TEST RIDE

[試乗記]

1930年代のメルセデスベンツSSをイメージ

1990 エクスキャリバー SS ロードスター

コーチビルダーによって製作された完成度は高い

まるで漫画から飛び出してきたようなフォルムにV8エンジンを搭載したロードスター。エクスキャリバーとはコーチビルダーメーカーであった。

更新日:2019.01.15

文/椙内洋輔 写真/古閑章郎

取材協力/ジャパンレーストラックトレンズ TEL 0356613836 [ホームページ] [詳細情報]

往年の名車を再現したコーチビルダー

 アメリカには星の数ほどのコーチビルダー(製作メーカー)が存在するが、エクスキャリバーもそのひとつだった。エクスキャリバーは、その当時の現代的ユニットを使用し、過去の名車を再現しようとしたメーカーである。

 で、このSSロードスターとは、1930年代のメルセデスベンツSSのこと。そいつを、当時のC4コルベットのパワーユニットを使用し再現した。そう、言ってしまえば、現代の光岡自動車的な存在といっていいかもしれない。

 ちなみに、ベンツSSやベンツSSKといえばピンと来る方がいるかもしれないが、漫画ルパン三世の愛車がベンツSSKらしい(筆者はまったく知らなかった)。

 さて、実物のエクスキャリバーSSロードスターだが、遠目で見ると小さく見えたが実際にはかなりデカい。遠めだとモーガンあたりと同じようなサイズ感だと予想したが、近くで見ると前後に長く、結構なボリュームである。聞けば全長が5メーター20センチくらいあるというからかなり長い。

一瞬、ギョッとするが、よくよく見ると各部の完成度は高い。実際のベンツSSを知らないが、それでもこの車両単体の魅力が存在する。

ボディフェンダーやリアスタイルのデザインはかなり独特なもの。現代の車両しか知らない方々にとっては「凄いクルマだろう」的なインパクトを与えることができる。

ホイールベースが長くフロントオーバーハングがほとんどないために、特有のステアリングの切れを示す。最初はそれに慣れる必要がある。

こうしてみると、往年の名車的な雰囲気を感じさせる。ルパンの乗っていたクルマではないが、そんな感じを与えてくれる。

90年代のV8サウンドを轟かせる

 とはいえ、各部の造形に間延びしたおもちゃ感は皆無に等しく、細かく見ればみるほど「よくできているじゃん」と思わずにはいられない。

 実際、この後撮影のために走らせたのだが、フロントウインドーの小ささとサイドミラーの小ささを除けば、自動車として普通に走らせることが可能である(笑)。

 しかもV8サウンドである。90年代当時の5.7リッターV8だから200hpもないかもしれないが、それでもまったく普通に走るし、濃厚なサウンドにアメ車を感じずにはいられないし、酔いしれることも可能だった。

このスプリットウインドーが、実際には運転しにくい(笑)。カッコイイのだが、慣れるまでに時間が必要。

各部の造形に安っぽさがないのが凄い。

デザインは現代の車両にはない、1930年代らしさをもたらしている。

インテリアの造形は、たとえば90年代当時のアメ車と比較すれば、圧倒的にこちらの方が高い。雰囲気もいい。

クセは強いが普通に乗れる

 ただし、ステアリングの切れ角やその反応にはクセがあり、そのクセに慣れるまでは若干の緊張感を伴うが、くわえてロングノーズの先が全く見えず、そのサイズ感に慣れるのも必要だが、それらに慣れてしまえば非常に気持ちいいドライブが可能である(直進安定性はお見事だった)。

 なお、今回は借り物&オーナーさんが不在だったために、ロードスターではあるのだが幌は開けずに走行。

 それでも街ゆく人々からの熱い視線を常に感じ、撮影中には何人もの方から声をかけられ、常に目立つ存在だったことは間違いない。

 個人的な感想でいえば、過去に見たこうしたコーチビルダー系の車両は、大概、「ガワだけ」というようなものがほとんどだった。

 だが、このエクスキャリバーは、インテリアにも入念な作り込みが行われており、メーター周りの雰囲気や使用されているウッドの質感が非常に高い。

エンジンルームの開け方もクラッシック。搭載されるエンジンは5.7リッターV8に4速ATが組み合わされている。

使用されるウッドや配置されるメーターの雰囲気も良好で、インテリア全体の質感も高い。

この部分にのみC4コルベットの雰囲気を感じ取ることができるが、それ以外はオリジナルテイストを存分に満喫できる。

曲がりのクセをつかめば、走っていて十分に面白い。なんせ濃密なV8サウンドが味わえるのだから。

乗ると「アメ車」だった!

 ATシフトのコンソール部分のみにC4の面影が感じられたが、それ以外はオリジナルの質感がきっちり加えられており、そうした満足感が、エクスキャリバーの価値を圧倒的に高めていると思う。

 それと、アメリカの自動車文化の懐の深さを感じずにはいれらなかった。日本じゃ、こんなクルマ、まず無理だろうし、作るには光岡自動車のように10番目の自動車メーカーにならないといけないし。

 まあ、よくよく聞いてみると、アメリカンが作った名車・ベンツの再現ということだから、直接アメ車に関係するかどうかという問題はあるにせよ、パワーユニットにC4のそれを使っているということで、乗ると確実にアメ車だった! ということでご納得いただければと思う。

アナログテイストとウッドと、それに使い込まれた感が組み合わされて、なかなか雰囲気の良い状態になっている。

現代的なフィーリングのシートだけに、長距離ドライブにもまったく苦もなく使用できる。

オリジナルプレート。かなりのレア車だけに大切に維持したい。

知らなきゃ、「アメ車の旧車」のような雰囲気も持ち合わせている。

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