アメリカでは、ステーションワゴンは肩身の狭い思いをしている。90年代のミニバン&SUVブームが、そのマーケットまでを食い荒らしてしまったからだ。代表的なカプリスやリーガル系ワゴンは95年に生産を終了し、長らく生き延びていたトーラスワゴンやサターン系ワゴンもとうの昔に終焉を迎えている。
ところが、アメリカ系ステーションワゴンが消滅するかたわらで、メルセデス・ベンツやBMW、アウディといったドイツ系ワゴンが次々とラインナップされ成功を収めている。それらは、かつての広大なカーゴを持つステーションワゴンというよりは、走りも楽しめるプレミアムワゴンといった位置づけだ。
そんなマーケットを意識してか、ダッジがワゴンボディを開発した。それが05年に登場したマグナムだった。スタイリングからもわかるように、カーゴのキャパシティよりも「走り」に重点を置いたモデルである。
「走り」を意識したモデルゆえにパッケージングはFR。昨今のキャデラックと同じ理論だが、キャデラックと違うところは、ダッジには、同じグループ内にメルセデスがいたことである。エンジニアたちは彼らのノウハウを存分に引き出し、それを自分たち流にアレンジした。もちろん、このクルマは300Cと兄弟車であるから、開発はクライスラーとダッジの混合チームで遂行された。
当初のアナウンスメントでは、300Cもマグナムもメルセデス・ベンツEクラスの足回りを流用したように伝えられていた。フロントにストラット、リアにマルチリンクといったサスペンション形式が物語っている。だが、その後の情報によると、あくまでもノウハウをヒアリングしただけで、共通パーツはなくオリジナルと主張している。まぁ、それはどこまでを「流用」でどこまでを「共有」と線を引くかの違いに過ぎないはずで、真意はどうであれ「走り」は確実にしっかりしているのだから、あまり気にすることはないと思う。余談だが。
ということで完成したマグナム。スポーティなワゴンボディはリリースすると同時に大人気となり、アメリカでは一時生産が間に合わないほどだった。
デビュー当時のエンジンラインナップは、2.7リッターV6(190ps)/3.5リッターV6(250ps)/5.7リッターV8(340ps)だったが、やはりV8ヘミに人気が集まったという。
このマグナムのボディサイズは、おおよそ全長5m×全幅1.8mといったところ。前後オーバーハングは短いが、ホイールベースが3mもある。スタイリングはリアに向かうとルーフが流れるようなデザインが特徴。とはいえ、カーゴドアはCピラーあたりの天井から開くので、使い勝手がかなり良いという。だが、その実キャパシティはまあまあといったところ。リアホイールハウスの出っ張りがあり、ボルボ級のような広さとまではいかない。ちなみにスペアタイヤとバッテリーは、カーゴフロアの下に収納されるという。
5.7リッターV8ヘミは、340ps/5000rpm、トルク:53.5kg-m/4000rpmを発生させる。車重は1895kgと比較的軽量なので、強烈な中間加速を体感できる。
インテリアは質素だがスポーティなもの。各部の剛性感の高さにドイツ車的な仕立ての良さを感じる。一方で当たりの柔らかい乗り心地やステアリングフィールはアメ車らしさを感じる。
従来のアメ車ファンは驚愕し、欧州車からの乗り替え派には納得の高いクオリティを誇る。シートも意外と硬めの印象。
<スペック>●全長×全幅×全高:5021×1880×1505mm ●ホイールベース:3048mm ●エンジン形式:V型8気筒OHV ●排気量:5654cc ●パワー:340ps/5000rpmトルク:53.5kg-m/4000rpm ●車重:1895kg
ボディの大きさそれ自体は、まったく気にならない。どちらかというと意外にも小さいな、という感じ。そして走り出してもその印象はまったく変わらない。これなら日本の道路事情においても何不自由なく普段の足として十分活躍できるだろう。
気になる5.7リッターV8ヘミエンジンは、非常に心地良い。ひと昔前のアメ車のような怒濤の低速トルクは感じないが、それでも中速から高速にかけての爆発的なパワーは健在(SRT-8ならもっと凄いはず)。といっても街中での柔軟性もバッチリあるから、さすが現代的なアメ車。というか、中速以上のパワー感は、このクルマでしか味わえないものだから、欧州ライバルワゴンに対してのアドバンテージはかなり高い。ちなみに余談だが、先日会社の近くで、真っ赤なボディのマグナムに遭遇した(純正色か?)。ホイールはブラック。ほんの一瞬だったので銘柄までは分からずとも、かなりの雰囲気を発していた。また社外品(たぶん)のマフラーと思われる、低音ドロドロ系のサウンドがアメ車らしさ抜群だった。白、黒、ガンメタ、シルバー系が多い中での赤ボディが最高だった!
一時はメルセデスの流用と唱われた足回りだが、やっぱり「良い」。ロールやダンピングがきっちり抑えられ、ハンドリングがシャープ。ブレーキも何ら違和感を感じないので、スポーティに走る向きにもお勧めできる。前回試乗した300Cワゴンと比較して、左ハンドル仕様がやっぱり乗りやすい(300も悪くはなかったが、左ハンドル仕様のまま、ハンドル位置だけを右に換えているので、気になる所も多少あり)。すでに生産中止の個体だが、個人的にはマグナムは超お勧めの1台。さらにいえば、後期型のマスクよりも前期型のこの顔の方が好きだったりする。
SUVのおおらかさも好きだが、シャープなワゴンが何よりの好物という方にも絶対に満足してもらえるはず。この個体はこれからいろいろカスタムされるらしいが、ノーマルでも十分にスタイリッシュなので、まずはノーマルで乗ってみるのも良いと思う。
ホイールベースが長く、前後オーバーハングが限りなく短いスタイルが特徴。このスタイルから得られる走りには、旧式ワゴンのような緩慢さが微塵もない。
後席の居住性は、300Cと同様のレベルを確保しているから、セダンのような使い方も可能。いわゆる万能カーだ。
セダン以上、旧大陸的ワゴン以下のスペースだが、リアハッチ開口部が大きく取れるなど、使い勝手の工夫もなされている。
今回の撮影は、偶然にも74年型ダッジチャレンジャーが同行していた。この2台を引き連れて同時試乗すれば、何か面白い記事が書けるかも! との思いからである。だがしかし、実際にはこの2台から直接的に得られる繋がり、みたいなものは残念ながらまったくなかった。まぁ当たり前といえば当たり前だが…。
マスタングからはじまるポニーカー・ブーム。シボレーが、カマロをリリースした3年後、ダッジがチャレンジャーを登場させたということは誰もが知るところ。当時のダッジの特徴は、フルサイズよりもコンパクトなサイズに大排気量エンジンを搭載すること。318、383の他に、440ビッグブロックや426ヘミもラインアップする。そしてEボディと呼ばれる薄い流線型ボディは、クーペとコンバーチブルの2種類。グレードはラグジュアリー系のSEとハイパフォーマンス系R/Tが用意された。
74年型はその最終モデル。前年のオイルショックが影響したモデルである。現車は安全自動車が扱った当時のディーラー車。グリーンのボディカラーをホワイトにオールペンしている以外フルノーマル。実走13万キロ。取材先までちゃんと自走でやってきたのが何よりの証拠。こんなクルマのセカンドカーにマグナムは絶好1台と思ったのは、筆者だけではないはず。
高速道路での並走撮影でもパワフルな加速を魅せてくれた。始動もスムーズで安定していた。
今もなお、オリジナルの状態を保つその姿は、いかにオーナーに愛されてきたを雄弁に物語る。
37年前の新車当時からの整備記録簿もすべて残されている極上車両。
<スペック>●74ダッジチャレンジャー ●全長×全幅×全高:5070×1940×1340mm ●ホイールベース:2795mm ●エンジン形式:V型8気筒OHV ●排気量:5211cc ●パワー:150ps/4400rpm ●トルク:40.1kg-m/4400rpm ●車重:1640kg
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES