C3コルベットと比べると圧倒的にまろやかになったスタイリング。だが、C3の個性とまるでフェラーリのようなボディラインが入り交じって出来た魅惑のデザイン。
走り出してもまた、キャラクターの際だった荒々しさが特徴である。C4コルベットは運転席に乗り込むことが非常に大変なクルマである。それはやたらと高いサイドシルと足元のタイトなコックピットのおかげであるが、一方でドライバーは否応なく「これがスポーツカーなんだ」という味わいを感じることができる。
ダッシュボードは非常に接近して圧迫感を感じるかもしれないが、コックピット自体のまとまり感は非常に高い。
想像以上に重たいステアリングを握って路上に出ると、それ以降のコルベットでは感じることのできない圧倒的な加速感を体感することができる。特に街中程度の低速域では俄然際立っている。
当時C4コルベットに搭載されていたエンジンは二種類あり、91年型までのL98エンジンは250hp、トルク48.4kg-mを発生させ、92年モデル以降から標準エンジンとなったLT1では300hp、トルク45.6kg-mを発生させる。余談だが、レギュラーモデルが300hpを越えたのは92年時点で22年振りのことであったという。
ちなみにこのLT1V8、たとえばC5と比較すると、60hp近い差があるにもかかわらず、街中&低速常用域においては、その差を感じさせないほどの力強さを誇っている(L98はLT1以上に力強い)。
この1984年に登場したC4コルベットの開発理念は「世界に通用するスポーツカー」だったが、世の大半のスポーツカーが高回転指向のエンジンを求める中で、C4コルベットはあえて圧倒的な低速型のエンジンを搭載している。これこそがC4の最大の魅力であり、また楽しさでもあるのである。
このエンジンを支える足回りは、ハッキリ言って硬い。とにかく路面の継ぎ目で反応し、バタバタとクルマが跳ねる。タイヤが太いせいもあり、轍でステアリングが取られることも何度かあった。
しかし、これを「欠点と取るか、特徴と取るかはオーナー次第か」と思えるほど、運転して楽しかったのは事実である。
ここまでは、これまでの個人的な体験を通じての今なお感じているC4の特徴である。筆者はいまでもC4が好きであり、たまに見かけるC4を必ずや目で追ってしまうのだが、今回たまたま偶然にも程度良好のC4の取材ができた。やはり今見ても素晴らしい。アメリカのデザイン力の高さは特筆ものである。
取材車輌は94年型。つまり92年以降に登場するLT1エンジンを搭載したモデル。しかもC4は90年にインパネの作りが変更されているから、そういう意味でも後期型といえる年式(最終モデルが96年)。
ブルーのボディが映えるめちゃめちゃカッコいいスタイリング(稚拙な表現だが)にHREホイールが組み合わされたC4。
94年型ということですでに20年以上前の車輌となるが、オーナーさんはこのC4を手に入れすでに19年。購入当時は20代ということで、当時はC4特有のゴーカート的な走りがお気に入りだった。多少の硬さも、若さがすべてを凌駕していたという。
だが、それから19年。愛車は変わらずとも40代となったオーナーの好みは、当たり前だが変わって行く。「この乗り心地、どうにかならんかな?」
ということで、まずはサスペンションに手を加えることになった。硬さが特有の足回りにしなやかさを加えたのである。レーストラックが独自に減衰力を設定したコニのショックを装着。これだけでも見違えるほどの変化があったという。ステアリングの反応はあまり変わらずに路面からの当たりが確実に減ったのである。
そうなると、次に来るのがパフォーマンスアップ。オリジナルへダースを入れワンオフマフラー装着で低速域でのパンチ力をさらに増強し、まるで劇中車のようなV8サウンドを手にいれる。
で、ここまで来ると想像できると思うが、次なるテーマがストッピングパワーの強化である。アルコンベアーの大口径キャリパー装着にスリット&穴あきローターをセットし、インチアップしたHREのホイールをセレクト。余談だが、ちょっと古めのモデルに最新鋭のHREを合わせるところが何ともシブイ。
HREの装着によりバネ下重量の軽減がもたらされ、それは車体全体を軽量化するより何倍も走行性能の向上に寄与するのだが、実際にバネ下が軽いとサスペンションがスムーズにストロークしてくれ、フットワークが軽快になるだけでなく、乗り心地やブレーキの効きにも良い傾向をもたらすわけで…。まさしく考え抜かれた理詰めの「大人仕様」に大変身したのだった。
ノーマル時は、ゴツゴツしているがステアリングを切るとまるでゴーカートのような切れ味鋭いハンドリングを披露するC4コルベットだったが、その味を失わずに、パフォーマンスアップとともに大人のしなやかさとスポーツカーに見合ったブレーキ性能を手に入れた。
クルマ全体のコンディションが驚くほど良いだけに、大人仕様へと変貌を遂げたこのC4は、もしかしたらこの先、日本で走っている最古のC4となるくらいまで動態保存しているのではないか? そんな期待をしてしまうほど抜群の1台であった。
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