2006年モデルとして現代に復活したダッジチャージャーは、往年の2ドアマッスルクーペのイメージを覆し、4ドアセダンとして世に放たれた。
当時のクライスラーはダイムラー傘下にあり、コストカットとヒット作の創出が至上命題。メルセデスベンツ(Eクラス等)のコンポーネントを流用した大型FRプラットフォーム(LXプラットフォーム)を活用し、話題性とファミリー層の需要を同時に掴むために選ばれたのが、4ドアという現実路線だった。
社内上層部やマッスルカーファンから「歴史への冒涜だ」という猛烈な反発が懸念されたが、会社の生き残りをかけた背水の陣でもあった。だがこの選択が、思わぬ転機を生む。
圧倒的な走行性能と頑丈なボディが全米の警察署の目に留まり、「ポリスインターセプター(パトカー)」として大量採用されたのだ。街にあふれた白黒のパトカー仕様が信頼性と圧倒的な存在感をアピールしたことで、一般層にも「速くてカッコいいセダン」としての地位が定着。モンスターモデルを生み出すための土台が、この泥臭い第一歩によって築かれたのだ。

▲2018年型チャージャーSRTヘルキャット。走行3.9万キロの中古車。

▲コークボトルラインのデザイン、レーン・オブ・ファイアと呼ばれるリアテール。高性能車のオーラ全開。
そんなチャージャーのデザインは、復活から2023年(第2世代終了まで)にかけて、二度の進化を遂げる。
分厚いボディと往年を意識したCピラーやサイドラインを持つ第1世代(2006年~2010年)。NASCARでの空力要件やベンツのプラットフォームの制約もあり、デザインは困難を極めたが、Cピラーの太いファストバック風ラインや彫りの深いプレスラインを盛り込むことで、4ドアでありながら野性味のある押し出し感を表現。「悪童感」の種がまかれた初期モデルであった。
そして2011年に第2世代(2011年~2023年)へ進化。1968年型をオマージュしたデザインは一気に洗練と迫力を増す。サイドには往年の名車を想起させるグラマラスなコークボトルラインが与えられ、リアには夜間に鮮烈な存在感を放つ「レーン・オブ・ファイア」テールライトが採用される。
そして訪れた、2015年の「ヘルキャット」登場の圧倒的衝撃。セダンとして洗練されてきたチャージャーに、すべてをひっくり返す狂気のモンスター「チャージャーSRTヘルキャット」が降臨する。
当時の自動車業界に激震が走ったのは、スーパーカー顔負けの707馬力という途方もないスペックを、あろうことか5人乗りの実用的な4ドアセダンにぶち込んだ、そのコンセプトそのものである。

▲搭載されるエンジンは6.2リッターV8スーパーチャージャー。707hpを発生させる。

▲ブラックホイールに大径ブレンボブレーキが鎮座する。

▲ヘルキャットには随所にレッドカラーが散りばめられる。
見た目もその暴力的な中身を隠すことはせず、巨大なV8スーパーチャージャーの熱を逃がすためのエアスクープ付きボンネット、冷却効率を極限まで高めた専用フロントバンパー、そしてフェンダーに誇らしげに鎮座するヘルキャットのエンブレムなど、見る者を威圧する専用の戦闘服へと変貌を遂げる。
「家族を乗せて普通に買い物に行けるセダンでありながら、アクセルを踏み込めば世界中の大半のスポーツカーを置き去りにする」――。
この2015年のヘルキャットの衝撃は、かつて「4ドア化は歴史への冒涜だ」と嘆いていたマニアたちをも黙らせ、チャージャーを単なる実用車から史上最強のマッスルセダンへと昇華させた歴史的転換点となった。
ちなみに、同じく707馬力を発生させるチャレンジャーヘルキャットは、一目見た瞬間から攻撃的かつ王道なマッスルカールックスを備え、凄みが一瞬で伝わる。一方のチャージャーは、4ドアセダンという実用的なスーツを着込んでいるため、チャレンジャーのような「凄み」が瞬時には伝わらない。
だが、そのスーツの中には「世界最高峰の707馬力の怪物が隠されている」というギャップこそが最大の魅力となる。普段は家族を乗せて静かに走りながら、いざという時に牙を剥く――その「知る人ぞ知る秘めたる迫力」に心惹かれる方には最高の一台と言える。

▲造詣自体は他モデルと同様だが、上級モデルとして使用されているマテリアルが上質で、高級感溢れる質感が特徴。

▲8速ATのみでドライブしても圧倒的な速さが味わえる。

▲パドルを使用すればスーパーカーをも凌駕する走りが可能。
そんなチャージャーヘルキャットが放つパフォーマンスの凄みは、単にカタログスペックの馬力数だけにとどまらない。2トンを超える巨体を引っさげ、0-100km/h加速は約3.6秒、ドラッグレースの定番である0-400m(ゼロヨン)は11秒台前半を叩き出す。
さらに、最高速度は約328km/hに達し、名実ともに世界最速の4ドアセダンの称号を得る。ドイツの血を引くLXプラットフォームの恩恵で、アウトバーンや高速道路の超高速域でもびくともしない圧倒的な直進安定性を誇るのだ。
自動車の電動化や環境規制の波が押し寄せる現代において、チャージャーヘルキャットが放つ存在価値は、もはや自動車の歴史におけるひとつの「事件」であった。
アメ車史上初にして唯一の700馬力超の4ドアセダン。アメリカの自動車史を振り返っても、大排気量マッスルカーやハイパフォーマンスセダンは数多く存在してきたが、700馬力を超えるパワーを日常使いできる4ドアセダンは、ダッジチャージャーヘルキャットのほかにない。ライバルメーカーも含め、今後もこれを凌駕するアメ車4ドアセダンは二度と作られないと言われている。
すなわち、二度と作られないアナログの極致であり、大排気量V8スーパーチャージャーの圧倒的なパワーをあえて重厚なセダンボディに押し込み、リアタイヤを白煙に包みながら走る――こんな贅沢なアプローチは、今後の環境規制やトレンドを考えれば、二度と生まれてこない「絶滅危惧種の最高峰」と言えるだろう。

▲他モデルよりもレッドカラーが映えるメーター類。707hpを使用する場合、メーター自体が真っ赤に変化する。

▲4ドアセダンであるから、足入れの感覚が非常にいい。シートはバケットタイプでホールド性も非常に高い。
そんなアメ車セダンの最高峰と言えるチャージャーヘルキャットの取材車両は、2018年型の走行3.9万キロの中古車。オールブラックの個体で、内外装ともに瑕疵のない非常に優れたコンディションを誇る。
この車両の現役当時、やはり販売の主流は2ドアのチャレンジャーだったという事実から、中古市場におけるチャージャーのタマ数は極めて少ない。それがヘルキャットともなれば、文字通りの希少価値を伴う。しかも、販売しているのがチャレンジャー&チャージャーをデビュー来専門的に扱ってきたBUBU横浜であるというのも見逃せないポイント。
「ハードモデルだけに各部の状態が気になるところですが、この個体は、見てもらえば分かりますが本当に状態がいい。滅多に出ないチャージャーのヘルキャットですから、他と一線を画する4ドアセダンをお求めなら、一見する価値はかなり高い個体だと思います」と横浜店のスタッフ。
4ドアセダンでありながら、中身はスーパーカーを置き去りにする狂気のパフォーマンスを秘めたマッスルセダン。もう二度と作られない、かつ手に入る可能性すら極めて低い存在だけに、探し求めていた方にはまたとない朗報と言えるだろう。
99,000円
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