更新日:2016.02.22
文/椙内洋輔 写真/トヨタ自動車
昨年のセマショーに出展されたシエナベースのチューニングカー。その名もシエナRチューンコンセプト。トヨタは、このRチューンコンセプトをサーキットに持ち込み、カマロSSV8とラップタイム競争をさせていた。
ノーマルシエナとカマロSSV8とではまったく勝ち目のないことは誰でもわかるだろうが、ボディ内装を取り外し、ロールバーを入れ、サスペンションやシートを変更するなどして仕上がったRチューンとなら予想だにしないことが起こるのである。そう、見事カマロSSV8に勝ったのである。
シエナRチューンの詳細を説明すると、ベースはシエナSE。カーボンフードを装備し、ホイールはエンケイの18インチRPF1ホイールにニットーNT-01タイヤの組み合わせ。またメッシュグリルにサイドスカート等のエアロを若干の変更。加えて内装取り外しにバケットシート、ロールケージにTRDシフターを装備している。これらによる軽量化は300kgを越えている。
ピックアップトラックでレースをするお国柄である。まさにレーシングカーを作るようなチューニングをシエナに与えたわけである。
搭載されるエンジンは3.5リッターV6。コールドエアインテークにキャタバックエキゾーストシステムを装備し、6速ATを介してパワーを伝達する。トヨタによれば40hp程度のパワーアップがなされているという。
一方足回りは、調整機能付きのコイルオーバーサスペンションにレーシングコイルスプリングの組み合わせ。プラスしてアッパーキャンバープレートとリアハイト調整機能をつけ、オリジナルのLSD、レーシングビッグブレーキ、ライトウエイトバッテリー等、まさにサーキットを走るためのコンプリートマシンと化している。
で、こうすることで見事シエナRチューンはカマロSSV8をも越えるサーキットラップタイムを実現したのであるのだが、なぜトヨタはこうしたマシンを製作したのであろうか?
じつはトヨタは密かに調査をしており、スポーティなミニバンの市場での可能性を探っていたのである。それが証拠にシエナにおけるグレード「SE」の登場はある意味実験でもあった。スポーティな出で立ちに若干固めのサスペンションを備えたスポーティグレードが果たしてどう評価されるのか?
しかし見事成功し、北米におけるミニバン人気の後押しを実現したのである。実際、昨年アメリカで販売された13万台にもおよぶトヨタ製ミニバンのうち、10%がシエナSEだった。トヨタはここにまだ市場があると考えているのであろう。
今回試乗が許されたSチューンは、上記のRチューンほどチューニングされているわけではない。
まずベースが4WDである(だから重い)。インテリアもそのままにエンジンもノーマルである。手が加えられているのは、1.3インチ低められ40%ほど固められたスプリングにSE用のダンパーが組み合わされ、吸排気系チューンとノーマルブレーキにスポーツパッドが使用され、エンケイの18インチホイールが使用されているのみである。
すなわち、実際に街中で行われるであろうチューンに近いチューニングモデルなのである。
Rチューンと同じくサーキットを走るSチューンは、ノーマルシエナにはない軽快感溢れる走りが可能であり、バランスが良く非常に安定している。軽量化やパワーアップはほとんどなされていないSチューンであるにもかかわらず、この変化は嬉しい。しかも限界がわかりやすく、最後にはロールして適度に限界を知らせてくれるのもドライバーには優しい。
実際、この仕様でノーマルシエナよりも8秒速くなっているというから驚きである。ちなみに、Rチューンはさらに7秒速く、ノーマルよりも15秒速いという。
ということで、この企画はミニバンでサーキットを走ることを推奨しているわけではなく、あくまでミニバンの今後を占うためのトヨタの実験である。すなわち、この先のシエナのモデルチェンジにおいては、この結果が十分に反映される可能性もあり、スポーティなミニバンの登場に期待が膨らむのである。
若い頃スポコンに乗り、走りを楽しんだ青年たちが家族を持ち、ミニバンの使用が義務付けられたからといって走りを諦める必要はない、ということをトヨタはちゃんと考えているのである。
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