約6年ほど前、一度だけハマーH1に試乗する機会があった。その時に抱いた正直な感想は「なんか凄いクルマだなぁ…」という単純な驚きであった。全幅が広い割に全長と全高はそれほどでもない、妙に平べったい印象を与える異形のボディスタイル。運転席と助手席が完全に隔離されるほど広く、シンプルで閑散とした感じの車内空間。意外なほど軽く、思わず「えっ!」と驚くほど回るステアリング。トルクのカタマリといった感じの6.5リッターディーゼルエンジンと、意表を突くほど快適な乗り心地。ミリタリースペックを持つ史上最強の4×4というセールストークに嘘偽りはなく、ハマーH1というのは、あらゆる意味で特殊なクルマであった。
ハマーH2は、ハマーH1のDNAを継承しつつも、より乗用車としての快適性を追求した高級SUVとして非常に人気の高いクルマである。ハマーH2がデビューして以来、私はずっとこの「現代のハマー」に試乗する機会を狙っていた。メーカーの販売戦略から綿密な計算の元に誕生したハマーH2は、初代シビリアンハマーから一体どう変化したのか? また、ハマーの原点である本物の軍用車、高機動多目的車両ハンビーの面影は残っているのか? 淡い期待が半分、確信に近い予測が半分、今回はそんな気分で試乗に出向いたのである。
今回の試乗は高速道路を含む一般道でのものであり、オフロードでの走行は行なっていない。しかし、それでもハマーH2というクルマの性能と性格は、かなり理解することができた。結果導き出された結論は、同じハマーという名を冠するクルマではあっても、H1とH2は「似て非なるもの」であるということだ。つまり、H1というクルマが「公道を走れるように部分的な改造が施された軍用車」だとすると、H2は「軍用車風のワイルドな味付けが施された乗用車」なのである。
これは当然と言えば当然のことで、H2はH1をベースにモデルチェンジされたクルマではない。C/Kシリーズのシャシーをベースに開発されたSUVであり、エンジンもお馴染みのボルテックである。つまりクルマとしての基本はキャデラックエスカレードやユーコンデナリと同じなのだ。H2に、最初から軍用目的に開発された車両をベースにしたH1のような特異性を求めること自体が間違っているのだ。
もちろん、H1と違うからといってH2の存在意義を否定するつもりは毛頭ない。H1ほどの特異性はなくとも、H2が個性的なSUVであるのは紛れもない事実だし、何より乗用車としての完成度の高さはH1の比ではない。軍用車的な力強い外観と高級車としての快適性を合わせ持つH2は、強くて豊かなアメリカという国家を象徴するようなクルマでり、普通の高級車では満足できない個性を求めるエグゼクティブには、たまらない魅力に溢れたクルマであると言えるだろう。
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