2005年に登場した先代マスタングは、復刻デザインをベースに大ヒットを巻き起こし、同じく復刻デザイン車であるミニやビートルやフィアット500等と肩を並べるスター的存在となった。
この先代マスタングは2014年いっぱいで幕を閉じるが、その間に2度ほど大きなマイナーチェンジを実施しており、実質3つの型が存在していることに注意しなければならない。2005年から2009年までのデビュー型、2010年から2012年の中期型、そして2013年からの最終型である。
デビューモデルとなる2005年から2009年までは、1964年に登場した初代マスタングのデザインをベースとしているが、2010年型ではデザインに大きな変更を加えている。それは64年にデビューした初代マスタングが67年にビッグマイナーチェンジを受けたのと同じような変化である。
じつに粋な計らいといえそうな2010年型のチェンジは、その67年当時のボディ&マスクを題材にしており、見事復刻デザインのリファインを、当時の法則に則って実施しているのである(素晴らしい)。
ちなみに、2013年からの最終型でもマスクが変わったが、それはトップモデルたるシェルビーGT500(本国モデル)と同じマスクを取り入れたのであって、復刻系デザインのマスタングとしては、初代から中期にかけての2モデルこそが、オリジナリティあるデザインの復刻版として評価されていると考えられている。
余談だが、性能だけで言えば最終型に近づくにつれて上がっていくのは間違いない。これはあらゆるもに対する道理でもある。だが単なる真理では割り切れない何かがあるのがクルマでありマスタングであり、だからこそ人々は旧車に憧れを持つのだろう。
というわけで、往年のマスタングに刺激を受けているファンは、デビュー型から中期にかけての復刻マスタングに乗ることをあえて選ぶというわけである。 というようなベースモデルの流れを汲んでのBOSS 302である。
1969年、SCCAトランザムレースにおいて68年にチャンピオンを獲得したカマロの対抗馬として登場したのがマスタングBOSS 302だった。当時のBOSS 302は、69年、70年と2年間のみ販売され、70年には見事レースでチャンピオンの座を獲得している。ちなみに、このチャンピオンシップを制した伝説のドライバーがパーネリージョーンズである。
そういった過去の伝説を復刻させたモデルが、2012年に登場したBOSS 302となる。面白いことに、この現代版のBOSS 302も過去の歴史的事実同様2年間限定のモデルだった。
だが、伝説のBOSS 302はレースのベースカーだったが、復刻(あえてそう呼ぶ)したBOSS 302は、レーシーなファインチューニングを受けたロードゴーイングカーであり、よりレーシーなモデルを「BOSS 302ラグナセカ」とすることで区別している。
さらにこのBOSS 302が発売された2012年、2013年の2年間では、前述したようにベースとなるマスタングのモデルチェンジが行われており、機能的な部分での差はごくわずかだが、ベースモデルのフェイスチェンジが行われたことによる、フロントマスクの変化やデカールの仕上げが変わっている等の変化が存在するのである(これまたどちらの年代にもファンがいる)。
このBOSS 302に搭載されるエンジンは、V8GTに搭載されるものと同様の5リッターV8(5リッターを立方インチに換算すれば302cuin)だが、ピストンの変更や吸排気系のチューニング等により最大回転数を引き上げる等して、最高出力を444hpにアップ(2012年当時のV8GTは420hp)。
トルクは380lb-ftとノーマルモデルと同一だが、最大発生回転数が若干上がっていることから、全体的に回せるエンジンに進化させたと考えるべきだろう。そしてそれをクイックシフトさながらのショートストローク6MTで操作するのである。ちなみに、2013年モデルは446hpとも言われているが、その差はあってないようなものである。
一方足回りは、フロント、リアともにローダウンされ、強化サスペンションに強化スタビライザー、ブレンボブレーキ等で固められ、3.37のファイナルレシオを持つLSDが組み込まれる等、走りの質を高めるチューニングに余念がない。
なおこのBOSS 302をベースに、 フォードレーシングのフロントスプリッターやブレーキエアダクトが設けられ、さらにリアシートが取り払われ2シーター化、そして取り除いたリアシート部分にクロスメンバーを取り付けたモデルこそがBOSS 302ラグナセカであり、サスペンションではスプリングレートやスタビライザー径が異なり、室内には専用のバケットシートが奢られ、インテリアダッシュには水温、油音等の3連メーターが追加されるなど、一段とレーシーなモデルとなっている。
というわけで、ストリートでの走行性能向上を楽しみたければBOSS 302であり、サーキット走行をも視野に入れるならBOSS 302ラグナセカということになるのだろうが、公式メーカースペックでは、両者の違いは4人乗りか2人乗りかであり、車重も同様の1647kgだから、空力やサスペンションの締め上げ度合いが極端に違うということになるのだろう。かつてのNSXに対するNSXタイプRという風に考えればわかりやすいだろうか。
ちなみに、302の車重1647kgで444hpというのは、現在の安全基準を満たした市販車としては、かなりスポーティな部類に入ると言っていい。同じく2012から2013年型のアメ車で言えば、チャレンジャー392が1891kgで470hp、旧カマロV8SSが1780kgで405hp、旧キャデラックCTS-Vが1940kgで564hpだから、BOSS 302がいかに軽量モデルであったかがお分かりいただけるだろう。
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>> 2012 フォードマスタング BOSS 302 (FORD MUSTANG BOSS 302) vol.2 を見る
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