TEST RIDE

[試乗記]

最良のFRコルベットを求めるなら最終C7が理想的

2015 シボレーコルベット Z06

Z06の最強パフォーマンスはあのヘルキャットを凌ぐ

650hpを発生させるZ06の7速MTモデルを取材した。

更新日:2025.12.26

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

車重1.6t以下のボディに650hpの強烈モデル

 コルベットC8が開発され始めたのが2014年。2014年と言えばC7コルベットがデビューした年である! なんとその頃からC8のミッドシップ化は確定路線になっていたということだから、実際にはそれ以前から「FRはC7まで」と決まっていたのかもしれない。

 だから、まずはC7コルベットの価値は非常に高いということである=コルベット開発陣の理想形がC7だから。

 「やり残したことはひとつもない」と開発責任者が後に語っていたから、V8OHV+FR+トランスアクスル+リアリーフサスといったパッケージを使用したFRコルベットとしての一つの完成型として確実に歴史に名を残すだろう。

 実際、C7生産終了後すでに6年が経つが、その価値は一向に減らない。下手したらその当時と同じレベルの価格帯で中古車が販売されている(上がっている個体もある)。その要因は、「最新のコルベットはC8だが、最良のコルベットはC7」と考える方がまだ多数いること。

▲2015年型Z06、走行約33000キロのディーラー車個体。

▲10年落ちの個体だが驚異のコンディションが保たれている。

 スーパーカー的な速さというよりは、自分にとっての理想(好み)はFRコルベット。その中の最良を求める(だからC7)ファンがまだまだ数多い。

 だからあと5年もすれば、もっと上がっている(もしくは変わらない価格帯)可能性すらあるという。なかでも、当時のハイパフォーマンスモデルたるZ06は、数が少ないだけにその価値は圧倒的だ。

 Z06とは、2015年に登場した当時のFRコルベット最強モデル。ノーマルC7コルベット比でパワフルになり、シャシー剛性はアップし、それに伴いワイドボディが与えられている。

 具体的にはフロントフェンダーが56ミリ、リアが80ミリワイドになり、前後サイドにエアロが装備され、ブレーキはブレンボ、タイヤはミシュラン・パイロットスポーツの専用品が装備される。車重も1598キロと、アメ車としては異例の軽量ボディである。

▲より低く搭載された6.2リッターV8OHVにスーパーチャージャーを組み合わせ650hp、最大トルク650lb-ftを発生させる。

▲ボンネットインシュレーターはまるで新品。10年落ちの車体が示す驚異のコンディションは隅々に及んでいる。

▲深みのある赤いボディカラーにブラックホイール。そしてイエローのキャリパーが非常によく似合っている。

 搭載されるエンジンは、6.2リッターV8OHVにスーパーチャージャーが装着されたLT4。専用パーツで製作された珠玉の逸品。650hp、最大トルク650lb-ftを発生させるこのエンジンは、低速から巻き起こる爆発的パワー&レスポンスをもたらし、OHVならではの低重心+ドライサンプ採用により、一般道でもサーキット走行でも鬼のように速い。

 このLT4には、トランスアクスルレイアウトで組み合わせられるミッションが2種類あり、7速MTおよび2016年モデルからは8速ATも選択可能となっていた。

 単純に1598キロのボディに650hpというパワースペックだけで、その当時は驚愕だったが、実際の速さは同じく2015年にデビューしたチャレンジャーヘルキャットも真っ青な、ある種常軌を逸した速さであった! 直線加速はヘルキャットだったが、それ以外の曲がりが加わったステージではZ06の独壇場だった。より低く搭載されたV8エンジンの真骨頂である。

 余談であるが、FRコルベット最上の速さ=それ以上のパフォーマンスを望むのであればFRではトラクション確保が難しい=ミッドシップC8へ移行という流れが出来上がっていったのだろう。

▲人間工学に優れたインテリア。ボディカラーに合わせた赤いレザーが組み合わされる。インテリア全体のコンディションも非常に良い。

▲7速MTはC7コルベット特有のMTギア。6速&7速の操作感覚に慣れが必要かもしれないが、慣れれば固有の楽しみが味わえる。ちなみにクラッチ操作はしやすく、全く不安を感じる部分はない。

▲アクティブレブマッチを使用することで、変速時のガタツキを回避することが可能になる。

▲Z06ならではの650hp&650lb-ftのバッジが室内に貼られている。

 Z06であるが、まずはベースのクーペがあり、それをベースにしたワイドボディ仕様のGSがあり、そのスーパーチャージャー仕様がZ06。考え方としてはC7コルベットの当時の仮装ライバル・ポルシェ911のクーペと911ターボとの関係性に近い。

 ベースのクーペがあり、一段とパワフルなモデルを求めるならZ06、そこまでのパワーはいらないがZ06のエクステリアとハンドリングは欲しいというならGSを、という当時のラインナップはまさにポルシェ911さながらであった。

 そんなZ06の中古車である。2015年型Z06、走行約33000キロのディーラー車個体。組み合わされるミッションは7速MTであるから、その希少性はより高い。しかも驚くべきコンディションを保持した赤いボディカラー。

 新車当時から、コルベットは白黒というのがデフォルトであったが、スポーツカーらしさをもたらす派手なボディカラーもよく似合う。先輩知人に「還暦になったら赤いちゃんちゃんこならぬ『赤いアメ車』に乗ろう」という活動をされている方がいるのだが(笑)、まさしくそれに相応しい個体(真紅と言いうよりはちょっと濃いワインレッド。大人の男に似合う色である)。

▲中央にタコメーターを備えたスポーツカーらしいメーター類。

▲Z06にはボディ全体にグランドエフェクトが装備されている。空力の威力を感じるほど速いという意味でもある。

▲真っ赤なレザーを備えたシートがボディカラーとよくマッチしている。繰り返すが10年落ちを感じさせる部分がほとんど、驚異的な個体である。

 派手でスポーティで、歴史的な名車であり、最強のアメリカンパワーを備えたコルベットZ06。還暦のオヤジが操れるかは否かは微妙だが、C7Z06なら車庫に置いてあるだけでも誇れるだろう。

 最後に、650hpのスーパースポーツであるからメンテナンス等の整備にも多少なりとも気を使わなくてはならないかもしれないが、BCDは最新設備を持って対応可能であり、かつBUBU系列にはGM系のディーラーがあるだけに、情報共有によるピンポイント整備も可能であるから、整備やパーツに関する心配が非常に少ないのも利点である。

 繰り返すが、「最良のFRコルベットが欲しいならC7」というのは間違いない事実であり、同時に価値の目減りも非常に少ないモデルである。よって、この先も高値安定が予想されるだけに、C7を探しているなら状態の良いものが残っている間に(購入を先送りにしてどんどん個体を失っていく前に)、入手すべきだと言えるのである。

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