更新日:2013.04.19
文/田中享(Tanaka Susumu) 写真/
仕事柄、知人からよくマイカー購入の相談を受けます。あんまり金のない友人の場合で多いのは「なんか安い下駄車ない?」というもの。これはもちろん中古車がターゲットです。新車の場合は、「1台買い替えようと思うんだが、何かオススメのクルマはあるかな?」とか。これは比較的お金持ちに多いパターン。ま、相手によって相談内容は千差万別なんですが、ここ数年増えたのが「プリウスとかハイブリッドカーって実際はどうなの?」というもの。つい最近も全然違う交友関係の2人から、ほとんど同じような相談を受けたんですが、これがちょっと面白いなと思ったので書いてみますね。
まずAさんの場合。
この方は女手一つで2人のお子さんを育てている30代後半の女性なんですが、現在の愛車は9年前に購入したというホンダ・ステップワゴン。新車で購入した車両で、購入時に「10万kmか10年か、どっちかまで乗り続けよう」と決めて買ったそうですが、10年を待たずに先に10万kmを突破。さらに、「購入当初は11km/1L前後だった燃費が、現在は8km/1L程度にまで落ちてきたし、半年後をメドに買い替えを考えているんだけど…」ということで、相談を受けました。
実は私に相談する前に、Aさんは仕事仲間から「プリウスがいいよ。静かだし、何と言っても燃費が良いし。条件によっては25km/1L以上、平均でも20km/1L以上走るから絶対に経済的だよ」と勧められたそうです。買い替えを考えた当初、彼女はフィットやヴィッツなどのコンパクトカーを考えていたらしいのですが、「そんなに経済的ならちょっと高くてもプリウスにした方がいいのかな?」と思い直して、私に相談したとのことでした。
結論から言うと、Aさんの質問に対する私の答えは「プリウス?止めた方がいいよ」でした。もちろん個人的な趣味で答えたわけではありません(笑)。ちゃんと根拠があってのアドバイスです。
で、以下は私とAさんとの会話、ほぼそのままです。
私:「約9年で走行10万kmってことは、Aさんの年間走行距離は1万kmそこそこってことだよね?」
A:「ん、だいたいそんなものかな」
私:「子供が大きくなってきて、これから飛躍的に走行距離が伸びたりする可能性ってある?」
A:「ないと思う。どちらかというと、学校の送り迎えで使う事がなくなるから、走行距離は減ると思う」
私:「了解。ところでAさん、ディーラーとかでプリウスや他の候補車の見積りって出してもらった?」
A:「インターネットで少し調べたけど、見積りまでは貰ってない。新車だし、何処で買っても値段は同じでしょ?」
私:「了解。で、今度のクルマもまた10年か10万kmかを目安に乗り続けるつもりかな?」
A:「うん、そのつもり」
私:「じゃぁ、ちょっと計算してみようか。実は新車の値段って販売店ごとにけっこう違うんだけど、今日は車両本体価格は定価で計算することにしよう。あと、ローンやリースの話を始めると色々と面倒になるから、車両は現金一括で購入する前提。燃料代はレギュラーガソリンで150円/1L。計算しやすくするために1年1万kmで10年間乗る場合で比べてみようかね」
■プリウス(S)※燃費は25km/1Lで計算
1/車両価格:2,320,000万円
2/燃料代:600,000円(60,000円/1年)
3/自動車税:195,000円(19,500円/1年)
4/任意保険:396,000円(39,600円/1年)
5/車検代:400,000円(100,000×4回)
合計(10年間の維持費)=3,911,000円
■ヴィツ(Fシエル)※燃費は16km/1Lで計算
1/車両価格:1,480,000万円
2/燃料代:937,500円(93,750円/1年)
3/自動車税:85,000円(8,500円/1年)
4/任意保険:426,600円(42,660円/1年)
5/車検代:400,000円(100,000×4回)
合計(10年間の維持費)=3,329,100円
3,911,000円ー3,329,100円=581,900円
※任意保険は7F等級、ゴールド免許、車両保険無など同条件で計算
※車検は減税などの条件や手数料などの条件が違うが同額で計算
※オイル交換などのメンテナンス費用も異なるが今回は割愛した
私:「計算してみれば一目瞭然。『経済的』とか『ランニングコスト』とかいう観点だけで比較するんだったら、間違いなくヴィッツの方がお得なのよ。年間で約6万円は決して小さくないでしょ?」
「しかも、今回の試算では車検代を同額にしてるけど、車検は間違いなくヴィッツの方が安いはずだし、オイル交換なんかの定期メンテナンスにかかる費用もヴィッツの方が安いから、最終的な差額はもっと広がると思うよ」
A:「そうなんだ…。こういう計算てしたことなかったけど、てっきりハイブリッドカーとかエコカーって普通のガソリン車と比べたら経済的なんだと思ってた」
私:「一番大きいのはやっぱり最初の車両本体価格だね。ハイブリッドカーってのは基本的に高いからさ。最初の車両本体価格の差額を燃費の良さで相殺するのは、普通のユーザーではまず無理だね。とくに今回の場合は車格(排気量)も違うしね」
「仮に同クラスのガソリン車と比べたとしても、3年や5年でコロコロとクルマを乗り換える人は、燃費が少々良くても結果的には支出は大して変わらないんだよ。俺みたいに年間3万km、4万kmと長距離を走る人間ならまた違うけどね」
A:「聞いて良かった。貴方に説明されてなかったら、たぶんプリウスを買ってたと思う。まだ車検までには少しあるから、もうちょっと考えてみるね」
というのがAさんの場合のお話です。
Aさんに限らずプリウスなどのハイブリッドカーに対して、「車両価格はちょっと高いけど、減税とか免税も大きいみたいだし、何といっても燃費がいいから結果的に安くつくはず」と思ってる人は多いみたいですね。 (⌒-⌒; )
また、私の周囲には「環境に優しいから」とか「エコカーだから」といった理由でハイブリッドカーやEVを選択した人は今のところいませんが、『エコ』という言葉についても「なんだかなぁ…」と思わずにはいられません。
例えば1台のクルマに10年、20年と乗り続けるのと、ハイブリッドだEVだとコロコロとクルマを乗り換えるのと、一体どっちが地球に優しいよ?と、思うんですよね。クルマを1台作るのに、どれだけの資源やエネルギーが使われるのか?とか、考えてしまうわけです。ハイブリッドカーの方がベーシックなガソリン車よりも部品点数も多そうだし、組み立て工程も多いはずですしね。ま、調べたわけじゃないから断定はできないんですが。(' ~`;)
ついでに言えば『グリーン化税制』とかも疑問なんですよね。燃費が良くて排出ガスが少ない低公害車の税率を下げるってのは一見悪くない様に感じますが、一定年数を経過した車両の税額を10%引き上げるとかは意味不明ですよね。減税対象の最新モデルよりも遥かに燃費の良い中古車なんていくらでもありますからね。大して燃費なんて良くない高級車が減税対象になってたりするし。(●`ε´●)
そもそも温室効果ガスや大気汚染物質の削減に本気で取り組むんなら、ガソリンや軽油などの燃料油に課税するのが筋でしょう。だいたい自動車税ってのは本来は財産税のはずなのに、財産としての価値が最も高い新車時に税負担が減税されて、減価償却が終って財産価値が認められなくなった古いクルマが増税されるって矛盾してるでしょ?
何処が『環境保護対策』? ただの『経済対策』じゃん!
って話ですよね。ヽ(*`Д´)ノ
と、いかん。なんか話が変な方向に逸れてしまった(笑)。ホントはもう1人のBさんの場合の解説もしたかったんですが、けっこう長くなったので、今回はここまで。またそのうち続きを書きたいと思います。
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