いきなりだが、現行型ダッジチャレンジャーはいつまで続くのか。この形のままずっと続くのか。2008年に登場した現行型はすでに12年のモデルサイクル。普通に考えて長い。いや、めちゃくちゃ長い。
これまで次々とラインナップを増やし、途中途中で限定モデルを登場させることでモデルチェンジを遅らせつつも魅力は絶やさずに、今なお販売を継続している。ある意味ちょっと呆れつつも、FCAの商売上手な部分には拍手喝采である。
しかもだ。まだまだ日本国内でも売れているというのだから驚きである。今回取材したBCDでは、今年初めの段階では日本全国に15台以上のチャレンジャーが在庫されていたが、取材当日現在で残り2台にまで減っている。そのうちの1台を取材していたのだが、驚くことにその取材車もその当日に売れてしまったというのだからビックリである。
くわえて、同社ホームページには掲載されているものの、まだ本国から日本に到着していない輸送途中の段階で4台ものチャレンジャーが売約済。すなわち、次の船でやってくるチャレンジャー4台がそのまま売れてしまい、その次の次の船便までチャレンジャーの在庫車が増えることがないという、とんでもない状況だ。
それにしてもなぜ(笑)。今なお続くチャレンジャーブーム。もちろんベースとなった70年代チャレンジャーの歴史的インパクトの強さもあるのだろう。なんせ過去のチャレンジャーは「たった5年程度の存在」だったにもかかわらず、今だに与えるその影響力はめちゃめちゃ凄まじいのだから。
だが。個人的にはそれだけではない、と思っている。現行チャレンジャーがもたらすデザイン的インパクトには、現代の他の車両からは得られない圧倒的な強さがあるわけで、さらに現行型に乗っている方々のすべてが、旧70年代のチャレンジャーに興味があったわけではないとも思っている。
すなわち、現行チャレンジャー自体の魅力が、旧モデルを超えてしまっている。=現行型が自立し、自らの魅力で売っているという理屈である。
であるならば、わからないでもない。これだけバリエーションが多く、さらに限定モデルが乱立し、くわえてATやMTといった個体も日本に持ち込まれているというのだから、「チャレンジャーの次に、また別のチャレンジャーに乗り換える」ということが続けば、今のような販売状況の理由もある程度想像がつくのである。
で、そんな中で数多く販売されていたバリエーションモデルの1台、T/Aを取材した。T/Aとは、旧チャレンジャー時代にあった伝説のマシンと言われる存在。その雰囲気を現代のチャレンジャーに当てはめたモデルである。
1970年に登場したダッジチャレンジャーは、その年のSCCAが主催していたチャンピオンシップレース、通称トランザムレースへのワークス参戦を決めていた。
このSCCA(スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ)主催のレースは当時、マスタングやカマロといったマッスル市場の販売成績に大きな影響をもたらしており、マスタングやカマロ追撃の挑戦者として登場したチャレンジャーもその恩恵を受けるべく、シリーズワークス参戦を余儀なくされたのである。
で、そのレース用ホモロゲーションモデルとして誕生したのがチャレンジャーT/Aだった。T/Aとはまさしく「Trans America」の略である。
当時搭載されたエンジンは、340キュービックインチのV8に3基の2バレルキャブレターで290hp、最大トルク340lbft(実際のレースには排気量制限がありディチューンエンジンが搭載された)。
トランスミッションはMTとATが用意されMTに装備されたピストルグリップが有名である。
またボディには専用のFRPフードにボディストライプ、サイドエキゾーストが特徴だった。
なおこのT/A、レース成績は最高位で3位という実績のみで当初の目論見通りにはいかず、ワークス参戦も初年度のみの一年だけだった。というわけでこのT/A、一年のみの限定車両ということで、今となっては伝説のマシンとして語られることが多いのである。
で、そういう過去の逸話を持つマシンを積極的に復活(もしくは名前を使用)させてきたダッジは、2017年にダッジチャレンジャーT/Aを登場させた。
ベースとなるグレードは、R/Tの5.7リッターV8とSRT392の6.4リッターV8HEMIであり、可能な限り過去のT/Aを彷彿とさせるデザインと装備で満たされている(392のみ「T/A392」と表記される)。
この新T/Aには、サテンブラックのボンネットフードとフードピン(オプション)が装備されており、ルーフやリアデッキリッドもブラックで統一されている。もちろんサイドストライプもブラックである。また標準よりも1インチ大きいモパー製20インチホイールもブラックで統一されている。
一方ヘルキャットに装備されていたヘッドライト横のエアスクープがT/Aにも採用されており、アクティブエキゾーストシステムと同様に吸排気系にチューンが施されている。とはいえパワー数値に変化はないが、固有の装備としては嬉しい限りである。
なおT/A392は、392ベースのサスペンションやホイール、ブレンボブレーキで構成されている車両にT/Aパーツが装着されている。
で取材したT/Aは、2018年モデル。5.7リッターV8エンジン搭載の8速ATモデルである。走行3900kmということだから、ほぼ新車と言ってもいい状態。この後もしばらく慣らしをした方が良いレベルの走行距離である。
ボディカラーは安定のホワイトで、じつはチャレンジャー系のホワイトは意外に少ない。ブラック系が圧倒的に多く、その他はマッスルカーらしい原色カラーが多く、個体としてのホワイトはあまり見かけない。特に2015年以降の後期型では。
聞けば、2015年以前のモデルではチャレンジャーでも「白&黒」が圧倒的に多く、一転2015年以降ではモパーらしいカラフルなカラーが多くなっているという。
だからそういう意味で2015年以降の後期型のホワイトは逆に少ないと言われているのである。
くわえてT/Aでは、ボンネットフード以降がブラックでまとめられており、ボディサイドのT/Aラインとのマッチングも良好。
チャレンジャーに関して言えば、こうしたデコレーションがあればあるほど雰囲気が増す感じがするし、そうしたバリエーションモデルや限定モデルのデコレーションが施されていれば、購入後に自らチューンする必要もないくらいだから一石二鳥であり、積極的にオススメだと思っている。
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