「いま、愛車の中で趣味的な要素を満たしてくれるのは1stカマロです。先日取材してもらったやつですね。だから今日乗っているシェビーバンは、あくまで道具として必要にかられて乗っています。といっても単なる道具としてテキトーに使っているわけじゃない。仕様やメンテナンスは自分なりのポリシーでまとめている。それにある程度の大きさが必要なので、それを満たすとなるとやっぱりこのサイズのバンしかないですね。
このシェビーバン、フルノーマルなんです(笑)。正確にはホイールが変わっているけど純正サイズだし、車高もブレーキもノーマル。でも十分に走るし止まる。今日もここまで中央道を走って2時間弱。比較的アップダウンの激しい中央高速でも、アメ車特有のトルクフルなエンジンパワーで登りも楽勝でした。それに向かう場所にもよるんだけど、自分が行く場所では段差等があったりもするから、そういう使い勝手や実用を考えてのノーマルでもあるんです」
原氏の乗るエクスプレスは2000年式のLS。すでに10万キロを越えているが日頃のメンテナンスのおかげか、コンディションは良好で、プロが見てもエンジンとミッションの調子は良いという。
だが、アメ車、ウエスタンと言えば、たとえばF150トラックKing Ranchとか、アメリカ西部伝統のライフスタイルというものを賞賛している価値観というものが存在し、まさしくウエスタン乗馬というのはそういう世界と通じ合っているわけで、ピックアップに乗ってクラブに行き、颯爽と馬にまたがり自由にコントロールする。そんなイメージは浮かばなかったのだろうか?
「たしかにピックアップはハマるんだけど、フルサイズバンは乗馬のための鞍を積むのにちょうどいい。それに自分の場合はエクスプレスがタッグルームになっているので、箱形の方が用途に合うんですね。ここ最近、毎週通っているけど、高速移動はアメ車の得意とするところで、そういう意味でのコンディションはかなりいいですし、今はエクスプレスで十分かな」
ちなみにタッグルームとは、乗馬クラブ内にある鞍等の道具を置くための場所のこと。簡単に言えば道具ロッカーとでも言えるだろうか。原氏は、常設されたクラブ内のタッグルームを使わずに、愛車の荷室をロッカーとして使っているのである。まさにアメ車ならでは、エクスプレスならではの使い勝手の良さである。
原氏が楽しんでいる乗馬は、ウエスタン乗馬である。もしかしたら乗馬と聞いて違うイメージ(ブリティッシュ乗馬)をされている方もいるとは思うので簡単に説明すると、ウエスタン乗馬とは牛を追うカウボーイの乗馬から生まれた馬の乗り方である。
牛を追うための機敏な動きが要求される一方で、馬に乗って働くカウボーイのために長時間乗っても疲れないよう、人と馬との意思疎通が取れた自然な動きのが要求される。すなわち、ダイナミックな一面と馬の気持ちを考えながら馬の動きをひとつひとつ細かくコントロールする乗り方が要求されるのである。このウエスタン乗馬は、現在では馬術としても発達し、全米ほか世界各地に広がり、競技会も盛んに開かれているのである。
「アメ車もそうだけど、クルマをコントロールする楽しみとか喜びとかってあるじゃないですか。だからこそサーキットに行ったり、ジムカーナをやってみたりするわけですよね。馬もある意味では同じなんです。馬との対話が楽しみであり、対話が上手くいきコントロールできた時の喜びは格別です。で、そこから一歩ずつ上達して、自分の思うように、意図したようにコントロールできるようになれれば、面白くて仕方ありません。ただ、クルマと違ってステアリングがあるわけではないですから、そこは乗馬なりの対話テクニックが必要となるわけです」
まったくの素人にとっては、映画で見たカウボーイの姿しか想像できなかったが、実際に見ると非常に繊細なスポーツであることが分かる。乗馬している人間の意思を馬に伝える方法は、音だったり手綱だったり、脚だったり…。そういったわずかな動きを通して馬に意思表示をするのである。余談だが、クルマを運転する時に、クルマが人間の意思通りに動くことを「人馬一体」というが、まさに馬を操るがごとくクルマが自由になることを表現している言葉であり、馬と対話することによってその言葉の意味を一層理解できるのである。
ちなみに、冒頭で触れたブリティッシュ乗馬とウエスタン乗馬とでは目的が異なり、馬具や騎乗スタイルや姿勢も異なっているという。それに「乗馬=お金持ちの道楽」というようなイメージではなく、今回訪れた河口湖のパディーフィールドのように気楽に馬に乗れる場所も多々あり、アメリカ的趣味の一つとして楽しめるという。
「みんな最初は憧れですよ。アメリカに興味を持ち、テレビドラマや映画や雑誌を見てカウボーイに憧れる。乗馬というといきなりコルベットやフェラーリに乗るような、ちょっと高尚な趣味と思われがちですが、まったくそんなことはないです。パディーフィールドのようなところでは気軽に乗馬体験できますし、外乗といって野外に出て騎乗したりもできる。もし興味があるなら、そういった体験をしてみるといいと思います。思っている以上に気軽に楽しめる世界ですし、もっとライトな感覚で接してもらえればと、いろんな方々にすすめていますね(笑)」
今回、エイブルのユーザーさんであり、現行カマロのオーナーである横山さんご家族が同行されていたが、横山さんは過去にもパディーフィールドを訪れており、外乗を経験しているという。
その時の経験はかなり刺激的だったということで、「まず目線の高さがぜんぜん変わるので、そこに感動します。最初はバイクと同じようなものかと思っていましたが、まったく異なり、生き物に乗っているという感覚が特別でした。実際にはできませんが、馬を操り意思疎通させるというところにハマれば面白いんだろうな、ということが良くわかりましたね。ただ、ボクはちょっと怖がってもいましたので、外乗ですら馬にナメられていましたけど(笑)」とは横山さん。
だがこうした経験を二度三度と続けていけば、ちょっとずつだが馬を理解するようになり、馬に乗ることへの恐怖感が消え、徐々にだが操ろうとする意識が芽生えるのである。
「日本中にいろいろなアメ車ショップがあると思いますが、自分はエイブルを通じてアメ車乗りの「入り口」を担当していると思っています。初めてのアメ車に不安を持っている方にどうしたらアメ車の楽しさを知ってもらうか。そこに重点をおいてショプ経営をしていると言っても過言ではありません。アメ車を通じて知ったウエスタン乗馬も同じで、やっぱり楽しさを知ってもらいたい。そのための「入り口」を担当して布教活動をしていこうと思います(笑)。キーワードは『アメ車と乗馬』ですね」
アメ車好きが高じて馬に興味を持つのもありだろうし、アメリカ西部の古き良き文化から馬やアメ車に興味を持つのも良いだろう。日常の忙しさを一瞬忘れ、ウエスタンハットをかぶりウエスタンブーツを履いて…、アメ車に乗って馬に乗りにいく。非常にうらやましい休日だが、こんな生活にもアメ車が似合うのである。
富士山を背景に乗馬クラブが楽しめ、カフェやペンション・コテージをも有するパディーフィールド。乗馬初心者でも体験乗馬が可能であり、外乗といって馬場の外で騎乗することも可能。カフェやペンションは、まるでアメリカかと思うような作りが特徴的で、暖炉があるコテージは必見。乗馬だけでなく観光、レジャースポットとしても楽しめる。取材当日、カフェで食べたハンバーガーが忘れられない。
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