いまや、世界中の生粋のクルマ好きから熱視線が送られている大排気量のNAエンジン。メルセデスにせよBMWにせよ、比較的手の届きやすい価格帯の車両はこぞって四気筒のターボエンジンである。BMWにいたっては、あのシルキーな直6エンジンでさえターボとなり、クルマ好きの心は折れかかっている。
しかも、MTミッション搭載車は極限まで少なくなり(そもそもMTを知らない世代の免許書取得者が登場している時代でもあるが)、世界中を見渡しても、いまやMTで駆動できるNAエンジン搭載車は限りなく少ない。だからそうしたクルマ好きたちは中古車に目を向けるが(かなり売れている)、それでも個体の数は減少の一途をたどっているのは間違いない。
逆にポルシェなどは、その数が減っていくからこその価値の高まりが半端ではなく、20年前の車両が1000万円越えという、とんでもない中古車なっていたりするのだが、生粋のクルマ好きはそんな価値をちゃんと認めているから素晴らしい(笑)
で、そうした稀有な存在は、じつはアメ車にはまだ多い。中古車を含めれば、恐らく世界一豊富な車両が存在する。
そんななかで、今回集めたのが二台の大排気量NAエンジン搭載のMTモデル、かつこの先も価値がずっと続くであろう最強モデルである。まずはバイパー。
取材車両は、2005年型のバイパーSRT10ロードスター。走行距離3000キロ弱。スペックだけを見れば驚くほど極上の部類である。この年代のバイパーとはいえ、すでに13年前の車両。手荒に扱われていたり、ぶつけていたり…、そういった危険性はなくはない。だが、この車両は全く異なり、直接触れるのが恐ろしいくらいの程度である。
写真を見ていただければお分かりいただけると思うが、まるで磨き立ての車両のようにピカピカである。手に触れる各部も、まだ若干渋さが残っているような状態であり、普通に考えれば3000キロという距離は「やっと慣らしを終え全開にできる状況」になった程度であるから、大切に乗っていれば、まだまだ機械的な馴染みが十分ではないとも考えられる。
この車両は、現地に日本法人を持つBCDが現地のオーナーから直接交渉によって入手した車両。日本人スタッフが、現地でモノを見て、日本人の嫌いな過走行や内装の汚い車両をスルーした結果、日本に導入された車両である。しかも、現地チェックのみならず、日本にて第三者機関の鑑定士が別途確認をしているから、二重三重のチェックや事故車等の判別も行われている車両である。
まずは乗り込む。乗降には分厚いサイドシルをまたぐが、その下には排気管が通っているから運転後は熱さでヤケドするから気をつけたい。経験者は語るである(笑)。
この時代のバイパーはエンジンスタートがキーではなく、すでにプッシュボタン式。まるで「コックピット」のようなインテリアの中においては、戦闘機のミサイル発射ボタンのような雰囲気である。
またABCペダルの距離間、そしてステアリングのタッチからして、クラッチもかなりヘビーなモノを想像していたが、びっくりするほど軽く、ストロークが深い。ストロークが深いから、クラッチを繋ぐ感覚には慣れが必要だが、それ以外にクセらしきものはまったくない。だから、1速に入れてからの動き出しは、想像以上に扱いやすい。
ちなみに、フェンダーの盛り上がりによってフロントの見切りがよく、街中での運転はも意外にしやすい。新しい発見!
搭載される8.3リッターV10エンジンは、510hp、最大トルク525lb-ftを発生させ、街中から200km巡航までを余裕でこなせるフレキシブルさが、この世代のバイパーの特徴である。しかも特別な電子制御装備を持たない足のスパルタンさがマニアの心をくすぐる。
だが、やはり街中では普通に運転するのが精一杯(笑)。もう少し慣れれば飛ばせるかもしれないが、「ヤバイな」という感覚も常にどこかにあり、それが自制心となって、意外にも結構安全な乗り物だったりする。恐らく現代の最新車両の電子パワステに慣れた身には、バイパーの油圧パワステが重く感じ、それをコントロールする腕力の衰えをも感じるかもしれない。
ただし、MT+オープンカーゆえの楽しさが満載であり、刺激的でもあり、V10エンジンの咆哮は、V8サウンドほど整ったサウンドではないが、それでもかなり攻撃的であり…、こんな超魅力的な車両を所有している自分に惚れるはずである。
シフトストロークが短く、ガチガチの硬質な感じがモロアメ車らしい。慣れれば、マツダロードスターの巨大版のような感覚で運転できるような感じも受けた。
ちなみに、この年代はバイパーにおける第三世代といわれ、2006年にはSRT10のクーペモデルが登場しエンジンパワーも510hpとなるが、じつはこの第三世代はファンによって評価が分かれるというのである。
というのも、2008年から登場した第四世代のバイパーには8.4リッターV10エンジンが搭載され、馬力も一気に600hpへと進化した。だからこれをもって第三世代は「大人しい世代」との評判がたったというのである。
だが、個人的にはそれをもってすら、第三世代のバイパーがオススメであると思っている。
まず、ロードスターであること。真横から見るとわかるが、そのシルエットにはかつてのシェルビーコブラの雰囲気が漂っている。それにオープンであるがゆえに、あまりにパワーにこだわる必要がない(後の世代にもロードスターは登場したがあえてチョイスした方は少ない)。
くわえて電子制御がまだあまり複雑ではない世代であるがゆえに、エンジン系のトラブルが非常に少ない世代であること。これらを鑑みて、価格とパワーとその魅力度が抜群にマッチしている世代こそが第三世代のロードスターであると思うのである(走らせずとも飾っておくだけでの満足感も高い)。
BCDスタッフ曰く「乗っても非常に乗りやすい車両だと思います。もちろん慣れればですが、着座位置からペダル類の配置、視界の見切りの良さ、シフトワークなんか手首のスナップで動作可能ですし。500hpのモンスターですが、比較的扱いやすいと思います。またこれほどの程度のバイパーの中古車が少なくなってきています」
扱いやすいとはいえ、世間で聞くバイパー伝説はある意味真実が多く(笑)、「雨の日の交差点でスピン」なんて話は逆に軽度な部類である。でもそうした逸話があるのもバイパーらしく、実オーナーになって経験して欲しいと思うのである(笑)。
なお、今回の車両価格は698万円。この価格は現チャレンジャー392よりも若干高く、ヘルキャットの中古車よりは安価であるから、このバイパーの程度の良さであるならばまさしく適価と言えるだろう。
個人的には、是非ともチャレンジャーとの二台体制を敷いてもらいたいと本気で思う。チャレンジャーはATで普段の足、休日のバイパーはMTで、というように。また当然ながら、世界中の大排気量NAエンジンのMT車好きにも是非にとオススメしたい。家の近所を30分流すだけでも悦に浸れるクルマはそうはないだろうし。
330,000円
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