TEST RIDE

[試乗記]

初代ダッジバイパーのデビュー10年後に登場

クライスラー プロウラー (CHRYSLER PROWLER)

クライスラーの勢いを感じさせた時代の作品

1998年デビューしたプリムスプロウラーは、コルベットやバイパー等のスポーツカーとは一線を画したスポーツマシンとして、全米中のクルマ好きを一瞬にして虜にしたのである。

更新日:2014.12.22

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/BUBU / ミツオカ TEL  [ホームページ] [詳細情報]
     BUBU横浜 TEL 045-923-0077 [ホームページ] [詳細情報]

純然たるホッドロッドマシン

 1993年、デトロイトショーにて1台のコンセプトカーが発表された。その名もプリムスハウラー。一瞬誰がも目を疑う、そのボディにはサイクルフェンダーが備わっていた。しかもロードスターボディでシャシーはアルミスペースフレームの専用もの。

 この時点でまさか市販されるとは誰も予想しなかったはずだが、人気は瞬く間に広がり5年後の1998年、ダイムラーベンツとの合併後にダイムラークライスラーとなった一部門のプリムスブランドから市販されることになったのである。その名もプリムスプロウラー。ちなみに初代ダッジバイパーがデビューして10年後のことである。

 奇跡的にもコンセプトカーがそのまま実現したような風貌には、安全装備としてフロントバンパーが追加され、角ばったリアデザインは丸みを帯びたリアテールへとリデザインされたが、市販型プロウラーの完成度は高く、コンセプトモデルから逆により一層洗練されたデザイン&雰囲気として、かつ純然たるホッドロッドマシンとして、またコルベットやバイパー等のスポーツカーとは一線を画したスポーツマシンとして、全米中のクルマ好きを一瞬にして虜にしたのである。

 全長×全幅×全高=4199×1943×1293ミリという数字ほど大きさを感じさせないボディは、フロントマスク先端が異様に絞り込まれた独特のボディ+屋根のないロードスター。シャシーはアルミスペースフレームを有したFR駆動の専用設計。そしてサイクルフェンダー下には、フロント17インチ、リア20インチという前後異形サイズを装着することで、前屈みの前傾姿勢を作り上げたのである。

 このボディ&シャシーに搭載されたエンジンは、3.5リッターV6SOHCエンジン+4速AT。このエンジンはもともと横置きFF用として使用されていたものだが、FR用の縦置きに改良。初期には214hpを発生するに至ったが、改良を加えることで最終モデルでは253hpまでアップしている。

1993のデトロイトショーに登場したコンセプトカー。プリウスハウラー。独特なボディデザイン、サイクルフェンダー等、斬新すぎて一度見たら忘れる事のないクルマだった。何よりアメリカンホッドロッドを思わせるイメージに多くのファンが飛びついた。

まさかと誰もが疑った市販化。1998年、プリムスブランドから発売が開始されたプロウラーは、コンセプトカーをベースに若干の変更がなされたが、基本コンセプトカーのままのデザインで登場。

一番の大きな変化は、リアデザインだったが、コンセプトカーよりもデザイン的に洗練された部分が多く、市販化においては逆に評価が高まった。

全長×全幅×全高=4199×1943×1293ミリ、ホイールベース=2878ミリのスペックから予想されほど大きさは感じさせない。逆に軽量感溢れるスポーティな走りに驚くはず。

5年間の限定生産の予定だったが…

 この性能で当時0-400m/hが14.9秒、最高速が230km/hを超えたというから、そのパフォーマンスぶりが想像できるはずだ。ちなみに初年度生産台数はわずか120台。ボディカラーは当初11色あったと言われているから、相当気合の入ったセールスが行われたのだろう。

 全米中を湧かせたこのプロウラーは、じつは発売当初から5年間の限定生産(1998〜2003年まで)というシナリオだった。

 それも2004年からクライスラーがメルセデスベンツのメカニズムを使用したロードスタークーペ「クロスファイア」を発売することが決まっていたからである(プロウラーは、クロスファイアの試験的作品だったったと思われる部分が多々あったと言われている)。

 ところが、「プリムス」ブランドが消滅してしまい予定よりも1年早い2002年に生産終了を余儀なくされた。

 その結果、販売台数総計は1万1479台を記録したに留まった。ちなみに、2001年まではプリムスプロウラーとして発売されていたが、プリムスブランドの消滅により、以降はクライスラープロウラーとしての販売されたのである。

 したがってプロウラーには「プリムス」「クライスラー」二つのブランドネームが存在する。かつ2001年のトータルプロダクション3142台のうち、1408台がプリムス 、1734台がクライスラーとなっている。

フロントマスク先端が異様に絞り込まれた独特のボディ+屋根のないロードスター。グリル奥には、バッテリーが収納されている。

シャシーはアルミスペースフレームを有したFR駆動の専用設計。サイクルフェンダー下には、フロント17インチ、リア20インチという前後異形サイズのタイヤを装着している。

搭載されるエンジンは、3.5リッターV6 SOHCエンジン。デビュー当初は214hpだったが、年々改良され最終モデルでは253hpまでアップしている。それでも車重1287kgには十分な数字であり、アメ車にありがちな暴力的なパワーは感じずとも、軽量感溢れたスポーティな走りが可能である。

スーパーカー級のオーラ

 取材車は2001年型。しかも「マルホランドエディション」と呼ばれる特別車。ミッドナイトブルーパールのボディカラーにスカイブルーのピンストライプが入り、ダークブルーの幌を備えた瀟洒な1台。

 まるで昆虫のようなキワドいフロントマスクにサイクルフェンダーとリアの大型オーバーフェンダーが醸し出すオーラは超一流の代物。正直、見かけのオーラだけで言えば、スーパーカー級と言っても過言ではない。かつ、2001年型と言えばすでに13年前の個体だが、プロウラー自体に古臭さ、旧車的な雰囲気がまったくないのは、正直驚いた。すでにデビュー時点で15年くらい先を行っていたデザインだったのだろう。

 全米を震撼させた生粋のホッドロッドマシンという触れ込みだっただけに、見た目のインパクトは相当なものだ。いわゆる「アメ車」がもたらすおおらかな雰囲気などは一切なく、どちらかというとサーキットやオーバルコース等で、出走順を待つレーシングマシンさながらの緊張感がみなぎっている。

 シートはもちろんバケットタイプであるが、この手のクルマにしては乗降性は格段にいい(屋根がない分、障害がないからだが)。ダッシュパネルには、凝った造りの5連メーターが並び(電圧、油圧、スピード、燃料、水温)、タコメーターのみ別途ステアリングポストに専用設置されている。

 これだけの雰囲気や装備を感じれば、さぞかしスパルタンな乗り味を想像するが、果たして…。シートに座りいざ出発。

 出だしはかなりの緊張感だったが、走り出すとサイクルフェンダーはフロント位置の距離感が掴みやすく、非常に運転しやすいことがわかり、逆にリアの超オーバーフェンダーは、邪魔以外の何者でもなく(サイドミラーあまり役に立たず)、高速料金所などの入り口で右に寄るのがかなり怖い。だが驚いたことに、このプロウラー、実際には非常に穏やかなクルマだったのだ。

 ステアリングの切れ角やサスペンションの硬さ、そしてエンジンのパワー、そういった一連の挙動は、いわゆる「スポーツカー」そのもだが、見た目全体が醸し出すホッドロッドマシンとはかなりかけ離れたものだった。

当時のアメ車のレベルで言えば非常に質の高かったインテリア。レザー張りかつプラスティックの質感も安物っぽさは微塵も感じさせない。ここら辺はダイムラーの力添えがあったのかもしれない。

メーターは、センターコンソールに配置した5連メーター。タコメーターはステアリングポストに装備されているから、ドライバーはタコメーターのみを見てドライビングに集中できる環境が整っている。それにしても、こういった雰囲気作りは非常に上手い。

シートは、レザー張りのバケットタイプ。レカロ等のフルバケットシートも似合いそうだが、心地よくクルージングするならホールド製と質感とがマッチするこの程度が良いのかもしれない。

いまだ古さを感じさせないミントコンディション

 いわゆるユーノスロードスターやケータハムスーパー7のようなバキバキのスポーツカーというよりは、感覚的にはコルベットのコンバーチブルのような存在。ただし、車重が1300キロにも満たないことによる動きのダイレクト感があるから、軽快感を伴ったそれは想像しうるどんなアメ車にも似ていない。

 とはいえ、全体的な乗り心地などは非常に穏やかで、路面からのアタリを覚悟していたものだが、実際にはそういった衝撃などとは無縁の存在であり、ある意味どんなレベルのドライバーにも楽しさを与えてくれるフレンドリーな存在だった。

 ただし、3.5リッターV6SOHCエンジンの253hpが醸し出す体感スピードは凄まじく、またスピードメーターの表示とは異なる風の巻き込みもダントツなので、そういった別の意味での覚悟が必要になることは付け加えておこう。逆に街中速度で十分楽しめるだけに、ちょい乗りで使うのもいいかもしれない。

 いまだ古さをまったく感じさせない唯一無二のデザインとロードスター的な走り味は、このクルマ特有のものであり、真冬のドライブは痛快極まるものだった。

 全米では、このクルマに資産価値の高さを感じたからか、デビュー当時に投資目的として手に入れた方も多くいたのだろう。こうした6000キロ走行しかしていないミントコンディションのプロウラーが今まだ存在していることが何よりの証拠である。

 BUBUのBCDは、本国において個人的な買取りを行うことも多く、実際にオーナー宅に出向き、クルマを目の前で確認し売買交渉をすることで、程度抜群の中古車を仕入れるという仕入れ方法を実施しており、ガレージで眠っていたデッドストック的な中古車並行を日本に持ち込むことを可能にしているのである。

 かつプロウラーは、ダイムラークライスラー作の1台であるからクオリティはいわずもがなであり、安心感の高い中古車としてまだまだ十分に楽しむことが可能なのである。

このフロントマスクのデザインこそがこのクルマの真骨頂。

ハードにも軟派にも応えてくれる走りは、さすがアメリカン。個人的には、日常的な晴れクルマとして毎日使い切りたいと考える。

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