このダッジバンはあるオーナーカーである。すでに10数年以上乗り続けているからそれなりの状態が維持され、カスタムもなされているから、街中では人目を引く存在である。だがこのダッジバン、数年前では「いつ乗り換えてもおかしくない」状態だったという。
いわゆる経年劣化というやつである。そこそこの価格で、それなりの状態のダッジバンを手にしたAさんは、最初の数年間は楽しく過ごせたというが、クルマには消耗パーツがたくさんあるわけで、乗れば乗るほどそれらパーツの寿命は短くなるのである。
最初の頃は何も考えずにただただ楽しい状態が続いたのだが、そのうち各部の消耗品の寿命がやってきた。しかもそういうものに限って、不思議なもので続くもので、いろいろな箇所に同時に不具合が出始めたのである。
そして見渡すと、それなりの状態だったボディにもあちらこちらにヤレが出てサビも出て…。
換えても換えても追いつかないメンテナンスパーツ。乗ってなくても急速にボロく見え始めたボディ各部…。精神的にも不安定状態になり(?)、売却を検討するのは時間の問題だった。
だが、レーストラックに整備に出される他のダッジバンたちを見るたびに、「もったいないかな」との思いも高まった。で、「だったらさ、まずはボディをキレイにしなよ」との天の声(笑)につられて一念発起。ボディを板金塗装してクリームホワイトのダッジバンが誕生したのである。
予想以上の仕上がりに満足したAさん。「捨ててしまおうか」とのかつての思いは一瞬にして消え、その後のダッジバン再生への決意を新たに、まずは不安なく走れる状態へと機関部分の消耗やヤレを解消し始めたのである
恐らく当時はボディのボロさに、メンテナンスにお金を投資する気持ちが萎えていたのだろう。ボディが新たになって、見違えた愛車を復活させる気持ちが急激に高まり、難なく走れるように一気に仕上げたのである。
と同時に、Aさんのダッジバン熱は一層高まり、カスタマイズへの意欲も向上していたのである。
……。という前説を踏まえて紹介するのが1997年型ダッジバンである。5.2リッターV8エンジン搭載のミディアムボディ。いわゆる日本人が一番欲する中期型モデルのミディアムボディのV8エンジン搭載車である。
上記のいきさつから今現在は難なく乗れる状態であるというはお分かりいただけるだろう。ダッジバンは、すでにボディ外装関係のパーツに関しては生産終了のものもあるというが、機関関係のパーツに関しては入手できないものはなく、仮にあっても他のダッジ系車両からの共通項を探すことで対応可能という。
だから走りに関しては今だ十分に回復可能、もしくは維持可能であり、上記のダッジバンもその例に漏れずまったく普通に走る。だからAさんのダッジバンは、走りというよりもカスタマイズのポイントが重要となる。
このダッジバン、カラーリングや各種メッキパーツを見るにオールドテイストな雰囲気が特徴と思われる。だからか、三角窓が後付けされていたり、サイドミラーを旧タイプに付け替えるなど、いろいろと芸が細かい。
ちなみにこのダッジバンは97年型。ということは94年~97年型の中期型にあたるのだが、三角窓に関しては97年のみハメ殺しで廃止されている。だが、Aさんは自ら一年以上かけて三角窓のパーツを探し(ヤフオク等を含む)、入手後にレーストラックにて装着したのである。
くわえてレーストラックオリジナルのワイドフェンダーキットやホイール&タイヤで調整された車高、またボディ外版に描かれたモパーやファイティングラムのデカール類によって、メーカー発のオフィシャルバンのようなレーシーな雰囲気をも加えられているのである。
いっときは手放すことを考えたラムバン。だが、もちろんお金はかかるが手を加えることによって新たな魅力の発見と愛着がわき、見事ラムバン生活を続けることが可能になったA氏。まさにアメ車ならではの付き合い方とも言えるだろう。
売却することは簡単だが、ラムバンはもう二度と手に入らないだろうし、乗り換えるにしても新車を買うなら数百万円単位のお金が必要になる。なら…。こうやって新たなを魅力を発するための手段を講じて次なる新生活に浸るのも大いにアリではないだろうか。
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