1998年型の4代目カマロZ28(以下、4th)の取材である。筆者は、その時代のカマロの新車にかなりの数乗っていたし、最終型の2002年型正規ディーラーの広報車にも何度も乗った。
くわえて当時の編集部にはカマロフリークというかカマロオタクみたいな人間がいたから、よく彼のクルマにも乗っていたのだ。
そんな筆者からすれば、4thカマロ自体の素性は驚くほどいい、と言える。
だが当時、アホみたいにカスタマイズしていたカマロを何度も取材していたのだが、そのどれもに「良い」なんて思ったことは一度もなかった。というか、当時の取材対象車がサーキット走行的なチューンに的を絞ったものが多かったから公道で乗っていいとは一度も思えなかったのだ。
一方で、当時ディーラー広報車に何度も乗っていた経験から、ノーマルだと当時の「V6モデルですら良かった」という記憶が多分にある。
まあ、V6自体のパワー感はあまりなかったが、それでも独特のスタイルが生み出すアメリカンな雰囲気が十分に感じられていたし、それがV8になると「もっと良い」という評価だった。
ちなみに4thカマロは、スタイルを楽しみ、所有している生活を楽しみ、休日はデートのアシとしてドライブを楽しむべきクルマであって、購入してすぐにシャコタンにしてマフラーを換え、高速道路をブッ飛ばしたり、サーキットを走ってタイムを競ったりするクルマではないと当時も思っていたし、今でもそう思う。
だから、今回のようなマフラー以外フルノーマルの24年落ち中古車が見つかったこと自体が奇跡だと思ったが(しかも純正マフラーも保管されており元に戻せるというのだから素晴らしい)、実際には「個体を直接見てみないと何とも言えないな」というのが取材の前の思いだった。
というのも、もう数年前から「4thは市場から消えた」と言われており、逆にそれよりも年式の古いサードカマロの方がよく見かける、もしくは売れていると言われていたから。
すなわちサードカマロに人気が集まり、ある種のヒストリックカー的な魅力とともに売れているわけだが、一方で4th自体の話はほとんどなく、逆に「物もない」と言われていただけに、「稀に見つかった個体がそれほど良いはずがない」という思いが同時に巡っていたからである。
ちなみに、4thカマロは1993年に登場し2002年まで生産される。そしてその後8年間の空白期間があり、2010年に5代目カマロ復活という流れである。
で、4thには前期型(93年から97年)と後期型(98年から02年)の二つのデザイン変化があり、取材車はマイナーチェンジ後の後期型ということになる。
搭載されるエンジンは前期型が5.7リッターV8 LT-1エンジンで275ps、トルク44.8kg.mを発生させたが、後期型は5.7リッターV8 LS-1エンジンを搭載し288ps、トルク44.6kg-mを発生させた。
なお98年型のみ308psを発生させると言われていたが、それは事実である。99年型からマフラー変更により20psディチューンされるということを現場の人間から聞いていたから。
ということで今回の取材個体は、4thカマロ史上唯一の300ps越えをしていた98年型ということになる。
さて取材車であるが、実走約4万9000キロのホワイトの個体。この時代の4thカマロにはブラック、レッド、ホワイトとボディカラーがあり、レッドとホワイトはルーフがブラックになるというのが特徴だった。
そのブラックのルーフやピラーの塗装が新車当時から話題になり、とにかく気泡が浮き出てきてクレームが頻発したという話を思い出す。だが、この車両にはそれが当てはまらずめちゃくちゃキレイ。「塗り直したんですか?」と確認したほどだった(この車両は当時からキレイなまま。ある意味超貴重な個体)。
また、ひび割れたダッシュが当たり前のようになっていたが、この車両にはこれまた当てはまらず、普通にキレイな状態を維持していることにも驚いた。のちに確認したが、ダッシュマットを敷いており、それが日焼けや割れを防いでいたと思われる。
また、前オーナーが6年間所有しており、その間エイブルがずっと面倒を見てきた車両という。だからマフラーのみの変更で、車高やホイールがノーマルのままである。
余談だが、エイブルは車両全般において過度なチューンを好まず、クルマの素の状態を楽しむべきというポリシーを持っている。もちろん、ユーザーの好みに応じてカスタマイズ対応を行ってはいるが、それよりもベースが中古車である限りは「まずはなるべく元の状態に戻していくような作業が必要」と説いているという。
だからか、この4thをまじかで見ると「まさしくエイブルらしい」と思わずにはいられなかった。と同時に「もしかして」という思いも湧き上がってきた。
早速試乗させてもらったのだが、最初のアクセルひと踏みから予想が全てはずれ、結論から言えばビックリするほどの優良個体であった。
まずエンジンが素晴らしく吹け、ステアリングの感覚にも抜けがなく、ショックのダンピングも生きており、さらに右に左にとステアリングを振ってもパワステの感覚と人間の意識とクルマの動きにズレが全くない。エイブルでずっとメンテナンスされてきたというだけあって足回りやステアリングリンケージ系のメンテにも抜かりがないのだろう。
またブレーキの感覚は感涙もので、「当時もこんなによく止まったか?」というくらいに微調整が可能で気持ち良く制動させるから、90年代のアメ車という感覚すらなくなってしまうほどだった。
エンジンも迫力のV8サウンドを伴って気持ち良く、実際のパワー感もかなりあるから、90年代マシンと思えば十分に満足できるだろう。というか、当時比で低く見積もっても7割以上のレベルでコンディションが保たれていると思う。
一方室内は、確かに24年前の車両というだけあってヤレはある。主にステアリング周りやフロントレザーシートには深くシワが刻み込まれている。
が、それはビンテージカーを起こしような劣化とは異なり、使い込まれた味わいでもあり、各部をチェックして、また走行距離やボディ外版の状態を加味した上で判断すれば、それらのヤレがさほど嫌なものではないということが理解できるだろう(リアウインドーに貼ったブラックフィルムが劣化しているのは致し方なし)。
細かくチェックしていけば、ダッシュ周りを含め、逆に「こんなレベルの個体がまだあるのか」と驚くはずである。
ただし、個体の状態というよりは、ある意味特徴的とも言えるアメリカンなスタイルによって、居住空間と前後の視界の慣れが必要である、ということは言っておく必要があるだろう。
特に傾斜角の低いフロントウインドーにはかなりの窮屈さを感じるはずだ(笑)。だがそれが4thカマロなのだ、と割り切れれば全く問題ない。
ということで、とにかく驚きがいっぱいの4thカマロであり、「よくもまあ、こんなレベルの4thが残っていたなあ」と思うと同時に「懐かしい」を連呼。
全くの新車というわけにはいかないが、少なくとも7掛けくらいの感じで当時の雰囲気が味わえるのだから(24年落ちでだ。オーナーさんとエイブルがいかに適切なメンテナンスを施していたかがわかる)。当時の4thカマロを知っている方が乗れば筆者同様驚愕するに違いない。
4thのコンディション良好車を探しているなら、この車両を見過ごすことはできないと断言するのである。
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