更新日:2014.11.05
文/Sean Murray (訳) 椙内洋輔 写真/クライスラー
今全米で一番熱いクルマがダッジチャレンジャーとチャージャーだ。中でもヘルキャットは707hpを発生させ、あのバイパーさえも超えてしまったことで、クライスラー社内のヒエラルキーが完全に崩壊してしまっていると聞いている。実際にバイパーは一時生産調整を強いられる等、今や1万5000ドルの大幅プライスダウンをすることで、とりあえず難を逃れた状況である。
そんな中でのヘルキャット登場。一気に707hpマシンの登場は、全米に衝撃を与え、これから登場するであろう新型車にも少なからず影響を与えている。
噂話を少しリークすれば、フォードマスタングのハイパフォーマンスモデルと言われるGT350は、550hp程度と言われているが、それでも相当なパフォーマンスだが、「衝撃度が少ない」とフォード首脳陣は頭を抱えているとかいないとか。まあ身内のバイパーにすらダメージを与えているのだから、ヘルキャット自体の副次的効果はかなりのものだ。
だが、2015年のチャージャー各種モデルの試乗をすると、思いがけないひとつの結果が得られた。驚くなかれ、乗っていて一番バランスがいいのは、実はSRT392である。
先に結論を言えば、ヘルキャットは超刺激的マシンだが、超アンバランスマシンでもある。明らかにパワーがシャシーを超えている(ボディの剛性に不安が残る)。だから腕に覚えのある方なら、ワインディングロードでは全域ドリフト状態で駆け抜けることが可能だ。
ただ、そんな走りをすればタイヤがもたないし、ブレーキも恐らくもたないのではないか。それにATの耐久性にも一抹の不安が残る。チャレンジャーにはMTの設定があるが、チャージャーにはATの設定しかないからだ。ちなみに8速ATは6速直結のギアレシオ。制御もかなり良さそうだったが。
だが、そういったネガを全部飲み込みつつ、あえてヘルキャットを選ぶというなら、恐らくそうした太っ腹なオーナーこそがヘルキャットのオーナーに相応しいのだろうが、これほど刺激的なスポーツセダンは他にないだろう(唯一のライバルはBMW M3だ。コイツはヘルキャットを越える超バランスマシンだが、刺激度ではヘルキャットが一歩上だ)。
ちなみに、707hpといった馬鹿力を真面目に作るメーカーはそうはないだろう。あってもAMGくらいか。だが彼らが700hpを真剣に作れば、それこそ出来たマシンは25万ドルは下らないはずだ。
ただ、シャシーやボディ、ブレーキやサスやATがエンジンパワーと総合的にマッチし、ひとつの機械としてまともなアメリカンマッスルカーとして存在しているのは、どう考えてもSRT392である。5万ドル以下の世界的なライバル車と比べても圧倒的洗練されているのが分かるほどだ。
これから説明するが、このSRT392には、6.4リッターV8エンジンが搭載され485hpを発生させるが、このエンジン、大排気量NAエンジンとして懐かしい息吹が感じられ、まるで往年のマッスルカーのような咆哮がステキである。それにあるコーナーで多少のオーバースピードで進入しても、リアのグリップが抜けずに(抜けてもNAエンジンの緻密なアクセルコントロールで切り抜けられる)バランスの良さが感じられる。
SRT392の前後重量配分は54対46で、ヘルキャットの56対44よりもフロントヘビー感が弱く、フロントの向きの変わりようが素早く感じられることもあり、ハンドリングの軽快感はかなりのもの。それにプラスして500hp近いエンジンパワーがあるわけだから、十分にスポーティだろう。実際にハンドリングのキビキビ感はSRT392の方が断然上であり十分に楽しい。
ただし、これに関しては裏があって、ヘルキャットがSRT392に比べて鈍く感じるのは、707hpを解き放った時にベストバランスが来るようセッティングされているからであって、だからこそ通常走行時にはおとなしく感じる状況にあるだけということだ。すなわち、低スピード時からSRT392のようなキビキビセティングを出してしまうと、707hpは危なくて仕方ないということだ。
乗り心地の設定もSRT392の方が路面からの当たりは弱く、快適であることも見逃せない。ヘルキャットは、そういった部分を切り捨てたことで707hpを実現していることを考えれば致し方ないのだろうが、もしチャージャーとはいえ、実益をも求めるならば、そういったバランスの良さをもったSRT392こそがベストバイとなるだろう。
ちなみにこのバランスの良さにプラス200hp以上のパワーと硬めたシャシーをもたらしたのがヘルキャットと考えれば、ヘルキャットがいかに凄くてアンバランスかはお分かりいただけるはずだ。
普通に考えれば当たり前なのだが、もしヘルキャットがなければ、チャージャーのトップグレードはSRT392だったはずである。昨年からの継続モデルであり、熟成されていればこその当たり前の出来の良さである。すなわち太っ腹で刹那的なパワーが欲しければヘルキャット。普通に楽しみたければSRT392と考えていただいて結構だ。
なお価格だが、V6搭載のベーシックなSEが2万7995ドルから、SXTが2万9995ドルから、そしてスタンダードV8のR/Tが3万2995ドルからとなり、SRT392は4万7385ドルと一気に跳ね上がり、ヘルキャットは6万3995ドルからとなっている。
次回はV8R/Tのレポートをお楽しみに。
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