HREを履いたグレーの2009年型SRT10。この時代のバイパーはエンジンスタートがキーではなく、すでにプッシュボタン式。まるで「コックピット」のようなインテリアの中においては、戦闘機のミサイル発射ボタンのような雰囲気である。
またABCペダルの距離間、そしてステアリングのタッチからして、クラッチもかなりヘビーなモノを想像していたが、びっくりするほど軽くて、ストロークが深い。ただ、1速に入れてからの動き出しからは、めちゃくちゃ扱いやすくなる。しかもこのシフト、めちゃめちゃ操作しやすい。いわゆる「コキコキ系」で、ストロークが短いから、スポーツカーらしさも万全。
普段の足がコルベットや国産セダンだからというわけではないが、バイパーを目の前にすると若干ひるむのが正直なところではある。が、このバイパー、動き始めてしまえばコルベットと同等の扱いやすさ(街乗りしているだけなら)。最近月島で日常的に使われているSRT10のオーナーカーを何度も目撃するのだが、その理由も良くわかる。
ただし、これは2000回転ぐらいを常用する範囲の話しであって、街中で2500回転を超えて、2速から3速にシフトアップしたくらいからその雰囲気は激変する! いきなりスイッチが入った感じで一気にワープ。そしてそのまま3速、4速と(4速に入れたらすぐにブレーキ)シフトアップしていくと、超極太なトルクの爆発感が感じられ街中でも簡単にホイールスピンが可能である。
たとえばこれが高速道路だと、もう周りの景色が目に入らない速度くらいまで一気にフル加速。その加速感は、自分でもアドレナリンが分泌されるのが分かるぐらいの高揚感に満たされる。過去に、レーサー古賀氏をして「この加速感はホントにヤバイ」と言わせたのだからその凄まじい感じがお分かりいただけるだろう。
最初は、街中でのあまりの扱いやすさに正直、「大したことないかも」と思っていたが、明らかに間違いだった。
しかし、この加速感は危険を伴う感じではなく、極めてスムーズ。少なくとも直線加速においてはぜんぜん危険じゃない。つまり、ボディやシャシーがこのパワーをきちんとものにしているということ。けど、コイツを曲がりで使うには…。
ステアリングの反応はかなりビビッドなもので、ステアリングを拳ひとつ分動かせば瞬時にノーズが動き、旋回体制に入る。多少勢いを付けてコーナリングするには、リアのグリップを意識しながらでないと、スパッとリアが流れてしまうような雰囲気がある。取材のために借り出した一編集部員ではさすがに無理はできない(乗り馴れたオーナーならまた違うでしょうが)。それでもバイパーの片鱗には十分触れることができた。
バイパーを語るとき、どうしてもエンジンにばかり目が行きがちだが、それ以外にも駆動系の作りがかなりシッカリしているし、足回りも、バンプを乗り越える際のサスペンションの動きのしなやかさが特筆モノで、アメ車という枠に収まらないほど各部が精密である。
それにしばらく乗っているとバイパーだからといって怖じ気づく必要もなくなり、多少乗り降りに気を使う程度で、運転自体には何ら問題はない。コルベット等と同じように両フェンダーの峰がハッキリと認識できるため、車体の大きさの認識もしやすいし。
あ〜出来れば欲しい! コルベットフリークだが、生涯最後の一台としてならSRT10が良いかもしれん(これに乗って島根に帰れるか?)。唯一気になるのがクラッチの踏みしろの大きさくらいで(クラッチが繋がる位置がかなり奥の方にあるから)、重さ自体は意外にも軽いから慣れてしまえば問題ないだろうし。十分アシとしても使えるぞ。
今回の車両にはHREホイールが装着されていたことも見逃せないが、見た目以上に乗り心地がマイルドなのに驚いた。SRT10なら普段使いも十分できる。しかもこんな化け物的なマシンを日常的に使うことが男らしい。
新型SRTバイパーが登場して久しいが、まだ日本にはほんの数台しか上陸していないという話である。もちろん新型が素晴らしいのは分かっているが、この旧ダッジバイパーSRT10でも十分に刺激的だし、そのうち中古車の争奪戦が始まるような気がする。全米ではすでに価格高騰を迎えているというし。C5からC6に行くか、一気にSRT10にいくか…。悩みどころである。
<DODGE VIPER SRT-10>
全長×全幅×全高mm
4459×1911×1210mm
ホイールベースmm:2510mm
車輌重量:1575kg
エンジン:V10 OHV
排気量:8.4リッター
最高出力:600hp/6100rpm
最大トルク:560lb-ft/6250rpm
330,000円
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