TEST RIDE

[試乗記]

2台のキャデラック製中古SUVの実力

キャデラックエスカレード & キャデラック SRX (CADILLAC ESCALADE &CADILLAC SRX)

いまだから分かる本当の魅力

04年、05年の2台のキャデラック製中古SUVに乗ってみた。共に最新モデルが存在するし、どちらにも乗っているが、それらと比較して中古車は一体どうなのか? まったくの時代遅れの産物として両断されてしまうのだろうか?

更新日:2012.08.22

文/石山英次 写真/古閑章郎

STSベースのクロスオーバーSUV

 2003年に発表され、2004年から日本でも発売が開始しされていた初代キャデラックSRX。当時のフラッグシップセダンSTSのFRプラットフォームをベースにAWD化したクロスオーバーSUVとして登場している。
 直線基調のエクステリアは当時のデザインコンセプト「アート&サイエンス」を意識してデザインされたものであり、CTS、STS同様に新世代デザインを身にまとっている。

 エンジンは、これまた新世代のノーススター4.6リッターV8と2005年から追加された3.6リッターV6の2機種。今回試乗させてもらったのは、後者のV6エンジンである。

 ということで、久々にSRXに乗ってみた。現代に通じるキャデラックを象徴する独特なフロントマスクは、いかにも空気抵抗が少なそうでセンス良く、女性寄りの優しい印象が漂う。乗ると真っ先に目に付くインパネ回りのデザインは、旧CTSをベースとしていることが一目瞭然だったが、すべてのタッチが柔らかく、キャデラックらしいセンスでまとめられている。
 とはいえ、最新のSRXやCTSを知っている者からすれば、かなり穏やかというか質素な感じが否めない(当時はこれでも十分に豪華だと感じていたはずなのだが…)。

SUVというよりは、背の高いワゴンボディという感じがお分かりいただけるだろうか?

SPEC:SRX
全長:4965mm
全幅:1850mm
全高:1710mm
ホイールベース:2955mm
エンジン:V6 DOHC
排気量:3564cc
最高出力:258ps/6500rpm
最大トルク:35.0kg-m/2800rpm

背の高いSUVにありがちな不安感がまるでない

 今回試乗したV6モデルは、05年から加わった後発モデル。3.6リッターV6エンジンは、258馬力、トルク35kg-mを発生させる。このエンジンは5速ATと組み合わされ、変速ショックも少なく加速も非常にスムーズである。アイドリングはとても静かで、アクセルを少し煽ると軽々と動き出す。

 このV6エンジンは、さすがにV8エンジンほどの強烈な加速感は見せないが、アクセルを踏み込めばそれなりの加速感は味わわせてくれる。高速道路等では、一度巡航速度に達してしまえば、後は楽々運転できるだけの性能の持ち主である。

 SRXの乗り心地は非常に良く、ここでも洗練された上質感を味わえる。ベースがCTSだけに、サスペンション制御も巧みで、背の高いSUVにありがちな不安感はまったく感じない。ボディ剛性も非常に高く、現代の最新キャデラックに通じる作りの良さである。この旧型のSRXには、個人的にはSUVというよりは背の高いステーションワゴンのようなクルマという印象を持っており、かなり好みの1台である。

 ちなみに余談だが、このSRXの新型が09年から登場しているSRXクロスオーバーであり、正直印象がまるっきり変わっており、あちらはモロにSUVという感じである(まるで別の乗り物的な違いがある)。

今回取材したV6モデルは258ps、トルク35kg-mを発生させる。ちなみにV8モデルは、324ps、42.9kg-mとエスカレードに匹敵するパワーを発生させる。単なる移動にこだわるなら、V6でも十分なパワーである。

比較的質素に見えるのだが、全体的な質感が高いSRXのインパネ。各部の作りは格段の進歩を遂げている。

クロスオーバー的な車両であるから、荷室のスペースも広大。シートは分割可倒式。オプションでサードシートも選べたという。

大きさや迫力という言葉が似合う

 参考までにたまたま借り出した旧型エスカレードだった。だが乗ってみるといまさらながらにいろいろな発見があり、楽しい試乗だった。
 旧型キャデラックSRXの動力性能は、旧型ですら、ハッキリいってケチの付け所がない(もちろん経年変化はあるが)。だが、同時にエスカレードと乗り比べるといろんな部分が違っていて、その差がかなり面白かった。

 まずは「大きさ」。写真をみれば分かるが、大人と子供くらいの違いがある(笑)。それに「迫力」。アメ車を好む多くの読者がそう語る理由が、この両者を見ているとよく分かる。SRXには洗練された雰囲気はあっても、迫力なんて言葉はまったく似合わない。

 インテリアも、両者のコンセプトの違いが如実に現れていた。エスカレードは、ウッドとレザーで囲まれたある種応接間のようなバタ臭さで満たされた室内空間とコラムシフトの組合せ。シートは大柄で肉厚。さらにふっくら柔らかがキモだ。
 一方SRXは、クールでモダンな雰囲気にフロアシフトが組み合わされ、シートは欧州車的に硬い(慣れれば別に問題ないのだが)。

今となっても威光を放つこのマスクの影響力はかなり大きい。いまだに立派に見えるし、迫力がある。

SPEC:エスカレード
全長:5100mm
全幅:2040mm
全高:1950mm
ホイールベース:2946mm
エンジン:V8 OHV
排気量:5967cc
最高出力:350ps/5200rpm
最大トルク:52.3kg-m/4000rpm

いまだ古さをまったく感じさせず

 実際に乗り比べると、エスカレードのパワー感、SRXの小気味よさが目立つ。エスカレードは、大きく重いものを力でグイグイ引っ張っていく、アメ車ならではの感覚。多少前後のピンチングが大きく、左右のロール感があっても、「あ〜これがアメ車っだ」と胸を張れるし、もの凄く楽しい。それにいまだ古さを感じさせないのも、エスカレードの魅力である。

 新型は正直、最高だと思うが、仮に新型が買えないからといっても、悲観することは全くないと思う。

 余談だが、つい先日、お笑いのバナナマン日村がこの旧エスカレードに乗ってスタジオ入りしている姿をテレビで見たのだが、彼も最近かなり売れっ子になりそういう意味でのエスカレードなんだろうなと思ったのと同時に、旧型エスカレードでもかなりのハッタリが今でもきくんだなぁと正直思いましたね。

 ま、もちろん、最新のエスカレードに乗れればそれが一番いいに決まっているんでしょうが、旧型でもかなりの箔が付くって感じだったもんで(アメ車って、やっぱり高そうに見えるんだよな〜)。

 混雑した都会を軽快にすり抜けていく高級車としての魅力&資質を持った旧型SRX。見た目、乗り味、すべてにおいてまだまだ魅力が継続している旧型エスカレード。まるで異なるコンセプトを持った2台だが、キャデラックらしさという点においては、どちらも魅力的な存在であった。
 この「アート&サイエンス」以降に生まれたキャデラック製の中古SUVなら、現代でもまだまだ十分に通用するポテンシャルを秘めているのである。

エンジンは6リッターV8のOHV。最高出力は350ps/5200rpm、最大トルクは52.3kg-m/4000rpmというスペックを誇る、最強エンジンである。

この種のある意味応接間的雰囲気を持つインテリアのアメ車は、このクルマ以降、ほとんど絶滅したと言っても過言ではない。コラムシフトやブルガリウオッチが懐かしい。

サードシートがあるから荷室は当然狭い。でもそのサードシートが使えるからまったく問題はいらない。

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>> 新型キャデラックエスカレードの試乗記 を見る

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