前年比105.6%増にもかかわらず撤退とは…。

フォード撤退の余波は? 【コラム】 vol.1

それじゃ日本の道路はドイツ車とボルボのみ?

フォードジャパン撤退報道から2週間。まだこの先の状況がまったく読めないなか、撤退報道にからむ5000台という数字に着目してみた。

日本市場にこの先の見込みなし

　1月26日に「フォードジャパンの日本市場撤退」が正式にアナウンスされた。それから約2週間。「フォードショック、いまだ覚めやらぬ」といったところだが、変わらない事実も確実にあった。

　やっぱり近年のフォード車はいい、ということである。

　たしかにジャパンはなくなるが、だからといってクルマ自体が急に悪くなるわけでもなく、撤退を決めたからといってハンドリングやサスペンションまでもがふにゃふにゃになるわけではない。先日、某ショップで取材した2013年型のエクスプローラーは、やっぱり面白いクルマだったし。

　それにここ数年、ディーラーの認定中古車を毎月のように取材させてもらっていたが、実際に売っているクルマ、そしてそれを売っている方、診ている方々に直に触れお話をさせてもらっていただけに、クルマやディーラーの方々への愛着も含めて、じつにもったいないという思いでいっぱいである。

　おそらくだが、撤退ということでもこれまで売ったフォード車たちに対するアフターフォローの観点からすれば、あと数年は何かしらの配慮があるだろうし（何ならディーラーレベルでフォード車が確実に診られるアメ車ショップを筆者は数件知っているが）、急なフォード車離れだけは避けていただきたい、というのが誰から指示されたわけでもない筆者の本音である。

　それにしても、いきなりの撤退に驚きつつも、本国首脳陣のそのコメントにも驚かされた。「日本市場にこの先の見込みなし」というような話である。昨年のフォードの販売台数は4856台。1996年時には一時2万5000台前後を記録していたというから、ざっと1/5に減少ということだ（余談だが、自動車評論家と呼ばれる方々の手のひら返しにも驚きました）。

　だがその一方で、メルセデスベンツやBMWなど欧州車の販売は順調に推移しており、現状、フォードの輸入車市場全体に占めるシェアが1.5％でしかないということ、しかも閉鎖的な日本人のクルマ選びが今後も続くと予測するならば…ということで、上記のコメントと相成ったわけである。

　で、2015年の輸入車系の販売台数を見てみた（JAIA日本自動車輸入組合発表の2015年輸入車新車登録台数抜粋）。

1・メルセデスベンツ：65159台
2・フォルクスワーゲン：54765台
3・BMW：46229台
4・アウディ：29414台
5・BMWミニ：21083台
6・ボルボ：13510台
7・ジープ：7129台
8・ポルシェ：6690台
9・フィアット：6032台
10・プジョー：5906台
11・ルノー：5082台
12・フォード：4856台
13・ランドローバー：2979台
14・アルファロメオ：2321台
15・シトロエン：1978台
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21・フェラーリ：720台
22・キャデラック：710台
23・シボレー：653台
24・クライスラー：464台
25・ベントレー：370台
26・ランボルギーニ：349台
etc

　上記が昨年の販売登録台数である。フォード車は12位となる4856台。トップのメルセデスの65159台を見れば、確かに悲観したくなる数字だろう。だが、6位のボルボ以下の数字をみれば、意外に頑張ってる数字じゃないか？　と思うのは筆者だけだろうか（あくまで素人的発想だが）。

　この数字で商売が成り立っていなかったのだろうか。しかし、前年比105.6％だったということだから、販売増は明確だった。「目の前の数字だけじゃない」というのが本音だろうが、それでも撤退なら致し方なしなのだろう。

　だが、その数字でフォードが撤退なら、それ以下のメーカーはどうなるのか？　順次撤退と考えてもおかしくはないのではないか。

　そのうち、日本の道路はベンツにBMW（ミニ含む）にフォルクスワーゲン、アウディ、ボルボの新車以外は走ってないのかもしれない…なんて皮肉も言いたくなるし。

　まあ、実際のところは分からないが、「5000台で撤退」という報道が多くを占めたためにその他の数字も見てみたくなり、結果「フォード以下は全部日本撤退だな」とひとりごちてはみたものの、数年後にはホントにそうなっていそうで怖い（笑）。

　今やコルベットはフェラーリ以上にレアな存在なんだなぁ～（しみじみ）。嬉しいやら悲しいやら。

　ということで、なんのオチもないのだが、とにかくフォード車オーナーの方々には「くれぐれも落ち着いた行動を」とお願い申し上げます。また、この先のことを考えれば、アメ車全般のオーナーさんにも「とにかく今お乗りの愛車を大切にして欲しい」と言いたい。

　いつの日か日本の公道がドイツ車＆ボルボで埋まる日が来るかもしれないが、その時でも輝かしいアメ車オーナーとして胸が張れますように！