更新日:2012.06.05
文/椙内洋輔 写真/クライスラー/ジャガー
荒野の中、地平線へと延びるハイウェイを疾走する白いチャレンジャーと突如現れるオープンのジャガーEタイプ。ジャガーの執拗な挑発を受けたチャレンジャーは、スロットルを全開にして、その挑戦を受けて立つ。
これは、1971年に公開された映画、「バニシングポイント」のワンシーンである(つい最近DVDで見た)。馴染みのバーで、「明日の朝までにカリフォルニアにたどり着けるか」を賭けた陸送屋のコワルスキーは、何かに取りつかれたかのように西へと走り出す。
主人公に肩入れする盲目の黒人DJをはじめ、間抜けで高慢な警官たち、はみ出し者のヒッピーなど、登場人物のすべてが当時の世相を表していたニューシネマの傑作。その中で、主人公の相棒役を担ったのが「ダッジ・チャレンジャー」であり、鼻持ちならない邪魔者に選ばれたのが、マスタングでもコルベットでもなく、「ジャガーEタイプ」だった。
いつの時代も、欧州製スポーツカーは小金持ち達のひとつのアイコンであり、アメリカン・スポーツにとっては、常日頃比較される、煩わしい相手だったに違いない。
そんな映画を見たからか、現代のチャレンジャーが欲しくてたまらない! それでちょっと調べて比較してみた(2010年モノで比較)。
今、ここに2台のマシンが対峙している。一台は、現代によみがえったマッスルカーの権化ダッジ・チャレンジャーSRT8。もう一台は、現代ジャガーを象徴する高級スポーツクーペジャガーXKだ。この2台を比較すれば、かつて銀幕でチェイスを繰り広げた2台の関係とあまりに酷似していて驚かされる。
チャレンジャーは、最高出力425hpの6.1リッターHEMIエンジンを搭載し、1.8tの体躯をものともせずに豪快に加速させる。
一方のジャガーXKは、チャレンジャーより100kgほど軽いボディでストリートを疾走。5リッターV8も最高出力385psと、侮れないアウトプットを誇る。さらに豪奢なインテリアや贅を尽くした装備の数々など、他車にはない魅力も併せ持つ。
チャレンジャーの2倍超というプライスを払える人にとって、ジャガーは魅惑の選択肢なのだ。
<チャレンジャーSRT8>
●全長×全幅×全高:5022×1923×1455ミリ
●ホイールベース:2946ミリ
●エンジン;V8 OHV
●排気量:6059cc
●パワー:425hp/6200rpm
●最大トルク:420lb-ft/4800rpm
<ジャガーXK>
●全長×全幅×全高:4790×1895×1320ミリ
●ホイールベース:2750ミリ
●エンジンV8 DOHC
●排気量:4999cc
●パワー:385ps/6500rpm
●最大トルク:52.5kg-m/3500rpm
ではチャレンジャーの持つ、ジャガーにはない魅力とはなんなのか?。
ひとつ確実に言えるのが、欧州高性能GTに匹敵するハイパワーを、その半値以下で堪能できるというコストパフォーマンスだろう。
しかしチャレンジャー最大の魅力は、そんなソロバン勘定で表せるものではない。フリークがこのクルマに魅せられる最大の理由。それはまさに、アウトローだけに許される「凄味」と「存在感」だ。
時代に媚びない大排気量のV8OHVや、空気抵抗など歯牙にもかけないワイルドなスタイリングは、ジープですらスラントノーズをまとう今日の公道において、あまりに強烈で異彩を放つ。そして「バニシング・ポイント」をはじめとした様々な映画や、クォーターマイルやストリートに残したエピソードの数々が、「チャレンジャーかくあるべし」という像をファンの心に刻んできたのだ。
いかに高級、高性能とはいえ、同ジャンルを見渡せば、ジャガーの「代わり」はいくらでも存在する。しかし、チャレンジャーのまとう反骨のイメージは、文字通り「挑戦者」しか持ち合わせていない。
本物のフリークにとって、このクルマを選ぶ理由などそれだけで十分なのかもしれない。
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