マイナーチェンジを行ったシボレー・カマロに試乗する事が出来たのでリポートしよう。
今回のマイナーチェンジによりエクステリアデザインが変更されたシボレー・カマロだが、これはルックス(見た目)を変えて販売促進に繋げるためだけの措置ではない。
フロントバンパー下部の開口部が大きくなったのは、フレッシュエアーをより多く取込むことでエンジンの冷却性を上げるためであり、細くシャープになったヘッドライトは結果的なデザインとも言える。
また、ボンネットの中心に新設された大型のエアスクープは、高速走行時のフロントのリフトを軽減し、直進安定性を向上させる役目を担っている。筆者自身、新型カマロのボンネット・スクープを広報写真で最初に見た際には「サード・カマロ後期のIROC-ZやZ-28の時と同じ、見た目だけのルーバーでしょ?」と思ったのだが、実は明確な理由があって設置されたものなのである。
さらにテールエンドに関しても、LED方式のテールランプばかりに目が行くが、実はバンパーやリアスポイラーの形状も、よりエアロダイナミクスを考慮したデザインに変更されているのだ。
今回のフロントマスクの変更を見てニッサンのS14シルビアのマイナーチェンジを連想したオールドファンも多いと思う。
C7コルベットに近いデザインだったテールランプは、シンプルなデザインに変更された。
2014年モデルでのマイナーチェンジはフロントマスクとテールランプを中心としたエクステリアデザインであるのは間違いないが、これは実はルックスだけの変更ではない。
今回のマイナーチェンジで最も大きな変更を受けたのは、実はV6エンジンを搭載したクーペ『LT RS』である。というのも、エクステリアのデザイン変更部分は現在日本で発売中の3モデル共通だが、LT RSのみ6速ATのギア比が変更されたのだ。
現在日本に正規輸入されている現行5代目カマロに搭載されるミッションは6速ATのみで、これは2009年の発売当初から変わっていない。V8エンジンを搭載するSS RSとV6エンジンを搭載するLT RSでは、同じ6速ATでも当初からギア比は異なっていたが、途中で追加されたコンバーチブルとLT RSはファイナルも各ギア比も全く同じだった。しかし、今回のマイナーチェンジでは、コンバーチブルの方は従来のままの据え置きで、LT RSのみ変更となったのである。
正規輸入モデルのATの変速比の違いは下記の通り。
コンバーチブル / LT RS / SS RS
第1速 4.065 / 4.449 / 4.030
第2速 2.371 / 2.908 / 2.360
第3速 1.551 / 1.893 / 1.530
第4速 1.157 / 1.446 / 1.150
第5速 0.853 / 1.000 / 0.850
第6速 0.674 / 0.742 / 0.670
後退 3.200 / 2.871 / 3.060
最終減速比 3.270 / 3.720 / 3.270
数字を見れば一目瞭然。LT RS(V6クーペ)のみが5速直結で、オーバードライブは6速のみ。つまりギアがクロスしているのが分かる。これはどういう事かと言うと、要するにLT RSのATが最もスポーティな味付けとなっていると言う事だ。
パワーもトルクも全く異なるV8エンジンを搭載したSS RSと比べても仕方ないのだが、少なくもと同じエンジンを搭載していても、クーペとコンバーチブルでは明らかに走行性能に違いが出るのは明白で、実際に今回の試乗でもLT RSの走行性能の変化は体感出来た。
現行5代目カマロのインパネ周辺のデザインは初代カマロを彷彿とさせる特徴のあるデザインとなっている。2012年のマイナーチェンジでインストルメントパネルやステアリングホイールのデザインが変更された。
シートは肉厚で座り心地が良いが、サポート性という意味ではいかにもGTカーという感じ。2012年のマイナーチェンジで助手席にもパワーシートが装備されるようになった。
ホイールは前後とも20インチで、タイヤサイズはLT RS、SS RS、コンバーチブル共通で、F:245/45R20、R:R275/40R20となっている。
現行5代目カマロのV6エンジンは、2012年にマイナーチェンジを受けている。このマイナーチェンジでは、『LFX』と呼ばれるエンジン型式こそ変わっていないが、シリンダーヘッドの変更などで、約10kgもエンジン本体を軽量化。最大出力は308psから327psに大きく向上し、最大トルクも37.7kg-mから38.4kg-mに微増した。
筆者は現行5代目カマロがデビューした際、日本に最初に輸入されたV6のクーペに試乗した経験があるのだが、その際にV6モデルの進化に驚いた記憶がある。先代となるフォースカマロと比較した場合、V6エンジンを搭載したベーシックなクーペに関しては、ほとんど別モノと言えるくらい走行性能が激変していたのである。
しかし、2012年のエンジンのマイナーチェンジ直後に試乗した際には、スペックが向上したにも関らず「少し良くなったかな?」と感じた程度で、それほど大きな衝撃は受けなかった。ところが今回、新たにミッションに変更を受けたV6クーペに試乗して、約4年前に初めて5代目カマロに試乗した時に近い衝撃を受けた。
具体的には低〜中速域でのトルク感がマイナーチェンジ前よりも明らかにアップしており、アクセルを踏み込んでキックダウンしなくてもスッと加速出来るようになったのが大きい。また、ステアリングのタップシフトを使ってギアをアップダウンした際の反応も以前より良くなっているように感じた。エンジン出力自体はマイナーチェンジ前と変わっていないので、これらは明らかにギアがクロスされた事が影響していると思われる。
現行5代目カマロに搭載されるV型6気筒DOHC『LFX』ユニットは、最高出力327PS/6,800rpm、最大トルク38.4kg-m/4,800rpmを発揮する。2012年型までの初期モデルのスペックは最高出力308PS/6,400rpm、最大トルク37.7kg-m/5,200rpm。
マフラーの音質はジェントル。低回転域ではスポーティカーとは思えないほど静かだが、回転を上げていくと音質が高くなり、それなりに雰囲気のあるエキゾーストノートとなる。
これまでの筆者のシボレー・カマロというクルマに対する個人的な見解は「スタイル優先で雰囲気を楽しみたいのであればV6。モダンマッスルらしい豪快な走りを楽しみたいのであればV8」というものだったのだが、今回の試乗で少し考えを修正した。
もちろん絶対的なパワーという観点で言えばV6はV8に及ばないし、アメリカンマッスルらしい豪快な走行フィールを楽しめるという意味で、6.2リッターV8を搭載したSS RSは非常に魅力的なモデルであるのは間違いない。しかし、車両本体価格、自動車税やガソリン代といった維持費、走行性能という要素が高度にバランスされた現行LT RSは、総合力ではSS RSを上回っているのではないか?と思えるくらい、今度のLT RSの試乗は爽快だったのである。
クルマに求める性能や機能というのは人それぞれである。「V8以外のアメ車に存在価値はない」と思う人もいれば「エンジンなんてどうでもいい」という人もいるだろう。しかし、もしも「V6は遅い」という先入観を持っている人がいれば、ぜひ現行カマロのLT RSに試乗してみてもらいたい。最新のGMのV6エンジンを搭載したカマロの実力を体感すれば、V6モデルに対する認識もきっと変わると思う。
ステアリングの左右に装着されたタップシフトを操作する事で素早いシフトチェンジが行える。セミオートマではなく、あくまでATのセレクターレバーではあるのだが、反応が速いのでスポーツ走行にも十分に使えるレベルにある。
6ATのギア比を変える事で、同じV6エンジンを搭載していても、LT RSとコンバーチブルでは味付けにはっきりした違いが出たと思う。ノンビリと高速クルーズを楽しむならコンバーチブル。スポーティーに走りたいのであればLT RSがお勧めだ。
今回取材にご協力いただいたBUBU光岡グループでは、カマロだけでなく新型CTSなどの試乗車も多数用意されており、近日中には新型C7コルベットの試乗車も用意される。
いかにもアメリカンスポーツカーらしいV型8気筒OHVの『L99』を搭載したSS RSは確かに魅力的。しかし、あらゆる要素が高次元でバランスされた現行LT RSは、歴代カマロの中で初めて筆者に「V6でもいいかな?」と思わせたモデルとなった。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES