TEST RIDE

[試乗記]

V8搭載のレース系ピックアップの元祖

2012 フォードF150 SVTラプター

中古車になってもその「魅力」、一切衰えず

フォードPCIのベルエアーに中古車のラプターが入庫した。走り系ピックアップの元祖、さらにV8エンジン搭載マシンの魅力は、一切衰えずだった。

更新日:2019.02.25

文/石山英次 写真/古閑章郎

取材協力/ベルエアー TEL 0436265700 [ホームページ] [詳細情報]

ピックアップトラックの概念を変えた歴史的名車

 2010年にリリースされたフォードF150 SVTラプターは、フォードのベストセラートラックたるF150をベースに、フォードの特殊車両開発チーム「SVT」(スペシャル・ヴィークル・チーム)が設計したオフロード向け(デザートレース)のスペシャルモデル。

 アメリカが誇るF-22戦闘機と同じ「RAPTOR」を名乗り、オフロードを高速で駆け抜けることを目的としたレーシングマシンのディーチューン版であった。

 ラプターは、ベースとなったF150トラックと比較すると、ブリスターフェンダーによって7インチのワイドボディとなっている他、サスペンションを全面的に変更し、アルミ製大型ロアアームを採用するなどしてロングトラベルのサスに改良。数値的にはフロント11.2インチ、リア12.1インチ拡大されている。

 そのうえ名門フォックスレーシングのリザーバータンク付きショックアブソーバーを装着して、起伏の激しいオフロードを走破するためのストローク量拡大とバネ下重量の軽減を図っている(まさに本気の証)。

 さらに地上高クリアランスも圧倒的であり、アプローチアングルは30度、デパーチャーアングルは22.7度といった数値を誇り、実戦的装備を備えているのが特徴である。

 なお余談だが、このラプターが登場してから、アメリカンピックアップ全体のオフロード性能は格段に上がっている。ミニラプター的な存在のミディアムピックアップが矢継ぎ早に登場し、メーカー間の競争が激化しているからである。

 搭載されるエンジンは、2種類。デビュー当時は5.4リッターV8とオプションの6.2リッターV8と2種類のエンジンセレクトが可能だったが、2012年からは6.2リッターV8のみとなった。5.4リッターV8は320hp、6.2リッターV8は411hpを発生させ、ともに6速ATが組み合わされていたのである。またボディ形状は、観音開きドアを備えた「スーパーキャブ」のみだったが、2011年からは、4ドアの「スーパークルー」が追加されている。

フロント11.2インチ、リア12.1インチ拡大されたワイドボディは、前方から見るラプターをまるで正方形のような状態に見せる。ものすごい迫力。スキッドプレートもタダモノではない雰囲気を助長する。

屈強かつ優秀なサスペンションを有したクルマだけに、フルノーマル状態でも迫力というかオーラが凄い。入念にチューニングされたサスペンションだけに、トータルバランスに優れた見た目の印象を与えてくれる。

歴代SVTモデルの車両にハズレなし。マスタング等でも同様に素晴らしい車両がこの世に送り出されている。

日本の国道では道路一車線分の大きさ

 取材車は2012年車の4ドアスーパークルーであり、搭載エンジンは6.2リッターV8エンジンである。

 ドアを開きシートに座った瞬間に目に入るセンターマーカー付きステアリングを見た瞬間から一種独特のムードに包まれる。シートは電動調整機能付きであり、ステアリングとシート位置を調整後にブレーキペダルの位置まで電動で調整可能であり(さすがレースカー)、足の短いアジア人にもまさにベストポジションが得られるようになっている。

 その状態からの前方の見晴らしは、痛快のひとこと。左ハンドル仕様だからドライバーの右前への見切りがまったくわからない(笑)。ボディが大きすぎて、ブリスターフェンダーのせいもあるが、慣れるまでに若干の恐怖感が伴うのである。

 だがちょっと動かした感覚で言えば、日本の一般道での走りは意外にも楽だった(笑)。なぜなら、車体の横幅の感覚がまさに一車線分まるまるだから、車線の左側ギリギリを走っていれば、とりあえず車線内に収まっていることがわかったからである(でもそのくらいデカイ感覚がある)。

 ショップスタッフに聞けば、「足回りのセッティングがかなりよく、車高等もノーマル状態であるにもかかわらず、ほとんどロールしないでコーナリングが完了できてしまい、なおかつ前後ピッチングもほとんどなく、ドライバーが感じるフルサイズピックアップトラックの動きではまったくないから、無駄な動きがないぶん、非常に走りやすく楽しい。

SVTが専用にチューニングした外径35インチのBFグッドリッチタイヤ。オールテレンTA/KO 315/70-17インチで、軽量&高剛性の17インチホイールに装着される。

フロントサスペンションは全面的に見直され、極太軽量のアルミ製ロアアームを採用する等、高速オフローダーとしての性能がふんだんに盛り込まれている。市販車では初めてフォックスレーシングのショックアブソーバーが採用され、リアにはリザーバータンク付きショックが装着される。

現行の新型モデルが脱V8エンジンを果たしただけに、この旧モデルの価値は俄然高まっている。

ピックアップトラックだが、乗ればピックアップトラックに対する概念が変わるほど刺激的なマシン。大柄なピックアップトラックであることを忘れさせるほど軽快に走る。

市販車レベルでは想像以上の足回り能力

 くわえて、路面からの衝撃を圧倒的なサスペンション力でいなしてしまい、ラプターはデカいアーム類で囲まれたアシを積極的に動かしながら走るから、ちょっとした凸凹なら飛び越えてしまうほどのクリアランスとバネ力によって、まさに無敵感覚に襲われる。めちゃくちゃ気持ちいい走行感覚」というのである。

 ボディの大きさやデザインも含め、すべてにおいて「迫力」という言葉で満たされるラプター。乗っているうちに、自分が強くなった気がするほどだから、その効果は圧倒的だ。

 搭載エンジンの6.2リッターV8は411hpということで、パワー感は十分だろう。とはいえ車重も十分にあるから、マッスルカーのような速さはないが、ピックアップトラックであることを加味すれば、恐ろしく速いのは間違いない。しかも圧倒的なコーナリング性能を伴ってだ。

 同時にV8サウンドが、マスタング譲りのように、たまらなくいいのが嬉しい。誰かが言っていたが、「SVTの作るクルマにハズレなし」とはまさに名言であり、走れるピックアップが欲しいオーナーには、きっと満足してもらえるに違いない。

2010年に登場した際には、5.4リッターV8(320hp)が標準で6.2リッターV8はオプションとして、2つのエンジンが用意されていたが、2011年からは6.2リッターV8エンジンのみを搭載するように変更されている。パワーは411hpだが、十分に速い。

インテリア自体は、ベースとなるF150と同じであるが、ステアリングのセンターマーカー等、スペシャルな雰囲気に満ちている。

初期のモデルはホワイトメータータイプだったが、2011年以降からメーター内はブラックで統一されている。

リアの荷台に上がるためのラダーやバーが付属しており、ピックアップトラックの使い勝手も考慮されているのだが面白い。

ハイパフォーマンス車ならではのメンテナンスは必要

 ちなみに、新車の現行ラプターに搭載されるエンジンは、3.5リッターV6ツインターボエンジンである。旧型よりも確実に強力だが、「あの音」は一切しない。

 実際に中古車市場では、この旧V8搭載のラプターが人気高であり、アメリカ全土でも中古車の価格がかなり高騰しているというから驚きであるが、それこそがラプターの価値が知れ渡っている証拠でもあるのだろう。

 なお、ラプターは現代的な車両ではあるが、歴史に残る超ハイパフォーマンスモデルだけにフォード車を知るアフターフォローの利いたショップでの購入がキモとなる。

 その点ベルエアーは、フォードPCIの一員として、旧フォード浜野店のアフターフォローを引き継いでいるだけに、単なる売り屋とは異なるフォード車全般のフォローが可能なのである。

搭載されるミッションはセレクトシフト付きの6速AT。シフトノブのボタン操作にてギアのアップダウンが可能になる。

ピックアップトラックには装着されないような、ホールド性の高いシートが奢られている。室内の程度も非常に良好。

観音開きのスーパーキャブにも憧れるが、実用性を考えればスーパークルーが日本での使い勝手に優れているのは明白。リアシートスペースは日本製セダンよりも広いし、この車輌の場合、リアシートを使用した形跡がほとんどないのが嬉しい。

ベルエアーの工場は、5台以上のリフトに板金施設や自社塗装ブースを備え、クルマに関するあらゆる事象に即応できるマルチショップとして有名だが、フォードジャパン消滅後、近隣のフォード浜野店から約3キロ程度の距離感ということもあり(もちろん対応力を認められてのこと)、旧フォードディーラーのサービス全般を引き継いでいる。

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