取材したエイブルは、サードカマロやジープワゴニア、フォードブロンコ等といった90年代以前の車両を得意としているショップ。だから、高年式車両を扱う事例は比較的珍しい。
だが聞けば「上記のような個性的な旧車の数が減っていることもあり、仕入れの視野を広げている」という。すなわち、2000年以降の車両であっても、エイブルのコンセプトである「個性的なアメ車、尖ったアメ車」であれば今後も積極的に取り入れていくということだ。
筆者はこれまでにもエイブルにて旧車とは別に、5代目カマロ、チャージャーSRT8、マスタング、キャデラックCTSVといった中古車の取材をさせてもらってきたが、まさしくそういった車両を今後も扱っていくということである(もちろん、販売に適うそれなりの個体が見つかれば)。
で、今回そんなコンセプトを掲げるエイブル原氏のお眼鏡にかなった車両がシボレーSS。2014年型の3万9600キロ弱走行の個体。
このシボレーSSは、2014年にデビューし2018年に生産終了となったモデル。要するにたった5年しか生産されなかったモデルだから失敗作と思われるかもしれないが、否。
全長:4966mm、全幅:1897mm、全高:1470mm、ホイールベース:3961mmのV8エンジン搭載、FRベースの4ドアセダン。比較的温和なスタイルだが、いざ走れば狼的な走りが可能。そこが魅力。
リアスタイルも、当時のシボレー車らしい面持ちに温和な雰囲気を感じさせる。が、普通にめちゃくちゃ速い。
逆に個性が極まり過ぎ、お金がかかり過ぎるからこそ短命に終わったモデルであって、前エントリーで紹介したシボレーSSRと同系列の、アメ車バブル期の発想により誕生した特別な存在なのである。
ちなみに、筆者は過去に2台ほどSSを日本で見たが、それ以外で当時、日本に持ち込まれた車両があったのかは不明である。後に述べるが、このSS、モノは超いいが時代が悪かったために日本では評価されなかった可能性が高いのである。
さて、そんなシボレーSSであるが、1996年に消滅した名車・シボレーカプリス以降存在していなかった「シボレーV8エンジン+FR後輪駆動」となるパフォーマンスセダンとして開発された。
兄弟車はオーストラリアの「ホールデン コモドア」。それに使われる後輪駆動用のプラットフォームを使用し、エンジンにはC6コルベットの「LS3」6.2リッターV8エンジンを搭載。
ボディにはボンネットフードとトランクにアルミニウムを使用することで低重心化と軽量化を図っており、ボディ前後の重量配分50:50を実現した。
搭載されるエンジンは、C6コルベットに搭載されていたLS3型V8エンジン。415hpのパワーに最大トルク415lb-ftを発生させる。車重1800kgのボディには十分すぎるほどのパワーである。ボンネットフードもアルミ化されているからめちゃくちゃ軽い。
フロント245/40ZR19、リア275/35ZR19というロープロファイルタイヤを装着。ホイールに内には、大経のブレンボ製ブレーキが輝く。
4ドアセダンだから広大なトランクルームが存在する。加えてこのトランクリッドもアルミ製だからめちゃくちゃ軽い。こう言ったところにもお金がかかっている。
見た目はおとなしく、一見すれば「シボレーの訳わかんないクルマかよ」と思われるかもしれないが、その実C6コルベットと同様のエンジンを搭載している俊足セダン。これぞまさしく「羊の皮をかぶった狼」的アメ車だろう。
同時に足回りも強化され、前マクファーソンストラット/後マルチリンクの足回りに、355mmのベンチレーテッドディスクと4ポッドの2ピースキャリパーを組み合わせたブレンボ製ブレーキを採用し、前後19インチの鍛造アルミ&タイヤが装備される。
名機LS3エンジンは、C6コルベットでお馴染みだったが、415hpのパワーに最大トルク415lb-ftを発生させ、パドルシフト付き6ATとの組み合わせで、その当時で0-60マイル加速が約5秒という俊足を誇ったのである。
ということで、こうしたV8搭載の4ドアセダン自体が今現在、非常にレアな存在であり、ダッジチャージャー系と一部キャデラックの上位モデルをおいて他にはなく、中古車としてみれば非常に魅力的。
しかもパワー&車重といったスペック比においては、現行型チャージャー6.4Lモデルと同程度のパフォーマンスを発揮させるだけに、刺激度も高い。
ということで、試乗させてもらった。筆者もかつて一度だけ試乗した経験があって、その時にも十分に感動したが、実は今乗った方がもっと感動した。
その当時は、シェルビーGT500が662hpを発生させるとか、とにかくパワー重視の風潮が強かった。筆者もチャレンジャーやマスタングにパワー重視で向き合っていたし、ちょうど試乗した頃は、2015年型チャレンジャーヘルキャットのデビューと重なっており、400hp程度の4ドアマシンに対する意識は低かったと言わざるを得ない。
シボレーSS、めちゃくちゃいいのにその当時日本へ持ち込まれる数が少なかったのは、皆がマスタング、チャレンジャーに注目していたからであり、要するに時代が悪かった・・・。
だが、そんな時代のシボレーSSに今乗ると驚くほど楽しい。
楕円形のステアリングは、レーシングマシンの雰囲気を醸し出しており、シートもセダンにしてはホールド性が高く、全体的に若々しくスポーティなインテリアが構築されている。なお、各部の質感も異様に高い。
組み合わされる6速ATにはパドル操作が可能となり、走行性能向上の一役となる。
メーターは、アナログタイプを2連で配置したもの。回転上昇に応じたリニアなメーター針の動きが心地よい。メーター中央の液晶にはタイヤプレッシャーモニター等情報が映される。
まずボディがそこそこに小さく、だがかなりガッチリしており、路面からの衝撃にはビクともしない。ステアリングは意外なほどシャープであり、足は結構硬いので、路面の轍や凸凹に過敏に反応し、ダイレクトにステアリングに伝える。
だから、ビタッとした安定を求める方には全く向かないと思うが、逆にスポーティなものを求める方には、昔馴染みのハードさがじんわり味わえて面白いと思う。4ドアセダンなのに機敏だし、とにかくめちゃくちゃ面白い。
さらに搭載エンジンがC6コルベット譲りの6.2リッターV8エンジンだから、街中をゆっくり走っていてもドライバーにはアクセルペダルを通して秘めるパワーが感じられるし、そこにはダウンサイジングモデルにはないV8の鼓動が詰まっている。
空いた道で少しアクセルを踏み込めば、圧倒的なパワー感とサウンドに包まれる。低速から中速域がめちゃくちゃ気持ちいいし、チャージャー系の雰囲気とはまた違ったスポーティな走りが味わえる。
センターコンソールの一部にスエードが貼られる等各部の設えは高級そのもの。また全体的な雰囲気がスポーティであり、こうしたちょっとしたロゴがドライバーを刺激する。
レザーとスエードのツートンレザーシート。スポーティの名に恥じないホールド性の高さも魅力。こう言った細かい部分を見ても金がかかっていたことが伺える作りなのである。
リアシートもホールド性良好のシートが装備されている。赤いステッチもスポーティ。中古車としてリアの使用感は非常に少ない。
スポーツセダンだけあってコーナリングが面白い。アメ車にしては、かつてのようなフワフワヤワヤワな面影はなく、かなり俊敏なハンドリングが堪能できる。またメカニズム的には当時のGMハードウエアを使用しているだけに、日本での整備性もまったく問題はない。
走行距離は約4万キロだから、思っている以上に走りの部分におけるヤレが少なく、とにかくボディのガッチリした剛性感とブレーキの強烈なタッチは2014年車であるが、現代車のそれに近い良好な印象である。
エイブル原氏も「個性的ですよね、4ドア版の5代目カマロって言っています」
確かにその通り。2010年に登場した5代目カマロからGM車のボディ剛性やブレーキタッチ等の走行性能が格段に向上しているが、このSSもその流れを汲んでいることがはっきりとわかる。しかもコルベットと同エンジンが搭載されているのだから、誇れる部分が多い。
2014年前後といえば、上記した通り、マスタング、チャレンジャー、チャージャー、コルベットC6、C7といった名車たちの全盛時代。だが、そんな時代に生まれ、日本ではそれほどの人気車とはならなかったSSに今出会うと、まるで違った印象を与えてくれる。
エンジン、足回り、ボディ、インテリア、どれにおいてもアメ車の魅力が詰まっており、走らせれば現代車と遜色ない走りを味わわせてくれる、それでいてレアな1台。これぞ中古車発掘の魅力。こんなアメ車はもう二度と生まれないだろうから、手にした方は幸せである。
あえてアメ車に乗りたい方々に提案する尖ったアメ車としてシボレーSSを発掘。「4ドア版カマロと思ってもらっても遜色ないパフォーマンスです」という。今の時代には存在しない個性、それでいてパフォーマンスは現代的。まさしく中古車の魅力が詰まった1台だろう。
アメ車バブル時代の恩恵により生まれた奇跡の1台とも言えるだろう。
19,404円
PERFORMANCE
6DEGREES
19,998円
PERFORMANCE
6DEGREES
3,480円
MAINTENANCE
GDファクトリー千葉店
48,070円
EXTERIOR
6DEGREES