かつて調べた日本車のMT車比率は約2%という。つまり、約98%がAT車をチョイスしているということになり、それに比例して日本車からもどんどんMT車がなくなっている。
同時に輸入車のMT比率もどんどん下落し、たとえばフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーにはとうの昔にMT車がなくなり、ポルシェは若干MT車のチョイスが可能というから素晴らしいが、全体的にはMT車の存在が限りなく少なくなっている。
もちろん、これらの背景にある要因のひとつはATの進化ということに尽きるだろう。2ペダル式のDGTが増えたことも重なり、あえてMT車をセレクトしなくても、それらしい『走り』が可能になったという理由である。
昨年登場した国産車のトヨタスープラにはMT車がラインナップされず、搭載ミッションはDGTでもなく8速ATである。だがしかし、開発担当者いわく「今の時代の最新ATはMTなど歯牙にもかけず、DGTよりも勝っている」とMT車を全否定していたほどだし、C8コルベットは8速DGTで、シェルビーGT500も7速DGTである。
MT車とは、かつてはスポーツカーのためのものであり、そのポテンシャルを最大限に引き出せる走るための武器とも認識されていたが、もはやそれは常識ではなくなっている=速さだけを追求すれば、もしくは効率だけを求めれば、機械がおこなう変速に人間はとうの昔に敵わなくなっているということである。
だが。そんな時代にもかかわらず、いまだ積極的にMT車を販売するアメ車。最新スポーツ&スポーティカーはDGTミッションを採用する一方で、走りの楽しさを追求するモデルには積極的にMT車をラインナップに加えている。
余談だが、つい先日発表された日産フェアレディZのプロトタイプには6速MT車しか用意されていなかった。もちろん実際にはAT車の販売がメインとなるだろうが、MT車を用意した背景には北米市場狙いの思惑があるはず。北米市場のMT車比率は、明らかに日本よりも上である。
で、そんないまやMT車天国と化すアメ車の中で、V8NAエンジンを搭載した最速モデルがシェルビーGT350である。いわゆる歴代フォード謹製V8エンジンの中で「最強」として君臨するNAモデルである。
フォードの中では、他メーカーに対するパワー競争にはシェルビーGT500で対抗し、サーキット等の曲がりを重視したスペシャルオールラウンダーとしてGT350をラインナップしている。が、このGT350も残すところあとわずかな命である。
マスタングのフルモデルチェンジが2023年から2024年にかけて予定されているが、GT350は残らない、というのが理由である。
世界中でもレアな専用設計エンジンというのもネックなのであろう。逆にこれこそがGT350の特筆すべきポイントでもあるのだが。
シェルビーGT350は、フォード自らが「最高」と表するマシンである。作り込みで言えば、フロントセクションの一部にカーボンパーツを使用し、軽量化と高剛性を実現している。車重は1700kg弱。この手のマシンとして軽い。
なので、その強さと軽さはステアリングの反応に顕著であり、この部分の反応だけにおいてもマスタングGTとは雲泥の差である。
くわえてMT車のシフトストロークは節度感がありながらも操作に要する力は軽くスムーズで5.2リッターV8NAエンジンの絶品のレスポンスをあますことなく味わうことができる。
このGT350のエンジンは、レブリミットが8250rpmとアメ車としては異例の高回転型パワーユニット。しかも排気量1リッターあたりのパワーが100hp以上という最高パフォーマンスの5.2リッターV8NAエンジンは526hp、最大トルク429lb-ftを発生させ、スーパーカーに匹敵する官能性能を備える。
さらに足回りにはマグネライドダンパーを装備し、ブレンボの大容量ブレーキとミシュランパイロットスーパースポーツを装備、カーボンパーツやエアロを多数装備しアルミボンネットを採用するなどして、走りに対する妥協は一切許さないマシンに仕上がっているから、史上最高に刺激的なアメリカンマッスルといっても過言ではないのである。
筆者もこれまでに3度ほど試乗した経験があるが(フルでエンジンを回した経験はない)、そのどれにおいてもエンジンのフィールとサウンドに感心したし、ちょっとした身のこなしの機敏さにも驚いたほど。というか、速いとか遅いとかいうことより、とにかく走らせること自体が面白いマシンである。
たとえば、単なるV8エンジン&MT車を評すれば、ドライバーを高揚させる刺激に満ち溢れ、ダイレクト感やシフトとクラッチをシンクロさせた時の気持ち良さが素晴らしいということになるのだろう。が、シェルビーGT350は、単なるV8ではなくスペシャルなV8が搭載され、車体もスーパースポーツ並に仕上げられているから、実際の刺激度においては遥かに高いと断言できるのである。
この個体は、2017年車の約6500キロ走行車ということで、程度云々の話をするようなヤレは皆無であり、エンジンやミッションにおいてもまだ慣らしが必要であるかもしれないというレベル。
しかもここ数年で6台のBCDのGT350を取材したが、そのどれにおいても一定以上の品質レベルが保たれており、不安を抱かせる要素がほとんどない。もちろん今回の個体もそのレベル。
またBCDなら、今現在GT350が複数台入庫しているから、実車を見て判断できるというのも素晴らしいことである。
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