数ヶ月ぶりに訪れたクワッドドライブは相変わらずの盛況ぶりだった。以前はチャレンジャーやデュランゴあたりの2020年以前の年式が多かったが、最近ではC8コルベットやキャデラックエスカレード、そしてフォードブロンコなど、直近の最新車両も数多く整備を受けており、「さすがだな」と思う。
言わずもがなだが、それら最新車両に対応する整備機器を持ちメカニズムの理解度があるからこその対応である。
その一方で、ちょっとした変化が感じられた。それは、ちょっと前のモデルのフォード車が非常に多かったこと。たとえば2015年以前のマスタングやエクスプローラー等。
主にオーナー個人からの直接の依頼が非常に多いということであり、このあたりの年代だと基本ディーラー車ということになるが、それらの面倒を見ることのできるショップやディーラーが減ったということを示しているのだろう。
また関東近県ではなく、東海、中部地方からの依頼車両が見受けられることも多くなっている。恐らくだが、「自社であれこれやり尽くした」末のクワッドドライブへの依頼となったのだろうが、そういう意味では日本各地のショップの「最後の砦」として活躍していることも誇らしい。
ちなみに、こうした日本各地からの整備依頼は、これまでに何度も記事として扱っているが、いわゆる「難題トラブル」と呼ばれるコンピューター系システムトラブルに起因していることが多い。
で、こうした難題トラブルは、年式が新しくなればなるほど起こった時の対処が難しくなる=年式が新しくなれば搭載されているコンピューター系システムが複雑になる=修理対応の難易度が増す、からである。
そしてそうした車両を修理する場合には、電子デバイスと呼ばれる機器が必要になり、その機器によってトラブルのコードを読み出したり、各CPUのアップグレードやリコール情報等の対応が可能になる。
ところが、上記の通り、そうした電子デバイスを用意して対応を試みても直せないショップが多くある=だから日本各地からの修理依頼が非常に増えている=直せる工場と直せない工場との差が生まれている。それは一体なぜか?
例えばコンピューター系にトラブルが起これば、昨日まで動いていたメーターが動かなくなったり、エンジン自体がかからなくなったり、といったような不具合が突如として起こる。で、そうした故障診断では専用の電子デバイスが必要になる。それによってまずはコンピューターに記録されたトラブル情報を読み込む。
例えばダッジ系の車両であればワイテック2.0を使用して診断をする。するとその電子デバイスは「エラーコード」を示す。エラーコードとは、「どこどこに◉◉といったトラブルが起きています」というコードである。
メカニックは、当然、そのエラーコードに従ってテックオーソリティ(整備指示情報)を確認し、修理のための情報を得る。そして修理する。
ということで、車両を販売した業者は当然のこと、修理を生業とする方々は、まずは電子デバイスを持っていなければ話にならない=エラーコードを呼び出さなければ、現代の車両整備に対応することができないからである。
ところが、ここから先が重要である。そのエラーコードであるが、あくまでそれはコードを示すのみで、そのエラーコードが点灯した本当の原因についてまでは教えてくれない。要するにエラーコード=トラブル原因のゴールではない場合が多々存在するのだ。
もう少し具体的に説明すると、そのエラーコードが明示する箇所そのものがトラブルの直接の原因であれば誰もが簡単に処理できるだろうが、実際にはそうではないことが多くあるからややこしくなる。
例えばよくある故障で『P300』と言うエラーコードが出たとする。このエラーはエンジンミスファイヤー(失火)を意味する。
となれば、まず第一に考えるのが点火系だろう。
だが原因の可能性としては点火系、インジェクター、コンピューター、エンジン圧縮、アースポイント、触媒詰まり、バルブタイミング・・・・・など様々な箇所が考えられ、エラーコードから何処にトラブルが起きているかまでは明示しない=関連部位にトラブルや原因が潜んでいるにもかかわらず、「P300」のエラーコードが点灯するのだ。
だからメカニックはエラーコード=即修理ではなく、「本当にこれなのか?」と見極めのための裏取りを必ず行わなくてはならない。でないと、誤診断を招く可能性が潜んでいるからである(裏取りせず上部の証拠だけで犯人を逮捕をして冤罪を招くことがある場合と同じ理屈)。
万が一、その見極めができないメカニックであった場合、当然一回では治らず、複数回の修理が行われることになり、それでも治ればまだマシだが、最後には「お手上げ」、もしくはその部分の全部取っ替えとか、オーバーホールとか、めちゃくちゃなことになりかねない。
これまでにも、ぐちゃぐちゃにいじられた挙句に治らず、クワッドドライブに持ち込まれた車両が多々あるという。
すなわち電子デバイスは、診断をするための取っかかりとしては最重要パーツだが、その機器から得られる情報によって=エラーコードによって、すべてのトラブルが解消されるわけでは当然なく、エラーコードから得られる結論をメカニック自身の技量によって導き出さなければならない=だからこそ直せる工場と直せない工場との差が生じるのである。
「現代の車両は、複雑に入り組んだデジタルとアナログが共存しています。エンジンやトランスミッションのメカニカルな分野においてはほぼ完成されておりますが、その周囲を取り囲む制御がとても複雑です。メカニカル的分野と半導体デバイス、どちらも熟知していないと手を付ける事が出来ないのが現実です。
よって業界の一般的な診断方法としては電子デバイスで表示されるエラーコードを読み、その部分の部品交換を行いますが、それだけでは治らないことが多々あります。
なのでエラーコードがなぜ出たのかの真相(全貌)を掴むのが本当のメカニックです。その真相がエラーコード通りならそれでOKですし、エラーコードを出させた真の原因が別にある場合なら、当然別の場所を修理をしなければなりません。
くわえてエラーコードだけに固執すると根本的な原因を見落とし誤診断につながります。木を見て森を見ず状態です。どのメーカーの車両においてもエラーコードを出力しても、その原因が、センサー、配線、制御、メカニカルまでは特定できません。だから事実の裏取りが必要です。その際には、固定観念にとらわれてはいけません」
クワッドドライブが、メーカー純正の電子デバイス以外に電圧、電流、DUTY、HZ計測テスター等を使用して波形を見たりするのは、こうした故障診断における裏取りの正確性を増すためであり、そうした診断データの積み重ねが多くのアメ車ユーザーまたは日本各地のショップからの信頼に繋がっているのである。
「現代の車両はとにかく作業精度が要求されます。それにベースとなる知識が必要であることは言うまでもありません。プラスして昔ながらの勘や経験も当然必要ですが、とにかく異常を感じる心眼といいますか、見抜くための観察力とか洞察力が不可欠です」
机に置かれた分厚いファイルは、これまでに修理してきた特異なトラブルの修理経過から結果までをファイリングしたもの。ちょっと言葉では言い表せないほどの数であった。=それこそがノウハウとなり、「このファイルを見直せば今や難題修理でもたつくことはほとんどなくなりました」というから、凄まじい言葉の重みである。
さて、こうした電子デバイスによる診断に関して、日本各地のショップからの要請があり、リモートで助け舟を出す活動を開始するという。いわゆるオンラインサポート(有料)である。
例えば大阪や九州といった各地方の距離的な事情によりクワッドドライブに車両を持ち込むことが不可能な場合のみ、オンラインにて診断を手助けする活動である。
ただし、オンラインサポート診断とはいっても基本的な作業は依頼者側のスタッフが行い、もちろん電子デバイス等の機器も持っていなければならず(汎用テスター可)、そうした作業ができるスタッフがいる前提で、オンラインにて助言をするという診断方法である。
「基本はクワッドドライブの工場に車両を持ち込んでもらうのが必須です。ですが、物理的に無理な場合もありますから、その場合においてのみ、オンラインにて診断のサポートをするということです。
ですので、あくまで実作業をなされているショップスタッフさんの手助けということであり、現場で私が作業するわけではないので100%の確証までは不可能ですが、例えば50%とか60%とかの可能性を90%近くまで引き上げることは可能だと思います」
林氏は、例えばエラーコードを見ればどの辺のトラブルであるかが想像でき、しかもそれらを踏まえた他の要因までを想定し修理が可能なほどのノウハウや知見を持つ、日本屈指のプロフェッショナル。
各ショップ自身のこれまでの整備活動を通じて得られた技法に、オンラインにてクワッドドライブの知見が加わることで、診断および修理の確実性が増すことが期待されるのである。
なお、このオンラインサポートは、業者向けのサポートであり、クワッドドライブHPにて詳細&申し込みが可能になっている。
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PERFORMANCE
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