たとえばシボレーSSRを称して、レアなアメ車、ファニーカーetcというのは簡単である。そしてそういったキワモノに対して言えることは、過去の歴史的事実を見ても明白だが、製造期間が非常に短いということ。つまり商業的には上手くいかなかったものが多い。だからか、中古車としての魅力は低く、ある程度時間が経つと忘れ去られてしまう…。きっとそんな印象を抱くに違いない。
だが、そうとは言い切れないアメ車も確実に存在する。というのも、時代が時代だったからである。デビューが2003年後半といえば、何度も言うがアメ車バブルの全盛期。すなわち、いろんなコンセプトカーが実際に生産された夢のような時代。
だからこそ、作りが悪いとか駄作だったということはまったくなく、実際に短命だったのはバブルが崩壊したからであって(その後のリーマンショックと共に暗黒の時代に…)、逆に今乗っても驚くほど面白かったりする。しかも数が少ない=レアでか人とかぶることが少ない=逆に魅力的。というわけで、SSR。
シボレーSSRは、コンセプトモデルとして2000年に登場し、2003年にインディ500ペースカーとしてデビューした。その後正式発売にいたり、爆発的な人気とはいかずもそれなりに売れていた。生産期間は、2003年から2006年の4年間であった。
このSSRの最大の特徴は、トラックでありながらもオープンキャビンを持ち、そのルーフが電動で開閉すること。つまり、電動開閉式のメタルトップを装備した2シーターピックアップとなる(ボタン式で25秒で開閉可能)。だがしかし、誤解してならないのは、このクルマのベースがトラックであるということ。すなわちアメ車でしか確立できない唯一無二の存在なのである。
2003年にデビューしたSSRは、当初5.3リッターボルテックV8エンジンを搭載し、300hpを発生させたパワーを4速ATを介してFR駆動していた。すなわち、タホ、サバーバンと同様のエンジンを搭載していたのである。
だが、2005年からはC6コルベットと同様の6リッターLS2V8エンジンに換装し、一気に390hpを発生させるにいたった。しかもこの年から4ATだけでなく6MTをも搭載し、スポーツカーさながらのドライビングが可能になったのである。
ボディサイズは4862×1996×1631ミリで、ホイールベースが2946mm。フルサイズというよりは、若干小さいミディアムサイズ。そして足回りがフロントがダブルAアームでリアがマルチリンク、タイヤは前後異形サイズとなりフロントが19、リア20インチを装着している。
改めている外見上の印象はやっぱりファニーな感じが強いが、このクルマ、エンジンを始動すると一気に印象を変える。野太いエキゾーストサウンドとともに、硬派なアメ車フィーリングが一気に漂うのである。目を閉じて聞けば、まるで「コルベット」とも間違えそうなくらいのボリュームを伴って。
走った印象は、思った以上にスポーティであった。目線の位置はラムSRTよりも低く、コルベットコンバーチブルや一般的な乗用車よりは若干高い感じ。とはいえ、走行中に不安定になる要素は微塵もなく、V8サウンドをじかに聞くオープンドライビングはまさに天国! しかも唯一無二の存在に乗っている!
ハンドリングは十分にスポーティだし、加速感も半端ではない。SRT10ほどではないにしろ、そこらのスポーツカーとは十分に勝負できるくらいのパワーはある。しかも作りは単なるキワモノではなく、逆に車体の剛性は高く、ハンドリングやブレーキングのレベルもスポーツカーそのものであるから驚く。
よくよく見ると、フロントフェンダーの盛り上がりやリアのベッドとフェンダーアーチのデザインは、このクルマ以外では見かけないほど手の込んだ作りをしているし、実際に動かす各部の操作タッチは、当時のコルベットレベルを維持しているし、屋根を降ろしてクーペとなれば車体の剛性は格段に上がり、遮音性等のレベルもかなり高い。しかもその機能はキャデラックXLRと同一とあれば、それこそ夢のようなアメ車である。
というわけもあってか、この個体、すぐに売れてしまったそうなのであしからず(次に黄色が入ってくるそうです)。
SSRは、1947から1953年に至るシボレートラックのへリテージデザインを採用したというが、その可愛らしい見かけによらず、かなり硬派な車体スペックを有し、さらに全天候型オープンカーとしての機能とハードな走行性能がオーナーを常に刺激するのである。
さすが、アメ車バブル時期に作られただけあってか、この2台、今見てもとくに古さを感じさせないデザインや走りの質に驚きを感じた。「まだ新車で売ってます」と言われても納得してしまいそうなほど、イマドキの感覚で接することができたのである。すなわち優れていたわけである。
考えてみれば、その時代のダッジラムトラックは、2007年からすでに二度ほどモデルチェンジを繰り返しているが、どちらもいまだにこのSRT世代のラムのデザインがベースになっている。すなわち、今となってもその時代から抜けきれていないわけであり、この時代のデザインこそがダッジラムを代表するデザインであったということを、いまなお実証し続けているわけである。
一方、デビュー当時は斬新すぎ、キワモノとして扱われた感もあったが、すなわち三歩ほど先を走っていたといっても過言ではないSSRのデザインだが、今ついに「時代が追いついた」とで言おうか。それほど違和感ない見栄えに、「2006年製」と言われることが逆に違和感だった。まさにバブル時期を象徴する『行き過ぎた名品たち』。
中古車の中には、こういう楽しいアメ車がまだたくさんあるわけだから、食わず嫌いせず、いろいろ試して欲しいし、自分だけのレアな1台を是非見つけて欲しい。
ちなみに、これまでBCDではいろいろなアメ車を取材させていただいたが、今回ほど「なるほどな」と感心した取材はなかったと言っていい。すなわち、こういったレア車こそBCDの最も得意とするところであり、こういった年代ものの中古車こそ大いにBCDを活用するべきである。
というのも、たとえば比較的新しい年代のアメ車は、極端なことをいえば、どこで手に入れても、よほどの事故車じゃない限り、もしくは最初から騙そうと悪巧みをした車両じゃない限り、それほどコンディションに困るほどアメ車の精度は低くない。とはいえ国産自動車屋さんが手におえるほどメンテナンスフリーではないので最低限の手間は必要だが、それほど恐れるクルマではもはやない。
だが、こうした2005年前後の車両は、アメ車のバブル的な時代だったとはいえすでに10年落ちとなり、コンディションには一抹の不安が残る(と考える方もいるはず)。さらにタマ数自体にも限りがあるだろうから、出物を見つけるチャンスすら少ないかもしれない。
さらにタマを見つけたとしても中古並行の場合、現地アメリカンが判断する場合には、その信憑性に確信が持てないことが多々ある。よく言われていることだが、現地アメリカンには、日本人の求める中古車像が伝わらないことが多いからである。
だがBCDの場合は、現地法人に所属する邦人スタッフが見立てた中古車である。現に、今回撮影したSRT10は、驚くほど室内空間がキレイであり(そこには人工的に手を加えた状況ではない素のコンディションが見て取れた)、まったくヤレを感じさせなかったのだ。 だからこそ、こういったレアなアメ車が欲しい場合は、BCDをおおいに活用すべきでなのである。
<関連記事>
>> 遅咲きの名車たち を見る
12,810円
PERFORMANCE
6DEGREES
17,298円
PERFORMANCE
6DEGREES
18,420円
PERFORMANCE
6DEGREES
2,090円
MAINTENANCE
6DEGREES