エビスサーキットで開催されたドリフト大会にて、豪快なパワースライドを披露し、見る者の度肝を抜いた赤と黒のフルサイズ・ピックアップトラック。レーストラックが持ち込んだこの2台のマシンには、いったいどんなチューニングがなされているのか。
なにせ国産車など歯牙にもかけぬ体躯と車重である。それを、あそこまで自由自在に振り回せるように仕上げたのだから、さぞかしディープなカスタムが施されているにちがいない……。そんな風に考えながら、この2台を手にかけたレーストラックの高橋さんに話を伺ってみると、「いや、特別なことはしていないよ」と意外な答えが。てっきり、ドリフトのために専用に製作されたマシンだと思っていたのだが、そういう訳ではないようだ。
「今回持ち込んだ2台は、ラムは森久保君(今回の2台をドライブした森久保慎さん)がアシに使ってるオーナーカーだし、C1500はウチの代車だからね(笑)。そんな、極端なチューニングなんてしていませんよ」
事実、森久保さんはこの日ラムで東北道を自走して現地入り。C1500に至っては、ドリフトカーにあるまじきどノーマルの「ベンチシート&コラムシフト」だ。普通の人が見たら、「森久保さん、この運転席でどうやってドリフトしてたの?」と、思わず訊いてしまいたくなるような仕様だ。
「それこそ、(吊るしの状態でも)アメ車、ピックアップトラックというクルマが、走りのちゃんとしたクルマであるという事の表れでしょう。
それに、お金と時間を惜しまなければいくらでも手をかけることはできますが、今回はそういう目的でドリフトに参加したわけじゃない。クルマの楽しさ=お金じゃない。言うなれば、手持ちのアメ車でもこんなに面白くなるものなんだよ、というのを伝えるのが目的だったわけですから」
つまり、アナタの乗るピックアップトラック(アメ車)でも、ちょっと手をかけてやるだけで、明日から元気にドリフトができる……そこまで行かなくとも、スポーツ走行を楽しむことができるということなのだ。フルサイズ・ピックアップを駆って、スポーツ走行で汗を流す!。
リフトアップしてオフロードを走るのとはまた違う、格別な楽しさが味わえるのである。
普段は森久保さんのアシとしても活躍しているという、こちらのダッジ・ラム。その仕上がりは高橋さん曰く、「ストリートを元気よく走って遊べる、一歩手前くらい」とのことだが、その走りが侮れないレベルにあるのは動画でご覧の通り。ベース車の素性の良さがうかがえるところだろう。
森久保さんが購入した段階では、SRT-10のフロントバンパーとデフ以外はノーマルとのことだったが、その後はレーストラックの手によりファインチューニング。エンジンはラムエアとヘダースで吸排気を整え、マフラーはクロスパイプから先をワンオフ制作。切り替え式のサイドバルブも備えられている(ボタンひとつでサウンドが抑えられるやつです)。
足回りについては、ショックはノーマルのまま、ホチキスのスウェイバーとフロントスタビライザーで強化しており、森久保さんも「問題ないくらいトラクションが掛かっている」と太鼓判。ブレーキはこのほどパッドを交換したとのことで、こちらも「新しいパッドが、かなり効いてますね。こんなデカいピックアップでも、ブレーキをかえれば、しっかり止まるようになるんですよ」とご満悦だった。
今回はプロペラシャフトのトラブルにより、最後までパフォーマンスを披露できずに終わってしまったが、その原因については、高橋さんも「大きく上下するトラック特有の足回りの動きと、ドライとウェットが混じり合った路面コンディションにあったんじゃないかな」とすっかり分析済み。すでに何らかの対策が考えられている様子だったので、ぜひ次回の活躍に期待したい。
このクルマに関しては、取材した私より詳しい方が読者の中にもいることだろう。なにせこちらのC1500、普段はお店の代車として活躍しているクルマなのだ。レーストラックにお世話になっている人なら、一度は乗ったことがあるに違いない。
チューニングの内容についても過度にスポーツに振ったようなものではない。たとえば足回りは、カヤバのショックでローダウンし、アーバンギアのLSDで強化した程度。K&Aのエアフィルターやヘダース、ワンオフのサイドマフラーなどで武装したエンジンは、じつは皆さんお馴染みの、アストロと同様の4.3リッターV6。このエンジン選択について高橋さんにうかがうと、「V8だけがアメ車じゃないですしね。あと、アストロでもドリフトできるってことなんですよね」とのこと。
このように、比較的ライトな内容で仕上げられているC1500だが、ホンキになった時の走りは動画の通り。森久保さんも「リアにちょっとジャダーが出ることも有りましたが、そのほかは問題なし。これでラムのエンジン(5.7HEMI)でも積んだりしたら、超面白くなりますよ!」とのことだった。
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