今回は、GTにパフォーマンスパッケージを装着したモデルに試乗させてもらった。筆者的にはこれまでに直4エコブーストに乗り、GTプレミアムにも試乗した経緯があるが、その直4エコブーストは正規輸入車であり、そちらには最初からパフォーマンスパッケージが装備されていたので、その効果効能をすでに知っているだけに、エンジンがV8になるとどれだけ違うのか? そこがひとつのテーマであった。
スターターボタンを押し、ギアを入れスタートする。まず感じるのがクラッチとシフトの操作性。明らかに洗練されており、世界的に絶滅傾向にあるMTモデルとはいえ、ここまで気持ちよく操作できるMTがアメ車であるという事実にひたすら感動する(笑)。クラッチの繋がりにも神経質な感じは微塵もなく、仮に渋滞路でも積極的に運転したくなるほど安楽かつ気持ちいい、それほどご機嫌なMTである。
新型マスタングは、全体的にATのセッティングが良くなり、日本市場でも積極的にAT推進派としてみなさまにオススメしようと思っていたが、やはり直にMTをドライブしてしまうと、そのダイレクトな感触に一発でノックアウトされてしまう。
くわえて、そのダイレクトな感触がV8エンジンと同調して、これまたしびれるサウンドを響かせる。ローギアからセカンドへシフトチェンジ、そしてアクセルを踏み込みながら高まるV8サウンドは他車にはないフォード車特有の野太さ。パワー数値やトルク感等エンジンスペックには現れない感覚性能としては、現代版マッスル随一の快音を発する5リッターV8エンジンであり、旧モデル同様の密度の濃さを備えドライバーを魅了する。
いわゆる自分に酔える要素としては、やはりV8サウンドこそ魅力的であり、スピードの速い遅いに関係なく「あえてアメ車に乗る理由」みたいなものを与えてくれるのである。
新型マスタングとなりあらゆる部分が進化したが、その変化をすべてにおいて許容範囲内に収めているのが7代目となる新型マスタングの特徴である。
ボディデザインは、ロングノーズショートデッキの古典的プロポーションをより強め、全体的に薄型デザインに見えるようしつらえることで、(特にフロントマスク)、目線をぐっと押し下げることに成功し、一層モダンなデザインになった。とはいえ、旧モデルとの互換性もちゃんと感じさせるから旧型派にもあえて拒絶されるような印象はまったくない。
走りも、たしかに乗り心地のバタバタ感が減ったし、リアグリップの高まりを感じさせつつはあるが、すべてがハード路線に突っ走った現代版ドイツ車のような方向性というよりは、アメ車らしい鷹揚さがシッカリと残っており、街中でのゆったりしたドライブこそが気持ちいい、そういう仕立てになっている。
とはいえ、独立懸架式のリアサスペンションのロードホールディング性能は高く、コーナリング性能が飛躍的にアップしているというから、これまで以上に幅のある乗り味が味わえるに違いない。具体的には街乗りからハード走行まで確実に対応できる最新のアメ車である。
非常に感覚的な物言いなのだが、最近のモダナイズされたアメ車たちはどれもみなドイツ的な方向性に進んでいるのは明らかだが、マスタングに限って言えば、確実にアメ車の枠内に残っている。だからこそ、新型となりいくら洗練されてもマスタングはアメ車好きにオススメなのである。
クルマ好きである以上、速さやスピードに憧れる気持ちはわからないでもない。そして時代が時代だけにワールドワイドな性能が求められ、だから最新のクルマたちがみな【そちら】の方向に進もうとしていることも致し方ないのかもしれない。だがやはりアメ車である以上、何かしらアメリカ的な味わいを与えてくれなけば、われわれはあえて最新のアメ車を新車で買う必要がなくなってしまう。アメリカ製ドイツ車しか買えないなら、はなからドイツ車を買うだろうし、もっと安い日本製ドイツ車でもいいわけだし。
ということで(話がちょっと脱線したが)、新型マスタングは旧型モデル同様に買いの1台である。しかもBCDなら即納車もあるし、希望のグレードを直輸入してもらうことも可能である。
■グレード:GT
■全長×全幅×全高:4790×1920×1380mm
■ホイールベース:2720mm
■車両重量:1680kg
■エンジン:5.0L V8 DOHC
■最高出力:435hp/6500rpm
■最大トルク:400lb-ft/4250rpm
■トランスミッション:6速MT
■駆動方式:FR
■ハンドル位置:左
■タイヤ:F 255/40R19/R 275/40R19
(パフォーマンスパッケージ装着車)
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