更新日:2012.04.06
文/石山英次 写真/古閑章郎
「ラグジュアリ〜エスユ〜ヴィ〜? そんなチャラチャラしたもん乗れるかぁー。SUVってのは使い倒してナンボなんじゃー……」
なんて主張する諸兄も読者の中にはいるだろう。かくいうワタクシもかつてはその一員。20インチのホイールで砂浜は走れん! と時代の波に必死で抵抗しておりましたね…。
それはともかく、SUV本来の魅力は多様性だということは間違いない。人がたくさん乗れて荷物がたくさん積めて、路面の状況を問わず大きなエンジンで楽チンに走れるのが最大の特徴。よって、プライベートにビジネスにと広く使われてきた。
そしてそれを代表するのがシボレーサバーバンだった。早くから9名乗車を可能としたコイツは、かつて「砂漠を走るキャデラック」と形容されたほど。それくらい唯一無二の存在だった。もちろん、エスカレードなんか生まれるずっと前の話である。
そしてそのフォード版が、エクスペディションやエクスカージョン。日本にいてはイメージできないかもしれないが、フォードのフルサイズSUVは、アメリカではシボレーよりも販売台数を稼ぐ人気モデルであった(現在においても)。
で、タホにキャデラックエスカレード、サバーバンに同エスカレードESVにリンカーンナビゲーターといったラグジュアリーモデルが用意されるように、現在のSUVはひと言ではくくれないほど複雑。たとえ同じシャシーフレームを使っていても、ラグジュアリー系と既存の質実剛健系? ラインナップでは、マーケットからして異なる。
実際の話、SUV本来の多様性を活かした使い方をするには、質実剛健系がずっと買い易い。豪華装備のラグジュアリーSUVじゃ、一日中潮風の吹きまくる海岸線のパーキングには置いておけないでしょう〜。波が良かったらなかなか海からあがれないでしょ?
それが、サバーバンやエクスペディション(エクスカージョンはデカ過ぎて乗っていく場所が限られるかも)なら、例えそんな野ざらし状態にしてもOKだろう。家に帰ってからしっかり水洗いしてやれば、なんの心配もいらない。ホースを使ってバシャっとね。もしかしたら逆に少しくらいサビでも出てきた方が、カッコ良く見えてきたりする。使い倒してるボディに、タフなオーナー像が思い浮かぶかも……たぶん。
ちなみに、この当時のエクスペディションとナビゲーターのグレードを比較すると、ナビゲーターがひとつのエンジン、ふたつのグレード、ふたつの駆動方式に対し、エクスペディションはグレードだけでもなんと6種類! 下からXLS/XLT/XLTスポーツ/エディバウアー/リミテッド/キングランチといったネーミングの面々である。ランチはLUNCHでなく、RANCHね。
これだけでも、なんでも付いてるラグジュアリーSUVとは違うのだが、さらにコイツはたくさんのパッケージと細かいオプションが選べる(必要な装備だけを選べる)。これも実用性重視の賜物といえよう。種類はメチャメチャ豊富だ。
といったことからも理解していただけると思うが、SUVを買う選択肢はじつに様々で、ラグジュアリーSUVだけが正解ではない。要するに、そいつに乗ってナニをするかがカンジンなのだ。
文字通り、週末のパーティやクラブイベントに出かけるならラグジュアリー系に勝るモノはない。が、海にサーフィンしに行ったり山にスノボーしに行くなら質実剛健使い倒し系に限る。コイツのステアリングを握ってロングドライブをすれば、そのタフさにただただ感激するだろう。距離が長くなればなるほど、疲れないから不思議だ。これぞまさに、北米大陸を移動するクルーザー。アメリカの風土から生まれた超アメリカンビークルである。
エクスペディションは、97年に登場し03年に紹介モデルに生まれ変わっている。ボディコンストラクション&サスペンションは完全な新設計となり、足回りは前後ダブルウイッシュボーン、リアには独立懸架を採用した初のフルサイズSUVである。
で、コイツの凄いところは、あのナビゲーターのベースモデルであるところ。こんなこと言ったら失礼かもしれないが、ナビゲーターはエクスペディションのお化粧直し版(?)。そんなクルマが、200万円そこそこのプライスで買えるのだからこれ以上の歓びはない…(中古だが)。ちなみにナビゲーターには、エアサスが装着されているが、エクスペディションはショックアブソーバー&コイルサスペンション。考えようによっては、高級感あるエアサスの乗り味はないが、トラブルを避け、メンテナンスフィーが安く済む利点がある。余談だが。
エクスペディションは最新の国産SUVや欧州SUVにはない、ちょっと無骨な作り。しかも頑丈すぎるくらいに頑丈。そして大きく重いボディを、大きなエンジンで勢いよく走らせる醍醐味。非常に効率悪そうで、環境にも絶対悪いはずだけど(笑)、乗ると思わず「楽しい」と呟いてしまう、あの感覚。メカニカルな部分に神秘性など微塵もなく、ただただ豪快なフィーリング。でもそこに感動すら覚えてしまう…。
知名度でいえば、日本においてはほとんどないも同然(かも)。ちょっとしかアメ車を知らない人にはまったく見向きもされないだろう。しかし、それでいいと思う。本当にアメ車が好きな方が行く着く終着点ともいえるから、誰にでもは勧められない…。そういう意味では、乗りこなすことのできる人にだけ使ってもらいたいし、そんな人が使えば、エクスペディションのカッコ良さは、より際立つはずだ。
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