TEST RIDE

[試乗記]

7リッターV8搭載のダントツ・マッスルカー

2015 シボレーカマロ Z28 (CHEVROLET CAMARO)

次期新型モデルは搭載エンジン変更の可能性あり

5代目カマロの最上級モデルZ28は、世界のスーパースポーツカーにも太刀打ちできる、生粋のアメリカンマッスルカーであった。

更新日:2016.06.06

文/椙内洋輔 写真/ゼネラル・モーターズ

「マッスルカー」とはアメリカ独自のカテゴリー

 2015年まで生産されていたカマロZ28とは、5代目カマロの最上級モデルとして、かつ歴代カマロ最速を誇るマッスルカーとして存在していた。コンセプトは、「街中からサーキットまで」。C6コルベットZ06に搭載されていたビッグブロックエンジン・427cuin=7リッターV8(LS7)エンジンを搭載し、505hp、最大トルク481lb-ftを6速MTで駆動する。

 過日、カマロZ28が当時最速のポルシェ911GT3とラップタイム競争をしている動画がアップされていた。もちろん、勝者はポルシェだったが、驚いたことにその差わずか2.5秒という、個人レベルの走行ならなんら問題ないタイム差。逆にZ28ってめちゃめちゃ速いんだなと改めて驚いたのである。

 おそらく、読者の中には筆者とは正反対の意見の方が多数いるかもしれない。負けは負けだと。だが、考えてみて欲しい。カマロは、箱型の単なるスポーツクーペ。一方ポルシェは世界最高峰のスーパースポーツカー。しかも最軽量版。そんな相手にわずか2.5秒差でラップしたということは、それこそ驚くべき速さと言うべきではないか?

 さすがアメリカンマッスル。パワー命で軽量マシンにも太刀打ちできるんだなあと。

C6コルベットZ06に搭載されていたビッグブロックエンジン・427cuin=7リッターV8LS7エンジンを搭載する。このエンジンはドライサンプ式で高回転型のエンジン。505hp、最大トルク481lb-ftを発生させ6速MTで駆動する。ATの存在はない。

ステアリングやシフトノブなど、手に触れる部分は滑りにくいアルカンターラに替えられている。インパネにスパルタンな印象はまったくないが、カマロ兄弟の中では圧倒的に速くなっているのは間違いない。

最近ではすでに当たり前と化したアメ車+バケットシート。レカロ社との共同開発品だけに性能は折り紙つきだ。

ノーマルV8やZL1には何度も乗ったが、その際のフロントノーズの回頭性の良さや落ち着きには感心した。だからこそZ28のさらなる良さが想像できる。

豪快さですべてを凌駕する

 アメリカンマッスルとは、昔から言っているがアメリカ独自のカテゴリーである。基本は箱型ボディだが、ベースは何でも良い。どんなに馬鹿デカく、前後のオーバーハングが長くとも圧倒的パワーで相手を打ちのめす(昔のチャージャーデイトナなんてどう表現したら良いか…。言葉がない…)。

 最近ではベース車の進化もあり、随分とまとまった車体形状となっているが、それでもスポーツカーが相手じゃ、その基本設計において通用しないのは自明の理。ただ、そういった難を、豪快さでもって凌駕するのがアメリカンマッスルの真髄なわけで。スポーツカーとしての運動性能が欲しければ当然コルベットに乗るべきなのである。

 GM内のヒエラルキー上、いかなる場合があってもカマロがコルベットよりも速くなることはあり得ないのだろうが(笑)、このZ28がもたらす速さは、マッスルカーというカテゴリーの中ではダントツの1台として君臨するのである。

カマロZ28:4884×1953×1330ミリ ホイールベース:2852ミリ 車重:1732kg 7.0リッターOHV V8エンジン:505hp 6速MT

911 GT3:4545×1852×1269 ミリ ホイールベース:2457ミリ 車重:1430kg 3.8リッターDOHC 水平対向6気筒:475hp 7速PDK

フロントノーズには、カーボン製大型リップスポイラーが装備されるが、その他はそれほど仰々しい装備品は装着されないので、Z28だとわからない方もいるかもしれない。まさに羊の皮をかぶった狼的マシンである。

リアスポイラーのみ、Z28を表現するアイテムとして装備される。ただ、7リッターV8の野太いエグゾーストは周囲を圧倒する可能性ありだ。

ブレンボの大径ブレーキにカーボンセラミックの穴あきローターを装備。タイヤは前後ともにP305/30/ZR19 インチを装備し、ピレリPZero Trofeo Rが装着されている。

ポルシェとの馬力差は30hpだが、車重差は300kg。普通に考えれば車重300kgの差はラップタイムに圧倒的なマイナス差を生むはずだが、そこはカマロの限界性能の高さによってその差を2.5秒と縮めたと考えるべきである。

タイムに表れないマッスルカー独特の走り

 サーキットでのラップタイムは、あくまでも判断材料のひとつに過ぎず、これがすべてではない。街中を普通に走るには、まったくアテにならないことは言うまでもない。

 ただ、運動性能という点においては(限界性能ともいうが)明確になる点が多く、日本でも筑波サーキットでラップタイムを年中計測している媒体もあるくらいだから、評価ものさしとして見比べるのはアリだろう。ということで、今回の結果は以下のとおり。


<0~60mph>
カマロZ28:4.0秒
911 GT3:3.1秒
<1/4マイル>
カマロZ28:12.3秒
911 GT3:11.3秒
<八の字旋回>
カマロZ28:23.6秒@0.89g
911 GT3:22.8秒@0.96g
<サーキットラップタイム>
カマロZ28:1分29秒72
911 GT3:1分27秒22

 Z28とGT3とでは、ミッションが違うにもかかわらずこの差ということで、世界の進化のスピードは非常に速いと感じるともに、旧式のマッスルカーでよくぞここまで対等したとも言えるだろう。

 以下を見ればわかるが、両車の価格差が約6万ドル。上記の差に700万円以上の価値があるかどうか? もしくは認めるかどうか?

 もちろん、それらによって評価は変わってくるが、筆者的にはやっぱり羊の皮をかぶった狼的なマシンが好きなだけに、見た目が常にヤル気満々の911やコルベットよりもZ28の方が断然魅力的に見えてしまうのだが、いかがだろうか。

個人的には、マッスルカーにはタイム数値にあわられない楽しさがあると思っているから、カマロの走りを評価したいと考えているが、差が差だけに悩む方もいるだろう。それにしても、こうした魅力的なマシンを正規導入しなかったGMJに疑問を感じるのは筆者だけではないだろう。写真:MOTOR TREND

車両前後重量配分は、カマロの53:47に対して911GT3の40:60と随分と異なっている。

直線加速差はトラクションの問題もありポルシェが圧倒的だった。

次期新型Z28登場は既定路線だが…

 ちなみに、筆者が知っているだけで日本に今3台のカマロZ28が上陸を果たしている(そうとしている)。1台はランボルギーニディアブロ乗りのセカンドカーとして購入されたが、あまりの楽しさに俄然乗る回数が増えてしまっているという話を聞いている。またもう一台はヘネシー仕様として日本に上陸間近(もうしたかも)であり、さらに最後は売り物として広島のカーボックスに在庫されていたはず。マッスルカー、最後の大物として君臨するスーパーマシンが日本で味わえるかもしれない!

<本国ベースプライス>
カマロ:7万5000ドル 日本では恐らく1000万円オーバーか?
ポルシェ:13万2395ドル 日本では1859万円

 ベースとなるカマロは2016年で6代目へとフルモデルチェンジされ、次期Z28も開発段階にあると言われている。だが残念ながらいろいろ変化すると言われており、7リッターV8は消滅するといわれている(最近、7リッターV8を継続するかもというニュースが舞い込んだが詳細は未定だ)。だからこそ、全米での価値が急上昇し、価格も上昇しているだけに資金があればなあと貧しい自分を嘆く毎日である。

シェルビーGT500で全米ナンバーワンの称号を得たフォードは、次なる刺客・カマロZ28にむけたシェルビーGT350を登場させた。NAエンジンで500hpを越える高回転型エンジンだが、次期カマロはどうなるのか?

マッスルカーでスポーツカーを追い回す。男のロマンだな。

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