TEST RIDE

[試乗記]

直輸入でしか手に入らないフォーカスの走り系モデル

フォード フォーカスST (FORD FOCUS ST)

2リッター直4エコブーストターボエンジンは252hp

フォーカスといえば右ハンドルのディーラー車が思い浮かぶかもしれないが、本国には魅力的な走り系モデルが存在しており、フォーカスSTはそのなかの1台である。

更新日:2016.08.25

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL 0120-17-2290 [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

直輸入車でしか味わえないフォーカスST

 今年1月、フォードの日本市場撤退というビッグニュースが舞い込んできたが、そのニュースに呼応してアメ車業界内での「フォード車充実」が広告やHPで謳われるようになったと聞く。

 それはそれで、この先もフォード車が手に入る土壌作りとしては必要なことだと思われるが、正直、アフターフォローがきちんとできないにわかショップだけは避けてもらいたいと強く願っている。

 一方でBCDはフォードが日本市場から撤退するずいぶんと前から、正規ディーラーが扱わない魅力的なフォード車を十分な数扱ってきた。エコノラインにF150にラプター、さらにマスタングは正規ディーラー車よりもいち早く入庫していたし、日本市場では扱わないMT車が揃っているなど、数と質の充実が他社とはまったく異なり、ずば抜けている。

 それが証拠にフォード車用のテスター等の機材が揃えられ、上記車両のアフター保証はディーラー車並の質を誇っていたのである。

 そんなBCDに最近、新たに入庫したのがフォードフォーカスSTである。

 ノーマルのフォーカスは正規輸入車として導入されていたし、STに関しても旧型モデルにおいては一部導入されていたものの、現行モデルのフォーカスSTは直輸入でしか味わえない。

ノーマルフォーカスの上位バージョン。走り系モデルとして人気が高い。このSTの上にはRSも存在する。2015年にフェイスリフトが行われ、アグレッシブさが増している。

オックスフォードホワイトのボディカラーにオプションの18インチアルミは ブラックポケットペイントされ、スポークから見えるキャリパーはレッドペイントされている。

STのみチョイスできる本国オプションの赤いレーシングストライプはミラーも同様に赤くなる。なお、赤の他にシルバーと黒のストライプもチョイス可能。

加速するだけでも楽しいし、クルマの性能に頼った範囲での曲がりも楽しい。

MT専用の走り系モデル

 このフォーカスSTは、2リッター直4エコブーストターボエンジンが搭載され252hp、最大トルク270lb-ftを発生させ、6速MTと組み合わされる。ボディカラーはオックスフォードホワイトでオプションの赤いセンターストライプが貼られているが、この仕様にするとサイドミラーも同様に赤くなるという。

 また、18インチのオプションホイールや「ST-3」の最上級トリムレベルがセレクトされていることから、フルレザーのレカロ社製シートが付属している。

 全体の質感は、プレミアムブランドのライバルまではいかずとも、実用優先の機能性に長けた印象であり、昔のような無機質な風合いはまったくない。

 ということで、フォーカスSTの試乗をさせてもらった。

 数ヶ月前から展示されていて注目していたフォーカスST。ド派手な赤いストライプが「少々やりすぎでは?(笑)」とも思ったが、近くで見るとメーカーオプションということでトータルバランスに優れている。しかもボディ全体の形状がアグレッシブで、全面的にヤル気を起こさせる仕様だが、ひと言、とにかくカッコいい。色もいい。

 はやる気持ちを抑え、まずはシートに座り内装のチェック。タイトなレカロ社製バケットシートがタイトなホールド性を示し若干緊張。一発で気持ちは戦闘モードに(笑)。

 しかも、MT専用車ということもあって、MTのシフトノブ位置がこれまた絶妙。座った位置から右手を伸ばすとドンピシャでシフトノブに手が当たる。最高なベストポジション。3つあるペダルの位置もこれまた最適ポジションで、クラッチペダルの重さも想定内のものだった。

 と、そんなわけで、ロクな確認もせずにエンジン始動。軽くアクセルを踏み込み、いざ発進。クラッチの繋がる位置もつかみやすく軽快感溢れるマニュアルシフトはゲートが明確で操作も的確。それを1速、2速、3速とシフトアップしていくと…。

搭載されるエンジンは2リッター直4エコブーストターボエンジン。252hp、最大トルク270lb-ftを発生させ、6速MTと組み合わされる。加速感の印象としては、直4マスタングに引けを取らない感じである。

日本で見かけるD車のフォーカスは基本右ハンドルなので、左ハンドル自体が珍しい。全体的に実用優先の機能性に長けたインテリア。

ATの設定のない、6速MT仕様。MTのフィーリングは最上の部類に属するもの。シフト位置もシート位置等とのバランスが良好。シフトするだけでも楽しい車両はそう多くはない。

ライバルはシビックタイプRやアウディS3

 ノックアウトされましたね。これは文句なく楽しい。とにかく加速しているだけで楽しい。まさにスペックを超えた楽しさという感じ。

 エンジンは2リッター直4だが252hpもあるから、速さに関してはまったく不満のないレベル。個人的にはマスタング直4と同等レベルの走りができるのではないかとさえ感じるほどだった。

 シフトフィールに関しても、カチっと決まり、ブレーキも超がつくほど確実に速度を殺し、それ以上に加速時のエンジンレスポンスやサウンドが、想像を遥かにこえて心地よく、しかも想像以上に速く、それでいて目線がマスタングよりも若干高いから視界も良いので、まるで意のままに操れそうな錯覚を起こさせるほど、走る楽しさで満たされていたのである。

 同時に、乗り心地が驚くほど良く、かといって、スポーティさをまったく殺しておらず、いわゆるレベルの高い次元での「スポーティさ」ということになるのだろう。

 聞けば、ライバル視される車両がシビックタイプRやアウディS3ということで、ガチガチのスポーティカーが相手ということになるが、昔からフォード車を見てきた筆者からすれば、フォーカスSTが断然オススメであると感じている。

 見た目の楽しさ、ある一定レベルまでの極めて従順な身のこなし(運転上級者なら奥部かさをもっと引き出せそうな感じがある)、敏捷性、ハンドリング、加速感、唯一無二の個性(日本での数の少なさ)。どれをとってもクルマ好きを唸らせるだけのハイレベルであったことは間違いない。

 久々に琴線に触れたクルマだった。クルマは、ブランドやプライスやパワーやスペック重視じゃなく、トータルバランスなんだということを改めて教えてくれた、素晴良しい試乗だった。

メーター回りはノーマルフォーカスに通じる印象だが、メーター等の視認性は非常に良い。

ダッシュボード上に油圧計、ブースト計、油温計の三連メーターが設えられており、非常にアグレッシブな印象のレカロシートやMTミッション等とのバランスも取れている。

レカロ製のフルレザーシートの座り心地は最高に良い。シートヒーターも装備されている。

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