります。キャデラックなど一部の車種については、右ハンドル車でも全く違和感なく乗ることができますが、オリジナルの左ハンドル車に比べて、どう考えても完成度の低い右ハンドル車が存在するからです。それは例えばペダルの配置であったり、ハンドルとシートの位置関係であったり、各種スイッチの使い勝手であったり、ごくごく些細なポイントではあるのですが、長距離を走る時にはそういった細かい所の完成度の低さが疲労に繋がることもあります。もっともこの部分についても、「左側通行の日本の道路における右ハンドル車の優位性を考慮すればイーブンでしょう」という意見もあるので、あくまで私個人の見解と考えてください。



(Aー2_並行輸入車)

 並行輸入業者が日本に輸入した車両です。先に解説した正規輸入車以外の輸入車両と考えてもいいでしょう。
 一般的には未走行の新車を並行輸入した場合を新車並行と呼び、現地の中古車を並行輸入した場合を中古並行と読んでいますが、未走行と言っても走行距離が0kmということはまずありませんし、現地のディーラーで一度登録したクルマが多いのも事実です。

 後述する中古車のところでも改めて解説しますが、並行輸入車の場合、それが新車であれ中古車であれ、日本で登録する場合には『新規登録』となり初回車検が適用されます。

 新車並行車を購入する場合、既に日本に輸入されて店頭に並んでいる車両を購入する方法と、注文で取り寄せる方法が存在しますが、いずれにしろ新車並行輸入車を買う最大のメリットは価格でしょう。何時でもどんな車種でもというわけではありませんが、同一モデルの同一グレードで比較した場合、正規輸入車よりも購入時の総支払額が安く済むのが普通です。また、基本的には『時価』なので、円高の時を狙って注文すればさらに安く購入することも可能です。

 一例を上げると、例えばアメリカのディーラーで3万ドルで販売している車両を新車並行輸入して購入するとします。現在(2011年5月25日時点)の為替レードはだいたい1ドル82円前後ですから、単純にこれを日本円に換算すると82×30000=246万円となります。
 もちろんアメリカで買った車両を日本に輸入して個人名義に登録するまでには様々な費用がかかります。
 細かい部分は省略して、大雑把に費用の内訳を説明すると、アメリカでの買付けや書類作成といった輸出諸費用が10万円から30万円。船賃がやはり10万円から30万円。日本に船が到着してからの通関などの諸費用が10万円前後。予備検査などにかかる費用が20万円から30万円。輸入消費税(5%)や通関印紙代などの税金が15万円から20万円。業者の代行手数料が30万円から40万円くらいになります。つまり車両本体価格以外にかかる諸費用は、最低でも95万円前後、最高では160万円前後。これに先の車両本体価格を足したものが総支払い額となりますので、総支払額はだいたい341万円から406万円くらいという計算になります。

 ただし、上記の金額はあくまでもひとつの目安であり、諸費用はアメ車ショップや輸入代行業者によって大きく違ってきます。また、輸入消費税は車両本体価格+日本に到着するまでにかかった全ての費用に対してかかりますから、仮に1000万円クラスの車両を購入した場合、税金だけでも軽く50万円オーバーになったりもします。逆に古いクルマの場合には、排ガスや制動距離の検査が必要なかったりしますので、諸費用のトータルは先の例よりもかなり安くなる場合もあります。さらに言えば、車種によっては改善(日本の法規に則った仕様変更)に手間やコストがかかる車両も存在するので、検査関連の諸費用や業者の手数料がもっとプラスされる場合もあります。
 正規輸入車と並行輸入車でどれくらいの価格差になるのかは、上記の例を参考に各自で計算してみてください。

※追記_2011,6,9
 この記事を読んだショップさんから「並行輸入時の諸経費は店やクルマによって違うのは確かだが、金額が違うように見えても、実際は見積書や明細の書き方が違うだけという場合もあるので、もう少し詳しく解説した方がいいと思う」というご指摘があったので、追記させていただきます。
 上の記事では並行輸入にかかる諸費用は95万円〜160万円くらいと書いてありますが、これは現地での車両本体価格以外を全て諸経費として考えた場合の金額です。しかし、世の中には輸入時にかかる様々な諸経費の一部を車両本体価格に含めて表記しているお店もあります。そういうお店の場合、当然ながら見積書や明細書上の諸経費はもっと安くなります。
 並行輸入を検討する場合、大抵の人は複数のお店で見積りを出してもらうと思いますが、金額に関しては最終的な総支払い額で比較することをオススメします。


 ちなみに、新車並行と一口に言っても、店舗型の並行輸入車販売店(要するに普通のアメ車ショップ)と輸入代行のみを業務にしているブローカーのような業者では、費用も違えば購入後のアフターサービス体制も全く違います。多少割高な価格設定ながら、正規輸入車と同等以上のアフターサービスを保証している大手販売店もあれば、単純に輸入代行のみを請け負う個人業者もあり、同じ並行輸入でもその内容は千差万別です。この辺は、どこのディーラーでも大差ない価格で購入でき、同様のサービスが受けられる正規輸入車とは大きく違うポイントです。

 新車並行車の購入を検討する方は、価格だけでなく、保証やメンテナンスなどのアフターサービスなども含めた内容を確認し、業者を決めることをオススメします。



【新車のまとめ】

 一般的には高くても安心して購入できるのが正規輸入車、多少のリスクは負うけど安く購入できるのが並行輸入車、といった見方をされることが多いようです。確かにそれは大筋では間違いありません。しかし、在庫処分時期に入った正規輸入車が並行輸入車よりも安く販売されることもあります。また逆に、正規輸入車と大差ない価格で、正規販売店以上の保証やサービス内容を付けて販売を行っている並行輸入車販売店も存在します。

 日本仕様への改善ポイントなど、部分的な違いはありますが、新車の場合には車両のクオリティ自体は正規輸入車も並行輸入車も同じなので、新車の購入を検討している方は、まずは様々な形態、規模の販売店を回って色々と話を聞いてみることをオススメします。

 また、販売店を選ぶ場合に、ひとつだけ注意してもらいたいのは、もしもの時の確認です。現代のクルマはコンピューターによる車両の制御システムが高度に進化しているため、専用のテスターを完備しているショップでなければ、イザという時に診断も修理も出来ません。もちろん最近のアメ車は簡単に壊れたりはしません。しかし、もし運悪くトラブルが起きた場合、一昔前の中古車以上に診断や修理は大変になっていますので、保証内容の確認と、自社ファクトリーや提携修理工場の確認だけは確実に行うようにしてください。これは正規販売店でも並行輸入車販売店でも同様です。


※思いのほか文章量が増えてしまったので、B−1からB−4についてはページを変えて解説します。

>>アメ車 中古車購入ガイド 記事一覧はこちらから

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