1980年に登場したAMCイーグル。ベースとなったのはコンコードとかいう小難しい話はおいといて、概略をサラッと紹介すると、乗用車の車高を少し上げ、サスペンションにジープ的な要素を加えてできたCUV。
たとえば現代のSUVがオフロードっぽさを出しつつもじつは乗用車であって、言うなれば「オフの皮をかぶった乗用車」だとすれば、このイーグルは「ワゴンボディを載せたジープ」って感じだろうか。
このイーグルは、ジープ族ならではの利点を生かし作りの良さを見せる本格派オフローダーであり、のちのXJチェロキー誕生の原動力ともなったクルマだった。
取材車輌は1983年型。搭載されるエンジンは4.2リッター直6OHV。123hp、最大トルク29kg-mを発生させる。ボディサイズは4660×1835×1530ミリ。ホイールベースは2775ミリとなり、車重は1630kg。
カタログカラーであるディープマルーンにウッドパネルが貼られたオリジナル仕様である。基本的にノーマルというそのボディは、パッと見の印象がものすごく良い。適度な古さと味わい深いデザインが融合され、ある種のオーラさえ感じさせる。
とはいえ、ボディはフルサイズではなく結構コンパクト。だから多少のオーラがあれど、臆することなく乗れる。フロントマスクのメッキ部分とサイドのウッドパネル、そしてリアハッチの造形等が絶妙なバランスを醸し出しており、しかも車高の高さと相まってイーグル特有の存在感を醸し出している。
聞けば、このクルマはエイブルから一度あるオーナーさんにわたり、またそのオーナーさんからの出戻り車という。ちなみにそのオーナーさんとは、某スタイリスト氏ということで、そういったファッション関係者に人気であったという。
余談だが、あまり乗っている人がいなく、どこへでも行けて信頼性高く、そして荷物が積めるワゴンボディ。さらにウッドパネルがもたらすオシャレ感覚…、とくれば「レアにハズシにコダワリに…」と目立つクルマ選びの3か条をすべて満たしているわけで、クルマで自分を表現したい方々に人気というのも頷ける。
ボディカラーに合わせてインテリア全体がマルーンカラーで統一されており、シートはツートーンカラーが採用される。
ステアリングは細身の華奢な感じのもので、メーター類や各部のコントロール系スイッチ類には昔ながらの味わいが各部に感じられる。ちなみにウインドーの開閉は手動である(笑)。
これまた華奢なキーを受け取り、いざエンジンスタート。一発でかかり、そのかかり具合も驚くほど俊敏かつ軽快。とはいえ、1983年もの。すでに30年越えともなれば、多少は内心バクバクである。
走り出す前にサイドミラーをちゃんと合わせていなかったこともあり、緊張感×2になりつつ走り出すが、ものの10分もしないうちにまったく違和感なく走っていることに気付く。
何より驚いたのが、ステアリングの反応とボディの強さだった。細身のステアリングは、まったくストレスなく左右にキレ(非常に運転しやすい)、車体の反応も驚くほど良い。アメ車特有のふわふわゆらゆらとした、ステアリングのデッドな領域が多い感触もまったくない。
そしてボディは、「ガチャっ」と締まる重たいドアから想像はしていたが、路面の凸凹に負けることなく、ドライバーがその頑丈さを感じるほどシッカリしている。たしかに、ジープ譲りのサスペンションは意外に硬く明確な反応を示すものの、ボディがその振動をすべて受け止めているから、弱さ、緩さ、脆さ、不快感はまったく感じない。
空いた国道に出てフルスロットル。4.2リッター直6OHVは、ちょっと古めのエンジンらしく息吹を高めていくものの、実質120hp程度のパワーとあって、圧倒的な力強さは感じない。ただ、そのサウンドとフィーリングは昔懐かしいものであり、一般道をメインとする使用状況なら、十分まかなえるほどのパワーはちゃんとある。ブレーキも踏力を必要とするものの、踏めば確実に速度を殺すタイプである。
なによりこの個体は、エンジンやミッションの状態が非常に良いだけに、年式ゆえの怖さみたいなものをぜんぜん感じないのがいい。すでに30年越車となるが、そういったヒストリックカー的な不安定さをまったく感じさせないのはさすがである。
時間にして2時間弱、撮影と試乗を終え戻ってから原氏に話を聞いた。どうしても聞きたいことがひとつあったからだ。「サードカマロやコルベット等を中心としたエイブルがなぜイーグルを?」と。
その答えはこうだ。「アメ車に乗るための入門ショップとしてエイブルが設立されて約24年。その間主にサードカマロ等のスポーティなV8搭載車をメインに販売してきましたが、じつはエイブル設立前に修行していた時代に、AMCイーグルの新車を扱っていたんですよね。その時の想いもあって、イーグルを見るたびに手に入れてコツコツ整備&販売してきた流れですかね」
なるほど。大した数が流通しているわけでもない、どちらかというとマイナーなイーグルを今なお扱っている理由とは、修業時代の思い出と当時思っていたイーグルの欠点の解消という。
後者にいたっては、独自にV8エンジンを搭載するなどのオリジナルカスタムも行っている。しかも新車時のイーグルを知っているだけに、メンテナンスやパーツ情報等にも精通しているわけである。
たった2時間弱の試乗ですべての粗探しをするのは不可能だったが、少なくとも走る、止まる、曲がるに関する部分においてはまったく問題がない。
まあもちろん、このまま何も起きずにずっと乗り続けられるかどうかは正直分からぬが、少なくともこの個体においては、イーグルワゴンを味わう上で必要となる要素の多くを持ち合わせているだけに(フルノーマルってのも最高だし)、多少のメンテナンスを承知の上でも手に入れるだけの価値が十分にあるのではないかと思う。
興味ある方やイーグルワゴンに思い入れのある方は、実物を見てみることを是非お勧めしたい。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES