2022年3月に最初のモデルXがクワッドドライブに入庫した。それは来るEV時代に向けての研究材料=メカニックとして次世代技術の習得に向けての第一歩であった。
だが、技術的興味を満たしつつも、一人の自動車好きとして、既存のクルマとは考え方がまるで違うテスラに刺激された部分がかなりあったという。
それが証拠に、これまで入手したテスラ車は合計6台にも昇る(モデルXが5台、モデル3が1台)
ちなみに、取材した2024年1月12日現在、残っているのはモデルX2台のみ。それ以外は全てクワッドドライブを通じて日本全国の一般ユーザーに販売されたという。
それにしてもテスラの『何』が刺激したのだろう? くわえて例えば今現在中国のBYDが知名度を上げているが、その辺への興味は湧かないのだろうか?
「テスラですが、実際に乗って面白いというのが最大の特徴です。例えばオートパイロットやスマホアプリでのコントーロール。今までテスラのオートパイロットのように自律走行に近い精度で走行できる車両はありませんでした(システム上ハンズオフはできませんが)
日本では完全自動運転は認可されていませんが、カメラからの画像処理で、信号機、制限速度認識(標識認識)、右左折レーン(車線)、パイロン、人、などの前方の物体を認識できていますし、オートレーンチェンジ(自動車線変更)も安定しています。海外では無人タクシーが活躍している時代です。
よく自動運転のネガティブなニュースやネット上の投稿を目にしますが、未だどのメーカーもそこまで完璧なシステムを構築できていないので完全を求める方が無理だと思います。
人間が運転していればヒューマンエラーも希に有り、オートパイロットの方が安全なシチュエーションもあります。その件の議論については難しいですが、次世代のクルマや技術を楽しみながら実体験していますし、多くの方に味わってほしいと思っています。
また充電における優位性は、現在でもテスラが圧倒的に有利です。こうした機能部分や充電設備を鑑みれば、他のEVメーカーもコストパフォーマンスでテスラに全く敵いません。
少し余談ですが、世の中のEV車の評価はクルマとしての走行部分や快適性等にとどまっています。ですが、EV車である以上、充電は切っても切り離せない要素です。そこに触れている方が非常に少ないですし、触れたとすれば、今現在、テスラ以上のものはないと断言できます。仮に相手がベンツであっても、です」
今現在林氏が所有するモデルXは、2021年型であり走行5000キロ程度の中古車を昨年入手している。で、それを約1年で5000キロ程度走行しており、直近では雪降る那須高原に向かったというが、そうした路面変化、氷点下での使用がバッテリーに与える影響(充電性能)、暖房と電費効率の関係についても実体験として調査しているという。
ちなみに充電に関してだが、ざっくり説明すると、テスラ独自のスーパーチャージャー(NACS)、そして日本で普及しているCHAdeMO(チャデモ)があり(自宅充電等はここでは触れず)、テスラはスーパーチャージャー&CHAdeMO(チャデモ)で充電可能だが、国内EV車や欧州EV車は、主にCHAdeMO(チャデモ)で対応しているのが現状である(ポルシェは独自に作り始めているが数が少ない)。
で、テスラのスーパーチャージャーは、150kWから最新では250kwという高出力なスーパーチャージャーが整備されており、圧倒的速さの充電を実現している。
対してCHAdeMO(チャデモ)は、50kwから90kwが一般的で、最近では120kwが高速道路のサービスエリアに設置されていたり150kwが一部で設置(浜松SAにて確認)されたりしているというが、それでも数がまだまだ足りない。例えば某SAにはの90kwの充電器が全6基あるが、それら6基で合計200kwをシェアするので、最小20kw~最大90kwで変動するシステムだったりする。
よって充電時間も当然かかるから、EV=充電時間も重要な要素と考えれば、林氏が言う「他のEVメーカーに対するテスラのコストパフォーマンスの高さ」が理解できるのである。
「北米では、フォード、GM、トヨタでさえNACS(テスラの充電規格)を採用するわけですから、テスラの充電機能の利便性の高さが理解してもらえるはずです」
テスラが凄いのは、車両の開発のみならず、それに伴う充電の利便性を最初から考えていたことである。
だからこそ独自でスーパーチャージャーを設置し、それによりガソリン車にさほど劣らない充電の利便性を実現したのである。そしてテスラユーザーになることで、その差を体感し、だんだんとハマっていくのだろう。
これまた余談であるが、上記北米での充電に関して各メーカーがこぞってテスラのスーパーチャージャーを利用し始めているが、それは非常に良いことだと思っている。というのも、今後そうしたメーカーのEVが仮に日本に上陸した場合、日本国内のスーパーチャージャーで充電可能になるかもしれないからである。
今現在、北米メーカーのEVを日本に並行輸入することは不可能だが、くわえてアメリカ(&欧州)にはこれまた別の充電規格CCS(現在CCS2)が存在するから、輸入できたとしても充電ポートの変換やソフトウェア上の問題があった。が、テスラのスーパーチャージャーの利用が可能になれば規格の心配が今後なくなるはず!
すなわち、EV業界においてはテスラの存在こそ非常に重要であり、本気でEV生活を始めようと色々知れば知るほどテスラの凄さ(素晴らしさ)がわかるのである。
林氏が今現在所有しているモデルXは2021年型であり、つい最近2023年型のモデルXディーラー車の国内納車が始まっていたが、新型車は気にならないのだろうか?
「確かに最新モデルXにはHW4(テスラの新型ハードウエア4)が搭載されておりますし、充電に関しては最大250kw対応(現時点ではチャデモ非対応)、シフトレバー、ウィンカーレバーはデリート、モーターはPLAIDだと3モーター、その他各部がアップデートされていますが、今後発表になるモデル3 PLAID 、モデルY、サイバートラックにも続々と最新技術が投入されていきますので、各EV車の動向を見ながら検討していきたいと思っています』
ただ、街中移動を考えてもう一度モデル3の中古車を購入しようと思っています(笑)。今、モデル3の中古車は結構買いやすい状態だと思いますよ」
当初は研究材料として入手したテスラ車両。実際、ソフトウエア、メカニカル部分、バッテリー&モーター等のパワートレインと分類し、十分な考察のもと理解を深めている。その中でソフトウエアに関しては触れることはできないが、メカニカル部分に関しては一般的なメカニック能力で対応可能と判断している。
一方、パワートレイン系に関しても当然触れることはできないが、ただ、メーカー保証が比較的長いからさほど古い年式のモデルでなければ心配する必要はないというのが経験的な知見という。
すなわち、メカニックとして得られる新しい技術的要素こそさほどないが、一人のクルマ好きとして刺激される部分は豊富にあったということで、林氏とテスラ車との生活はまだまだ続くのである。
「世の流れ的にこの先一直線にEV時代へ向かうとは思えませんし、実際、若干後退することもあるでしょう。でも、そうやって進みながら右往左往しならがらも、EV時代へ向かうことは間違いないと思っています」
確かにアメリカでの販売車両がEV車で埋まっていくのが2025年から、日本でのEV車の発売が充実してくるのが2030年あたりからと考えれば、EV全盛と呼ばれる時代がやってくるとすれば2035年あたりだろうか・・・、あくまで予想だがまだ10年以上先の話である。
だが、その時のテスラが充電設備を含めどんなレベルのクルマに進化しているのか、個人的にも非常に興味深いのである。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES