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富士スピードウェイで行われたテスト走行を完全密着取材!

マスタング BOSS 302 ラグナセカ パフォーマンステスト_その1

ASDNがサーキットでテスト走行をする目的は?

インターネット媒体の最大のセールスポイントは『速報性』と『情報密度』だが、今回は速報性を捨てて密度にコダワってみた。短期集中連載の第1回目となる今回は、ASDNが販売車両をサーキットに持ち込んだ企画意図について解説する。実際の走行インプレッションやパフォーマンスデータについては次回以降にお届けする。こういった変わった趣向で記事が掲載できるのは、ページ数に制限のないインターネット媒体ならではの醍醐味と言えるだろう(笑)

更新日:2011.11.21

文/田中享(Tanaka Susumu) 写真/佐藤安孝・田村 翔(Sato Yasutaka・Tamura Sho/バーナーイメージズ)

取材協力/ASDN公式ホームページ TEL  [ホームページ]

サーキットでのテスト走行には膨大な労力と莫大な費用がかかる!?

 去る10月30日に富士スピードウェイにてASDNによる2012年型フォード・マスタング BOSS 302 ラグナセカのパフォーマンス・テストが開催された。
 ASDNがプロドライバーによるサーキットテストを開催するのは、昨年のシボレー・カマロSS、フォード・マスタング・シェルビーGT500、ダッジ・チャレンジャーSMS 570の比較テストに引き続き今回が2回目となる。アメ車ワールドでは今回から数回に渡り、テスト走行の模様をお伝えするわけだが、テスト内容の詳細を紹介する前に、まずは「何故サーキットでのテスト走行が必要なのか?」ということを考えてみたいと思う。

 ご存知のように、今回のテストの主役であるフォード・マスタング BOSS 302 ラグナセカは、往年のSCCAトランザムレースで活躍したBOSS 302をモチーフとした特別モデルであり、ノーマルのマスタング以上のパフォーマンスが与えられたホットモデルである。しかし、このクルマを購入するオーナーの大半はストリートでの使用を前提として購入すると思われ、サーキットなどのモータースポーツで使用する人は少数派と考えられる。それにも関らず、わざわざサーキットというモータースポーツ専用のステージに持ち込んでテストを行うのは何故なのか?ということに今回はスポットを当ててみた。

 企画の裏事情というのは、雑誌などの記事として取り上げられる機会がないのでご存じない方も多いと思うが、実はサーキットのような特殊なステージでテストを行うには膨大な時間と費用が必要となる。
 まずはテストを行うサーキットの選定に始まり、適切な走行枠の有無やスケジュールの確認、ドライバーの選定とスケジュールの確認、サーキットとドライバーのスケジュールを調整しての実行日の確定、ドライバーとの契約、走行枠やパドックの予約、サポートスタッフの確保、積載車や予備タイヤなどの手配、タイムスケジュールの作成、スタッフが宿泊するホテルや当日の食事の手配、広告代理店や出版社への連絡、資料の作成、etc。わずか数時間のテスト走行のために、主催者側はその何倍もの時間と労力を費やすことになる。
 さらには費用の問題もある。サーキットの使用料、ドライバーとの契約料、スタッフの人件費、燃料代、宿泊費、食事代、その他諸々の雑費など、これまたわずか数時間のテストのために何十万円もの経費がかかってしまうのである。筆者のようにそれなりの知識のある部外者からすれば「そこまでの時間と労力と費用をかける必要があるのか?」と思えるほどの行為なのである。

 ページ数に限りのある雑誌時代には取り上げる機会がなかったが、幸いにしてインターネット媒体であるアメ車ワールドの場合はスペースを気にする事なく記事を構成出来るので、今回はまずはその辺のことを取り上げてから本題に入りたいと思ったしだいである。

今回のパフォーマンステストの主役である2012年型フォード・マスタング BOSS 302 ラグナセカ(Laguna Seca)。ノーマルのV8 GTを大きく上回る444HPを発揮する5リッターV8ユニットを搭載。吸排気系、足回り、ブレーキ、トランスミッション、LSDなど細部に渡り手が施されたスペシャル・マスタングである。

ラグナセカとの比較検証のために用意された2010年型フォード・マスタングV8 GT プレミアム。搭載するエンジンは315HPを発揮する4.6リッターV8(2011年型以降は5リッターV8で412HP)。

直接のライバルという感じではないが、ラグナセカの実力を計る物差しのひとつとして用意された2007年型ランボルギーニ・ガヤルド。しかも世界限定185台のNera。5リッターV10ユニットは通常モデル+20HPの520HPを発揮する。4WDという駆動方式ながら車両重量は1470kgというスペックはまさしくスーパーカー。当然ながら新車価格もスーパーだ(笑)

限界域での走行データを得ることのメリットとは?

 パフォーマンステストの当日は関係者に落ち着いて話を聞く機会がなかったので、テスト走行から数日後にASDN事務局に電話インタビューを行った。ここでは質疑応答形式でご紹介する。

編集部:色々な意味で負担の大きいサーキットという特殊なステージでパフォーマンステストを行った理由をお聞かせください。

ASDN:走行性能の高さを確かな数値として提示したかったというのが一番の目的です。アメリカンスーパースポーツカーの素晴らしさを日本の自動車ファンに知ってもらうことがASDNという団体の目的のひとつですが、スポーツカーファンが最も重視するのは性能です。自動車の性能はメーカー発表のカタログスペックからある程度は推測できますが、性能の高さをはっきりと証明するためには、実際に走らせてみるしかありません。
 また、プロのレーサーが全開でドライブすることで、我々素人では分からないそのモデルの本当の良さや弱点も見えてくる。弱点が分かれば改善する方法も見えてくるし、そうすればピンポイントでチューニングメニューを考えることもできます。
 さらに言えば、こいういった真面目なテストを行うこと自体が、ユーザーの信頼にも繋がる。もちろん販売促進のためのデモンストレーションという意味合いもありますが、それはあくまで二次的な副産物として考えています。


編集部:なるほど。しかし、今回の様なテストでは、往々にして「実際に走らせてみたら思う様な結果が出なかった」という事態も想定できますよね?

ASDN:十分に考えられます。しかし、それはそれで確かなデータが手に入るわけですから。もっとも、現行マスタングの標準モデルやシェルビーGT500などの走行性能を考えれば、今回走らせたラグナセカの実力はスペックからある程度推測出来ましたし、アメリカの現地スタッフからも「相当に速い」という情報は得ていましたからね。正直それほど心配はしていませんでした。

編集部:今回は主役であるBOSS 302 ラグナセカの他に、2010年型マスタングV8 GT プレミアムと2007年型ランボルギーニ・ガヤルドの2台を走らせたわけですが、この2台についてはどういった基準で選定されたのでしょうか?

ASDN:まずマスタングV8クーペについてはノーマルとの比較をしたかったので用意しました。正直に言いますと、エンジンが5リッターに変更となった2011年モデルがベストだったのですが、時間的にマニュアルミッションのV8が用意できなかったので2010年モデルとなりました。
 ガヤルドについては、高性能な欧州車と比較したかったので用意しました。当初はパワー的に近いBMW M3、価格的に近いポルシェ・ケイマン、アウディR8などが仮想ライバルとして候補に上がっていたのですが、アドバイザーの方から「クラスが全く違うでしょう?」というご指摘がありまして(笑)。個人的にはポルシェ911カレラが良かったのですが、これは都合が付かなくて。結局「排気量が同じ5リッターだし、ビジュアル的にも派手でいいんじゃないか?」ということでガヤルドに決まりました。ただ、ガヤルドは新車価格が軽く2000万円を超える文字通りのスーパーカーですからね。これはあくまで参考出品という感じです。



 上記以外にも「計測データに対する率直な感想」や「これからの展開」といった内容でインタビューしているのだが、ここでそれらの話をしてしまうと完全にネタバレとなってしまうので、その辺の話は次回以降のインプレッション記事が終ってからご紹介したいと思う。

今回のパフォーマンステストのドライバーを務めたのはレーシングドライバーの藤井誠暢。2011年はスーパーGT(GT300クラス)シリーズランキング3位(優勝1回)、スーパー耐久(ST-Xクラス)シリーズチャンピオン(優勝3回)など大活躍。今最も旬なレーシングドライバーと言える。ちなみに藤井選手は前回のパフォーマンステストの際にも参加しており、シェルビーGT500などをドライブした。

テスト当日は早朝6時半に富士スピードウェイ東ゲートに集合。車両の搬入や準備などの後、午前8時からスケジュール説明、3回の走行枠の間に撮影会などを挟むといった非常にタイとでハードなスケジュールだったが、ASDNの運営スタッフの他、雑誌などのメディアなど数多くの人間が集まった。

ASDNの事務局の担当者以外にも、加盟店のメカニックやレース経験のある外部メカニックなど、テストを円滑かつ安全に行うために必要となる様々なサポートスタッフが集められた。

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