ダッジというブランドネームとヒストリー、そしてデザイン&エンジンなどが醸し出す迫力等が伴って、熱狂的なファン層を持つダッジラムトラック。中でも SRTシリーズは、2004年から2006年までの3年間存在した超ハイスペックなマシンであり、世界中のスーパーカー・オーナーをも虜にしているという。感覚としては「荷台のついたバイパー」が相応しく、エンジン、ミッション、デフといった主要メカには、バイパーのものをそのまま流用しているのである。
エンジンは8.3リッター V10 OHV。パワーは510HP、最大トルクは525lb-ft。当時レギュラー(シングル)キャブは6速MTのみの設定であり、逆にクワッドキャブは4速ATのみとなっていた。ホイールは22インチで、ブレーキはブレンボ化されるなど、ハイスペックの名に恥じない強化品が各部に装備されていたのである。
今回取材した05年型ダッジラムSRT-10コメモラティブ・エディションは、限定モデル/イエローフィーバーに次ぐ限定モデルになり、イエローフィーバーが500台限定であったのに対し、コメモラティブ・エディションは200台限定とかなり希少。ホワイトのボディにメタリックブルーのレーシングストライプが最大の特徴であり、インテリアにもシートやシフトノブ、ステアリングなどがブルーのステッチでコーディネートされている。取材車両は、新車登録の約29000マイル走行。日本に3台存在するうちの1台であるという。
ドアを開け、シートに座ってみる。シートはレザーとアルカンターラのツートーンコーディネートだ。トラックには珍しい深めのバケットシートで、かなり硬派な印象である。シートを合わせて、各部を動かしてみる。クラッチはズッシリ重い。とはいえ国産GTカーのクラッチ操作が可能なら、こちらも十分操作可能な範囲の重さではある。
インテリア全体の印象は、普通のラムである。ただし、メーター周りがバイパー譲りのパーツで構成されているためか、走り出すとバイパーを運転している気になれる。何しろエンジンがバイパーである。そのサウンドはバイパーそのものであるから、何とも刺激的なのだ。だが、着座位置はトラックである(高いということ)。さらにシフトレバーはハースト製だが、ノブは長くストロークもバイパーのようなクイックな感じではない。だからこそ、しばらく走れば慣れも出てきてラムトラックだという現実を知ることにはなる。
何度も言うが着座位置はトラックである。だかこそ、その加速感たるや、バイパーの比ではない。例えて言うなら、重たい物体を強引に走らせる感覚は、都バスの運転手がすっ飛んでいく感覚に近いかもしれない。だから戸惑う。バイパーのような低い姿勢での加速とは目線が異なるから、余計に強烈な感じがするのだ。足回りは、普通に街中を走る程度では非常にクイックに感じる。ロール感もなく安楽な室内空間とは真逆のタイトな乗り味を提供してくれる。だが、高橋氏いわく、首都高をちょっと激しく走ろうとすれば、街中では感じられないロール感や重さが感じられ、さらにボディの大きさが車線の感覚を狭くさせ、視界の高さも相まって、「手を加えたい感」が強くなるという。
だがそのアンバランス感が面白いと思う。安易な言葉だが、「アメ車っぽい」。じゃじゃ馬な感じをトラックで演出しているところもそうだが、イマドキのクルマには無い感じがいっぱいある。それに、好みに応じて少しずつ手を加える感覚が残っているところも、まさしくアメ車である。
確かに激しい走りをすれば、トラックとしての限界も見えて来るかもしれないが、正直われわれ一般ドライバーのレベルでは、ノーマルでも十分楽しめると試乗して思った。というか、楽しすぎる。何よりこの「特別感」が嬉しいし、これなら週に1度家の近所を走るだけでも所有したい。感覚としては、まさにスーパーカーを所有する感じに近いのではないか。個人的にはフェラーリよりもずっと気を遣わず乗り回せるし、オーラがあって好みだった。
2、3日借り切って落ち着いて長距離試乗でもすればこのクルマの本当の良さ悪さがもっと分かるかもしれない。だが、たかだか3時間程度の取材ではこのクルマの真の姿を知ることは絶対にできないだろう、そのくらい奥が深いクルマであった(このくらいの試乗だと、良いところしか目につかなかったのが残念!)。けどノーマルのカマロV6クーペの新車が買える金額でコイツが手に入るというなら、間違いなくこのラムを手に入れるだろう。そのくらい刺激的なアメ車だった。
エンジンスタートの儀式ですね
普通に街中を走っています
283,800円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
183,250円
AUDIO&VISUAL
あとづけ屋
272,800円
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あとづけ屋
3,553円
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6DEGREES