更新日:2012.04.13
文/石山英次 写真/古閑章郎
アメリカのマーケットにおいて過去、GMは数多くのSUVをラインナップしていた。キャデラックならエスカレード、同ESV、SRX、シボレーならサバーバン、タホ、ブレイザー、トレイルブレイザー、GMCならユーコン、同XL、エンボイ、ビュイックならレイニア、ランデヴー、ハマーならH1、H2、H3といったところか。その中で、ここで取り上げた3台は代表的なものといえる。特に中古車市場におていは、どれも常に売れ筋モデルであり、高い人気を誇る。
だが、その生い立ちはまったく異なるから面白い。トレイルブレイザーは新世代SUVの象徴的存在だったし、エスカレードは王道フルサイズ、そしてハマーH2は既存のパワートレーンを使った新たなデザインの提案だった(ハマーはGMが買収したカーメーカー、AMゼネラルのブランドをモチーフとする)。
そんな経緯を踏まえて見ると、まずはトレイルブレイザーの存在が際立つ。GM系SUVの中では、当時もっとも新しいテクノロジーを満載していたからだ。
たとえばそれは、フルサイズと同じボディオンフレームという構造を持ちながら高い剛性を持っていたり、新開発の直列6気筒ユニットを搭載する面からも感じ取れる。コルベットやキャデラックのセダン系で使われるハイドロフォーミング成形のフレームは、ハイスピード領域で好印象の走りを見せる。また、ツインカムとなる直6エンジンは、吹け上がりがスムーズでスポーツカーに近い感覚だった。あえて直列にしたGMの思惑は、ちゃんと達成できたのだ。
ちなみに、この6気筒はモジュラーエンジンで、直5、直4としても使用した。当時のピックアップ、シボレー コロラドやハマー H3は、これを搭載していた。その意味からもトレイルブレイザーが当時のGMの最先端であることはおわかりいただけるだろう。
この他では、通常乗用車に使われるラック&ピニオン式ステアリングシステムを採用するのも新しかった。トラック系とは明らかに異なる滑らかなフィールはだった。
さらに、ロングホイールベースの3列シートEXTは新しい選択肢を提案した(途中で生産終了となるが)。全長はほぼタホと変わらないが、その他のサイズで差別化が図られている。つまり、タホまではいらないという人へのニーズに応えたのだ。きっとこの辺は、他メーカーへの牽制だったのだろう。
かつてコンパクトとフルサイズの中間に、ダッジがデュランゴを投じて人気になったことがある。そのため、少しでもすき間を埋め、後続を断つという算段をとったのだ。
SPEC:04年型
全長:5100mm
全幅:2040mm
全高:1950mm
ホイールベース:2946mm
車両重量:2530kg
エンジン:V型8気筒OHV
排気量:5967cc
最高出力:350ps/5200rpm
最大トルク:52.3kg-m/4000rpm
価格:764万4000円(当時)
6リッターV8エンジンは、パワフルかつ存在感たっぷり。この後07年以降に登場する新型(現行型)は、V8エンジンに滑らかさまでをももたらした傑作品だが、この時代のエスカレードには、荒々しさが宿っている。
この時代のアメリカンSUVにしては、リンカーンナビゲーターの次にがんばっているインテリアだと思う。あの一世を風靡したブルガリ時計が懐かしい。
これを見ると一目瞭然だが、トレイルブレイザーの着座位置の低さがわかるだろう。そういう意味でも、これまでの時代のアメリカンSUVとはひと味違うのである。なので、一度乗ってみると良いかもしれない。その後エスカレードに乗ると、時代を彩った名SUVを経験することができるのだから。
これに対し、エスカレードはあくまでもフルサイズ系の王道型だった。シルバラードをベースとするタホやサバーバンの到達点といったところ。それを証明するのは当時搭載されていた6リッターV8エンジン。GM系ガソリンユニットの最高峰に位置するこのエンジンを使い、エスカレードは345馬力を発生させた。これがタホやサバーバンでは325馬力とデチューンされていたから一目瞭然。キャデラックというブランド力がそれを実現させたのだろう。
もちろん、装備やインテリアのデザインもシボレー系をゴージャスかつコンフォータブルに換えた。あのブルガリウオッチやキャデラック独自のゼブラノウッドがトリムに使われていたりする。
ちなみに、エスカレードと同じパワートレーンを採用したハマーH2との差別化はどうだったのか? その答えは先に挙げたように、新たなデザイントレンドの提案だった。軍用をほぼそのまま市販化したH1を、より日常的なものにリデザインしたのがコイツだ。
その点からすればまさに天才的な作品。イメージ通りに仕上がったボディを見て、このまま戦場に行っていると思う人も多数いただろう。ボンネットのグリップやホイールのインフレーターシステムはフェイクだが、見事に再現させていたのだ。また、インテリアも当時のレベルで考えれば、かなり独自性に富んだものだった。コックピットを連想させるインパネにL型のシフトノブ…。アメ車ファン以外の多くの人々を巻き込んだ、ちょっとしたブームを作ったほどだった。
SPEC:04年型LTZ
全長:4890mm
全幅:1900mm
全高:1850mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:2140kg
エンジン:直列6気筒DOHC
排気量:4157cc
最高出力:279ps/6000rpm
最大トルク:38.0kg-m/3600rpm
価格:426万3000円(当時)
直6エンジンは、吹け上がりとサウンドに違い見いだせる。まるでスポーツカーというと大袈裟かもしれないが、勢いはそれに近いものを感じる。荒々しい叫び声を上げるV8エンジンとはひと味違う、繊細なフィーリングの持ち主。
それ以前のV8系アメリカンSUVの質素な空間を見ていると、違いを出そうと、手を加えた感は見て取れる。ただ、これといって質感のものではない。フロント、リアともに快適な空間ではある。
それぞれをあえて一同に並べて、直接比較することで見えて来るものを取材したいと思っていたのだが、実際には、「あ〜、こういう時代もあったんだな」との懐かしさと「もうこういうSUVはでないだろうな」という寂しさを感じるはめに。
走り出して感じる第一印象で最もアメ車らしいのはエスカレードだ。タホやサバーバンの延長線上にある、いわゆるアメリカンSUVの王道といった感じがひしひしと伝わってくる。V8エンジンも非常にパワフルであり、居住性およびドライバーからの視界も良好だ。したがって日本の道路事情でも意外と飛ばせるクルマであることがよく分かった。
また、最も洗練されているのがトレイルブレイザーである。乗り心地や操作性が格段にスムーズかつ信頼性に富み、さらに速い。着座位置が他のSUVよりも低いため(新発見!)、安心して飛ばせる。直6エンジンに関しては、異論反論は多数あるかもしれないが、それを差し引いても抜群に完成度が高いと思う。
H2は、すべてが大きく慣れるまではかなりの違和感があり、ダッシュボードが高く視界を遮り、決してまともに運転できそうにない感じが(凄い物を運転している感)、逆に「迫力」もしくは「ファンな部分」として受け入れられるかもしれない。ある意味スーパーカーチックな一面だろう。
だが、H2の動力性能には不満な点がまったくなく、加速感および走行安定性は、非常に高い。エスカレードとのパワー数値の違いは感覚的な部分としては、ほとんど感じない。ただし、視界の悪さ等で慣れるまでにドライバーがその能力を試す気になれないのが、日本の道路事情では辛いところかもしれない。
一方、内装などの質感は、H2のそれが格段に高い。次にエスカレード、最後にトレイルブレイザーとなる。価格的な配慮があるのは当然だが、トレイルブレイザーの質感と他車2台とでは、まったく世界が違う(こうして比較してみると改めてその違いが明確になる)。エスカレードとH2は、ともに同じベースを使用したにもかかわらず、ここまでイメージが違うクルマになったのは、奇跡といえるかもしれない(恵まれた時代だった)。
ということで、この3台にあえて優劣をつけるなら、トレイルブレイザー、エスカレード、H2という順番になるか。トレイルブレイザーの先進性はそれ以降のGM系SUVの礎になったことは間違いないし、当時の6リッターV8エンジンは、エスカレードの350馬力に対し、H2は330馬力に留まっていたから(あくまでエスカレードが最上級)。
まぁこれは、あくまでもジャーナリスチックに検証した場合の結論。個人的な嗜好混ぜれば、少々異なる。確かにトレイルブレイザーはいいクルマだし、中古車をベースに仕上げればかなりおもしろいことになるのは間違いない。足を固め、ブレーキを強化し、吸排気をイジれば相当楽しくなるはずだ。
だがやっぱり、自分のガレージに納めたいのはエスカレード。中古車となってもまったく変わらぬ迫力もそうだが、実際の走りが軽快で楽しいし、ハイパワーエンジンがこれだけのボディをグイグイ引っ張る走りは特筆もの。まさにアメリカンSUVの真骨頂である。
だが、目立つことを最優先に考えるなら、ハマーH2もお勧めだ。ベースが同一だけに、購入車両の程度さえ間違えなければ厄介な弱点もなく、スーパーカーレベルとタメはれるインパクトをまだまだ与えることができるだろう。実際に、今まさに「H2が動いている(売れている)」と聞くだけに、同調してくれる方々が多くいるはずだ。
SPEC:05年型
全長:4830mm
全幅:2160mm
全高:2050mm
ホイールベース:3119mm
車両重量:2903kg
エンジン:V型8気筒OHV
排気量:5967cc
最高出力:330ps/5200rpm
最大トルク:50.5kg-m/4000rpm
価格:738〜840万円(当時)
エスカレードと同じ6リッターV8エンジンを搭載するが、若干のディチューンと車重の違いからか、加速力はエスカレードに劣る。だが、V8フィーリングは健在で、独特の車両感覚や独自性高いインテリアが、それを補うことで、魅力を担保している。
コックピットを思わせる独創的なインテリア。L型のシフトノブは多くのファンを魅了した。ただし、シート自体が大柄で、小柄な日本人の体格には合わないような気がするし、曲がるたびに体が左右に振られる(笑)。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES