今月は、これまで装着したパーツのテスト期間中ということで、またスーパーチャージャー周りのパーツ待ちということで、番外編として同社が仕上げた現代版マッスルに試乗をさせてもらった。
このCTS−Vプロジェクトの根幹には、現代版マッスルカー、たとえば300Cやチャージャー、チャレンジャー…、そういったクルマたちをベースに「走り」を楽しんでいるオーナー達が次に狙うべき(乗るべき)クルマが見当たらないという現実があり、そういったオーナーさん達に新たなるベース車の提案を行いたいという発想がある。ということで、ダッジチャレンジャー改に試乗させてもらい、「どんなもんやろ?」と、CTS−Vの仕上がりを今後レポートしていく上でも体感してみたいと思った次第である。
試乗車は2010年型のダッジチャレンジャーSRT8。約6000キロ走行車。カスタムポイントを挙げるとキリがないが、まずはエンジン&吸排気系から。スロットルボディ、プーリー、ビッグスロットル、コンピューター、エアクリーナー、ヘダース、マフラーに手が加えられ、足回りは、強化スプリングにスタビライザー、それにHREの20インチオーダーホイールがセレクトされている。またブレーキにはストップテックの大口径が装着されているという。
エクステリアは、主にオーナーさんの意向ということで随所にカーボンパーツが使用され、スポーティな雰囲気を全面的に押し出した仕様となる。
間近でいろいろ見ると、かなりヘビーな雰囲気を醸し出し、近づきがたいオーラみたいなものを感じるが、ビビらず試乗へ。このチャレンジャーにも、CTS−V同様コルサパフォーマンスのマフラーが装着されているが、相変わらずエンジン始動時のサウンドが軽快! 「アメリカンV8=ドロドロ音」という期待をしていると呆気にとられるほど甲高い。だが、この感触がスーパーカーのエンジン始動時と似ており、個人的には好感。乗って走るといわゆるドロドロ音を発するのだが、この仕掛けというか個性というかが、最近のアメ車パーツの中ではダントツで高いと思う(もしかしたらマフラーだけの個性じゃなく、へダースとかとの絡みとかもあるのかもしれないが…)。
過去に何度か 6.1リッターV8搭載のチャレンジャーSRT8には乗ったことがあるが、そのどれと比較しても「軽快さ」で勝ったチャレンジャーだった。エンジンの吹け上がりもかなり俊敏であり、ステアリングの反応やブレーキのタッチも確実。若干重さを感じる「ノーマル」とは、まったくの別物感を味合わせてくれるのだ。聞けば、上記の仕様で80ps程度のパワーアップが見込まれているという。アップの度合いが曖昧なのは、正確な数値を測定していないから控えめに答えているとのことであり、実際に測定すればこれ以上のパワー数値を出す可能性が高いとも(ノーマルSRT8は425psだから500ps以上には進化している)。
音や動きから感じるこのチャレンジャーの楽しさはハンパではないし、重量級のアメ車がここまで軽快に走るようになったことだけでも、個人的には十分だと思うが、こういったアメリカンマッスルにいじる楽しみを見出した人々にとっては、まだまだ興味は尽きないようで…。ちなみにこれでも最高速は300キロ近くまで出るし、めちゃくちゃ速いのだが…。
試乗を終え、その辺を林氏に聞いてみた。ノーマルのチャレンジャーとキャデラックCTS−Vを比較すると、どんな違いがあるのでしょうか?
「たとえばエンジンで言うと、NAとブロアの違いがありますし、足回りはビルシュタインとマグネティックライド、またステアリング機構にも違いがありますね。あと車重は、チャレンジャーの方が若干軽いですかね」
CTS−Vはノーマルで乗ってもビックリするほど速かったという経験があるのですが、今日乗せていただいたチューニングマシンも、格別でした。気持ち良さがハンパじゃない。エンジンのレスポンスや暴力的な加速はやっぱりNAエンジンだなって、ホントに感心しました。
「メカニカルな点で言えば、CTS-Vは、ある程度ノーマル状態でも煮詰まっている感じですね。一方でチャレンジャーは、煮詰めるために手を入れる余地がある。これが、この二車の大きな違いでしょうか。ただし、前者の場合はセッティングを誤るとかなりの確立でバランスが崩れディチューンに繋がる、とてもセンシティブなクルマなんです。対して後者は、パーツの選別さえ間違えなければ、チューニングが体感に直結します。つまりいろいろなオーナーが楽しむことのできる、守備範囲の広いクルマなんですね。ちなみに、チャレンジャーに元々搭載されているエンジンやミッションは凄く良い物を使っています。ATなんかは、AMGのベンツに搭載されていものと同じ。つまり、500ps前後まで普通に耐えうる力を持っているんです」
今回乗せていただいたチャレンジャーには、ある種の凄みというか、『別物感』のオーラみたいなものが漂っていました。やはりここまでやった方がいいのでしょうか?
「まず、エンジン内部にまで手を入れずに車両のポテンシャルを最大限に発揮するには、このくらいがベストなのかもしれません。ただ、まだまだやれることは十分にあるのですが、これ以上はコストパフォーマンスとの勝負になります。チャレンジャーのアフターパーツは非常に豊富ですので、一気に仕上げることも可能ですし、自分なりのペースで、自分が求めるレベルで楽しむことも可能です。それぞれのレベルで効果が的確に体感できるので、車両の変化を段階的に楽しんでいくのも良いと思います」
現在、本国でもかなりのパーツが出ているというが、そういったものの中から厳選したパーツを使い、クワッドなりに組み合わせて調律していった結果なのだろう、クワッドにはここ一ヶ月程度の間で10台以上のチャレンジャーが整備やカスタムで入庫している。氏の言葉には、そういった状況の中で得た確実な裏付けが存在しているのである。
余談だが、すでに登場している6.4リッターモデル(SRT-8 392)は470psを発生させ、6.1リッターベースでチューニングをして稼いだ馬力近くを、ノーマル状態で発するという。6.4ベースのカスタムパーツは、まだ数が出ていないというが、来年以降熟成されれば、これまた凄いチューニングマシンが続出するだろう!
この段階に達したチャレンジャーの試乗は非常に楽しかった。これだけを評価すれば、もの凄く速い、非常に楽しいチューニングマシンとなるだろう。それにあのエンジンの気持ち良さは、大排気量NAエンジンにコダワリを見せるクライスラー車ならではだ。
CTS-Vのカスタムプロジェクトは、まだ始まったばかりだが、完成したあかつきには、これら現代版マッスル以上の「速さ」や「快適さ」や「楽しさ」を備えていなければならないというハードルが確実に存在する。今回は、そのハードルの高さを身を持って体験した試乗であった。
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.1 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.2 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.3 を見る
>> キャデラックCTS-V カスタム プロジェクト VOL.4 を見る
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