エンジンオイルには、金属部品を滑らかに動かす「潤滑作用」、高温化した部分の熱を冷ます「冷却作用」、金属摩耗粉(スラッジ)などの異物を洗い流す「清浄作用」、ピストンとシリンダーの隙間をふさぐ「密封作用」、さらに「防錆作用」等々、その役割を果たしつつ次第に劣化していくために必ず交換しなければならず、各メーカーごとに交換基準および使用オイルの粘数がある程度決まっている。
ただし、使用すべきエンジンオイルの粘数は決まっていても、使用するオイルメーカーまでが指定されているわけではないので、オイルのグレードや粘数を守りさえすれば、メーカー純正オイルと言われるものやその他量販店で売られているオイル、もしくは各ショップが使用するスペシャルオイルを入れてもまったく問題ない。
だが。近年ではこのオイル交換自体が軽視されている風潮があるということで、「定期的に交換する派」と「まったく気にしない派」の両極端に分かれるらしく、しない派の中には「オイル交換の有無で100%故障するわけがない。だからオイルチェックランプが点灯するまで交換しない」という意見があるそうなのである。
まあ確かに、気にしない派の意見もわからないではない。筆者もたまに「1月に交換しなきゃ」と思いつつも、4月くらいまで引っ張って交換しないこともあったし、それでトラブルが起こったりはまったくない。だがその間は「交換していない」罪悪感的な思いが常に頭の中をよぎり、あまり良い気分でなかったことは事実である。
今回取材したレーストラックでは、愛車を維持するコツとして「夏前のオイル交換」を提唱しているという。代車にしているK1500の夏前オイル交換時に、その理由を聞いた。
「ここ数年の日本の夏は、猛暑というレベルではなく酷暑といってもいい。そんな状態だからこそ、クルマは熱による負荷が増し、オイルにも負担が増しています。ですから、まずは夏本番前にオイル交換し、可能であれば通常よりもオイルのAPI規格を上げてやり、夏バテ状態になりにくいような対策を施してやって欲しいという考えからの提案です」
夏前にオイル交換をすることで、クリーンな状態で夏を迎え、夏場の負荷に対応する。寿命寸前の汚れたオイルで夏を迎えるのは、特に大排気量エンジンだけに厳しいだろう。
そしてAPI規格とはオイルの品質の規格であり、代表的なAPI規格(アメリカ石油協会「American Petroleum Institute」が定めたエンジンオイルの規格)では、「SA」から「SN」までのグレード分けがなされており(「SA」「SB」「SC」「SD」「SE」「SF」「SG」「SH」「SJ」「SL」「SM」「SN」、左から右に行くに連れて高品質)、例えば、「SM」は「SL」に対して浄化性能・耐久性能、耐熱性、耐磨耗性に優れている、といったような違いが存在するから、普段「SL」規格のオイルを入れているなら、夏前には「SN」といった最高グレード規格のオイルを入れてやり、夏場の熱対策にするという意味である。
近年のアメ車は、想像を超えるほど高性能になっているし、純正ノーマルで400~700hpを発生させるエンジンさえ多数存在する。だが、そういった高性能エンジンは、パワーは十分に出せるように進化はしているが、基本、エンジン内部の冷却等はオイルに頼ったままである。すなわち、どんなに高性能になろうとも、「エンジンオイルの交換は必須」ということである。
「オイル交換に関しては、90年代のC1500でも、2019年のエスカレードでも同じ理屈ですし、必須です」
であるならば、日本の季節において、アメ車にとって最大の難関となる夏場を前にオイル交換をすることは極めて理想的だと思うし、夏前、たとえば7月と仮定したとして、この7月を基準に、年2回とか年3回といったオイル交換の基準を作るのも、間違っていないと思うのである。
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