あいからわずの盛況ぶりである。いや、盛況とは車に失礼な話かもしれないが、でもそれだけ工場内がアメ車で埋まっているということだ。
もちろん、そこにある車両の全てが重整備というわけではなく、車検整備や定期点検、さらにはオプション装備の追加装着といった車両もあるから「アメ車=壊れやすい」ということが言いたいわけではないから誤解のないように。ようはクワッドドライブに車両が集まっているということが言いたいだけ。
ちなみに、最近のアメ車に関しては、オプションの追加装備ひとつを取り付けするにも、特に電装系関連のパーツを装着する場合には、装着に関する緻密な作業が求められるだけでなく、装着後にクルマ側に電子デバイスを使用し装着したことを伝えなくてはならないなんてこともあるから、やはりそうした作業に長けているクワッドドライブにて作業を任せる業者が増えている。
で、当然それ以外の故障診断は以前にも増して依頼が増えているから、常に一定以上の車両が持ち込まれることになる。
そんな中聞けば「距離を走った車両の故障修理が増えている」という。特にチャレンジャー系、エスカレードにおいて。くわえて「状態の酷いものが以前よりも確実に多くなっています」ということだ。
これらに関して言えば、チャレンジャーのMDS、エスカレードのAFMといった気筒休止システムの故障とか、それにまつわるエンジントラブルだとか、もしくはミッショントラブル、またはシステムエラーといった様々な要因が考えられる。
が、クワッドドライブに関してはこうしたトラブル事例に対するノウハウがあり、また各種電子デバイスを使用した故障診断にて100%に限りなく近い原因究明が可能であるために多くの車両が集まっている=修理の数が増え扱う事例が増える=ノウハウとなることで、より一段と完璧に近い原因究明と修理が可能になっている。
また、最近の事例では「CAN FD」を使用した年式の新しい車両の故障診断が増えているという。
CAN FDとは、CANのプロトコルを拡張してより多くのデータを高速に転送できる通信プロトコルを意味し、要するに最新車両に搭載されている通信システムのことである。
最新車両には、安全性や快適性、コネクティビティの強化、電動化、自動運転機能、サイバーセキュリティ対策などを実現するために、以前まで使用されていたCANでは不十分になっており、より高速でより多くのデータを送れる車載ネットワークが必要になっている。
それがCAN FDであり、アメ車の最新車両にも当然搭載されているが、そうした車両のシステムにエラーや故障が起こると、その診断はこれまで以上に複雑で高度な理解力が必要になる。
で、そうした車両の診断数も圧倒的に増えているという。例えば2021年以降のC8コルベットやエスカレード、2022年以降のヘルキャットレッドアイやデュランゴSRTといった車両である。これらに関しては、業者からの依頼が多いという。
またもう一つ。最近のクルマの多くは、OTAを利用してシステムのバージョンアップを行う車両が多くなっているという。が、アメリカ車については、日本でそのOTAに対応することができず困っている車両があるという情報を教えてくれた。
もう少し説明すると、近年のGM、フォード、クライスラー車にはOTA(Over-The-Air)機能が搭載されているという。OTAとはインターネットを介して車両に搭載されたソフトウェアをアップデートする技術。直近で言えばテスラ車が使用していることで有名。
すでに一部の車種にOTA機能が搭載されており、車両のソフトウェアを自動的に更新することが可能となっている。そしてそれにより車両のシステムや機能を常に最新の状態に保つことができる。
具体的には、車両の機関系、ナビゲーションシステム、エンターテイメントシステム、安全装置、運転支援システムなど、多くのシステムに適用され、地図データの更新や新しい機能の追加、またシステムのバグ修正などが自動的に行われる。
で、アメリカ本国では特定の携帯会社と契約して自動更新が行なわれているというが、そんな対応年式の車両が並行輸入にて日本に来た場合、同様の自動更新が当然行われないから、システム上に不具合があった場合、今のところ日本では対応が不可能となる、ということだ。
すなわち、上記のCAN FDを含めOTAもそうだが、自分の乗っている車両にどんな装備や車載ネットワークが搭載しているかをまずは知っておくのが得策だろう。
クワッドドライブは、すでに上記の事例についても把握していたというから流石である。
そんなクワッドドライブに関する朗報である。クワッドドライブが車両持ち込みが困難な地方業者向けにオンライン診断や情報提供、修理相談窓口を開設する予定という。
症状の問診やテスターの数値を確認しながら的確なアドバイスを行い、軽度な不具合はオンラインで完結できるようにし、重度の不具合車両に関しては受け入れを行うという。
また電子制御以外にもエアコン、サスペンション、メカニカル部分の不具合相談も可能というから心強い。なお、具体的な内容はサービスが開始される時に再度案内がなされるということだ。
余談だが、取材最中に見つけた見慣れない珍しいクルマが一台あった。シボレーボルトである。ボルトと言っても現在のEVのボルトではなく、2010年くらいに日本で一時的に紹介されたハイブリット時代のボルト。
そんなハイブリットのボルトを並行で輸入して乗っていた業者さんからの修理依頼という。
今現在は法規制によって海外からハイブリットやEVを並行で輸入することはできないが、かつてはそんな規制すらなかったわけで。このボルトもそんな時代に日本に持ち込まれた模様。
で、当然ながら何か起こった場合に直せる業者がいない。
だが、林氏は以前からエスカレードのハイブリッドを自分で輸入し乗っていたり、これまた数年前からEV関連の研究を始めていたという経緯もあり、また直近では低電圧講習を受ける等、電気やモーターに関する造詣を深めていたことから、クワッドドライブにて故障診断&修理。
林氏はすでに原因究明を終えておりパーツの発注を終え、到着を待つばかり。「メカニカル的な整備なら誰でもできますが、今回はシステムに関しての部分ですから対応できる方は限られます」
そりゃそうだろう。アメ車に詳しく、故障診断にも長け、そしてEVやモーターに関する知識を持っている業界メカニックは林氏をおいて他にいないのだから。
筆者も数年前からずっと取材していて、「ほんのわずかなことかもしれないが、数年前から時代の流れを見つつEVの研究を始めていた苦労が報われたのかも」とちょっと嬉しくなったのである。
上記のような複雑化した最新アメ車の修理のほか、日頃研究しているEVに関しても話を聞いた。林氏はすでに複数台のテスラ車を導入し研究を続ける一方で、充電に関するデータ収集を行っているという。
例えば、バッテリーの消耗とか充電の長さとか、その他様々な事例について。恐らく、他者のデータを参考にするというよりは、自分で試して納得して理解する、を繰り返すことで、自分の知識としているのだろう。
そんなバッテリー関連の話で言えば、最近テスラ車にはLFPバッテリーを搭載したモデルYが登場している。
バッテリーの正極材として従来の三元系正極材(NMC、ニッケル、マンガン、コバルトが主成分)と、リン酸鉄リチウム(LFP)のいずれかが使用されているが、一般的な見解としては、NMCバッテリーの方が高価になるが、LFPよりもエネルギー密度が高いとされている。
一方、従来の三元系リチウムイオンバッテリーでは20-80%程度を目安に充電していたが(設定可能だから自分で調整する必要はない)、LFPなら安価だし100%の充電を繰り返してもバッテリーへのダメージを気にすることなく使用できるから、よりスマートなテスラライフが楽しめるかもしれない。
航続距離が重要視されているEVには、いまだ三元系が主として使われているが、LFPの進化も日進月歩だから今後どのようにアップデートされるか楽しみである。
筆者も以前よりはEV車に関する知識や興味が圧倒的に増えており、テスラ以外のEVにも興味を抱く日々が続いている。で、直近ではBYDに関する話をよく聞き、また情報として見る。
知人に「BYDに乗ってすごく良かった」という方がすでに複数人いるが、個人的にはどうだろう? と、まだまだ懐疑的な見方である。
間違いなく便利なEVに違いないし、価格的にも勝機があると思う。「安くてよく走れば十分」という実用EVとして圧倒的に受け入れられるだろう。
が、あくまで個人的な判断だが、EVにも楽しさの序列みたいないものがあると思っていて、テスラはまだまだその上位に位置すると考える。
ブランド的な価値もあるだろうし、特に先進性や自動運転術や充電インフラの整備や加速力の凄さやコーナリングの楽しさ、そしてOTAやスマホを使ったギミック的なところも好きだし。
余談だが、最近発表されたレクサスRZにめちゃめちゃ興味があるので、近いうちにいろいろ比較してみたいと思っている(あくまで個人的に)。
ということで、クワッドドライブの直近の故障依頼においては従来の診断以外に、より複雑化した最新車両のシステムを扱うことが多くなり、その一方で日々のEV研究が続いているということである。続く
0.1428万円
年式:2023年
走行距離:7,000km
クラフトスクエア
183,250円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
272,800円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
3,553円
MAINTENANCE
6DEGREES
1,881円
MAINTENANCE
6DEGREES