C3コルベットは、68年にデビューし、82年まで生産された歴代コルベットの中でもっとも長い15年という生産期間を誇る。5年という短命に終わったC2時代と比べれば「パワー」で頂点を極めた時代と言えるだろう。500hpを上回るエンジンパワーのポテンシャルを最大限引き出すマッチョなデザイン。空力にも優れたC3は、コルベットの歴史においてもまさに「絶頂期」だったのである。
しかし、70年代を境いに大気浄化法改正(マスキー法)によって排ガス規制が一気に強化され、対処法的なエンジンのディチューンがはじまり、なかにはトップエンジンの廃止も行われ、一気に牙を抜かれていった。
一方デザインにおいても変化が生じ始める。衝突基準の改正によってクロームバンパーの廃止やオープンボディたるコンバーチブルが消滅するのである。
C3の時代は、力で栄華を極めたアメリカンパワーに満ちたエンジンとデザインで幕開けし、オイルショックの最中で苦悩しつつ、新たな魅力を模索し続けた15年間と言っていいだろう。
ということで、C3コルベットは歴史上、年式を追うごとに魅力が減っていくと思われがちだが、本国では年々販売台数を伸ばしており、マニア的な目線で見ればデザイン的な魅力減が叫ばれるなか、単なるスポーツカー以上のアメリカの「星」として、実際には存在価値を高めていったのである。
C3コルベットは、80年に最後のモデルチェンジを行ない、前後バンパーの形状を刷新するとともにオイルショックの苦悩を消し去り新たなるデザインを手に入れる。そして82年を最後にC4へと移行するのである。
で、取材車はその後期型にあたる81年型。具体的に言えば、80年にはデザイン変更が行われ一年間のみ5.0リッターV8エンジンが存在したが、翌81年には5.7リッターV8のみに戻っており、さらに翌年の最終82年にはキャブレターが廃止されインジェクションとなるから、後期型における人気は80~81年の5.7リッターV8ということで、まさにC3末期のフルノーマルモデルが取材できたのである。
昨年もそうだったが、年始の取材からコルベット、しかもC3というのはかなりの良縁。てか、シルバーのボディがめちゃくちゃシブイ。もちろん「C3だったらアイアンだろ」というようなマニアな方もいらっしゃるのは重々承知の上だが、個人的には81年型でも十分にカッコイイと思う。
コルベットは時代を追うごとに様々なデザインテイストを経て現代に至っている。C1、C2、C4、C5、C6、C7は、デザインはそれぞれ異なるが、ある意味では欧州車的なスポーツカーデザインを目指したものだろう(前後オーバーハングをどんどん切り詰めて性能重視のスポーツカーに成長している)。
だがC3だけは、まったく異なるフォルムだと思っている。まさしく「ザ・アメリカ」を象徴しているデザインではないか。
大きく膨らんだフェンダーにロングノーズ&ショートデッキのフォルムだが、あまりにも長いフロントオーバーハング。しかもめちゃめちゃロングノーズであるからこそ、ドライバーは後輪軸の上に座っているかのごとき状態で走らせる。
おそらく、というか当然ながらコーナリングスピードにスポーツカーと呼べるほどの速さはないだろう…。だが、「それがどうした? カッコよきゃいいじゃん!」とでも言わんばかりのマッチョなフォルムに、一瞬で心奪われる。
「アイアン、アイアン」とみな口を揃えていうが(もちろんカッコイイ)、どっこい後期型にも今だからこそ伝わるコルベットとしての「華」が見えるのである。
シートに座ってみると着座位置とステアリングやセンターコンソールの位置具合が絶妙な関係になっていることがわかり、ドライバーズシートから見えるフェンダーの峰は歴代コルベット随一の豊満な膨らみを示している。
かつ、ボディの大きさが意外にも小さく、その割にはサイドミラーも小さすぎて自車のリアフェンダーしか見えず、まったく役に立たないことも同時にわかり、アテにできるのはバックミラーだけという状態は相変わらずだった(笑)。
エンジンは一発始動。しかもまったくぐずることなく走り出す。ちなみに撮影のために何度か始動と停止を繰り返したが、不安定な気配はまったくなく、その後は81年車ということを忘れてしまうほど気楽な撮影となった。
じつは当日は以前に撮影させてもらったC7のZ06と並べて一枚写真を撮らせてもらった。年式にして34年、パワーにして450hp以上違う2台だが、その瞬間の光景にて輝いて見えたのはじつはC3の方だった。200hpに満たないノーマルパワーに3速ATを組み合わせた一介の旧車が、最新超高性能スポーツカーにオーラで勝る…。
まあある意味、個人的な趣味趣向によって輝きの濃淡は違って見えるだろうから、まったく逆に映ることもあるのは承知だが、スポーツカーとはその高性能さでアピールするものもあれば、デザインで勝負するものもあるんだということを、コルベット自身が改めて教えてくれたのである。
しかも日頃乗っている最新のアメ車からは感じられない濃厚なキャブレターV8フィール。これだけ毎日のようにアメ車に乗っていながら「やっぱりパワーだけでなく、フィールも大事だなあ」と真剣に思えた瞬間であった。
まさにダイレクトに感じるV8サウンドに「これだ」というアナログ的快感が得られたのである。
このクルマは、5年半前にBUBUビンテージが直輸入し販売したものだが、5年ぶりに出戻ってきたもの。
だが、この5年間で無闇な改造や整備を受けておらず、ほぼフル純正と言えるほどの状態を完備している車両であった。しかもシルバーという、ある意味珍しいカラーリングも日本人好みな色ではないか。
もちろん、フルレストアしている車両ではないから、使い込まれた感じは各部にあるが、逆にその状態でも「こんなに綺麗なのか」と、二重にも三重にも驚いてしまう。鈍く輝くボディやホイールが本当に最高である。
もちろん、好き嫌いや好みもあるだろうから、C3前期が欲しいという方のほうが多いのだろうが、C3に一度乗ってみたいとか、後期型欲しいという方なら、非常に魅力的な価格でもあるから、ぜひ直接モノを見て欲しいと思う。
もしこのクルマをベースにレストアするとすれば、もちろんフル純正の完全なC3が造れるだろうし、そういうベースとして考えても非常に魅力的な1台だろう。ちなみに、アイアンとかを探している方も一度見てみるといいかもしれない。あまりの程度の良さに欲しくなるかもしれないし。
この車両を取材させてくれたBUBUヴィンテージには、現在C1、C2×2台とこのC3があり、さらにBUBUのBCDにはC6、C7が複数あるわけだから、まさにコルベットミュージアムばりな商品ラインナップを誇っているといっても過言ではないのである。
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES